アフマド・アルチャングの作品
アルチャングのデザインをもとにメヒディハーン・ハギーギが製作した一枚。
アルチャングの代表的デザインで、ほぼ同じデザインはセーラフィアンやマムリの作品にも見ることができます。
繊細な文様で構成されたメダリオンを中心に、フィールド上に展開するイスリムは甘美なメロディーを奏でるが如く螺旋を描き、まるで目にする人たちを幻想の世界へと誘うかのようです。
こうしたドラマチックな演出こそがアルチャングの持ち味であり、そうした彼の才能がイスファハンの絨毯界に与えた影響は、のちの意匠師たちの作品を見れば明らかでしょう。
サインがないため断定はできませんが、セーラフィアンの初期の作品と思われる一枚。
細部のデザインから考察するにアルチャングの筆によるのは確実で、作品から発せられる朗らかな躍動感は彼ならではのセンスによるものといえるでしょう。
1940年代の作品と推定される本作はコーナーを持たない構成が特徴で、それによって拡がったフィールドには流麗なイスリムがのびのびと描かれています。
タイル工芸家として様々な歴史的建造物の修復に携わってきた彼のデザインは、あくまでイスラムの伝統様式に沿ったものであり、そこに自己顕示的なアレンジが加わることはありませんでした。
しかし流行に左右されないそのデザインは、アルチャングの没後30年を経た今日に至ってもまったく色褪せることなく、多くの人たちを惹きつけてやまないのです。
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