ペルシャ絨毯の基礎知識|ペルシャ絨毯専門店フルーリア東京
- HOME
- ペルシャ絨毯の基礎知識|ペルシャ絨毯専門店フルーリア東京
ペルシャ絨毯とは
ペルシャ絨毯とは「イラン国内で製作された手織の絨毯」をいいます。
3,000年以上の歴史を持つとも言われるペルシャ絨毯はただ美しいだけでなく
実用的で耐久性があり
クリーニングや修理も可能です。
完成されつくしたデザインは洋の東西を問わず
また、モダンからクラシックまで
ありとあらゆるインテリアにマッチ。
ペルシャ絨毯専門店フルーリア東京ではイランから直輸入した「本物」のペルシャ絨毯を
有名産地はもちろん、国内ではほとんど知られていないマイナー産地の
希少な品々をも含め、常時6000枚取り揃えています。
- ペルシャ絨毯の歴史
- ペルシャ絨毯の産地
- ペルシャ絨毯の作り方
- ペルシャ絨毯の工房
- ペルシャ絨毯のサイズ
- ペルシャ絨毯の素材……毛、絹、木綿
- 紡績具……すき機、紡錘(羽根車式)、紡錘(弾み車式)、糸車、紡績機
- 染料……染料の種類、天然染料、アニリン染料、アゾ染料、クローム染料
- 織機……水平型織機、竪型織機
- 製織具……指図紙、柄見本、製織刀、緯打具、手鋏、剪毛刀、剪毛機
- ペルシャ絨毯の構造……縦糸、横糸
- 結び……イランで用いられている結び、トルコ結び、ペルシャ結び、ジュフティ結び
- 織りの密度の表し方……イスファハン、ナイン、タブリーズ、その他の産地
- エッジ……エッジの処理の仕方、フラット・エッジ、ラウンド・エッジ
- フリンジ……フリンジの処理の仕方、平織、団子結び、二結び、斜め格子結び
- ペルシャ絨毯のデザイン構成
- ペルシャ絨毯の文様
ペルシャ絨毯の歴史
フェルドーシーが著した『王書』(シャーナーメ)には、ペルシャの地において絨毯製作が始まったのは先史時代に遡るとの記述があるものの、具体的にいつの時代からパイル絨毯が製作されてきたのかは闇の中で、まったくわかっていません。
16世紀サファヴィー朝に至るまでの作品は一枚も現存しておらず、それを特定する確固たる証拠は皆無だからです。
1949年に西シベリアのノボシビルスク南東にあるパジリク古墳な群で発見された、いわゆる「パジリク絨毯」については、長年アケメネス朝ペルシャで製作されたものとされてきました。
しかし最近の研究の結果、中央アジア説が有力になり、アケメネス朝説は廃れつつあるのが現状です。
とはいえ遥かなる昔からペルシャ絨毯が人々を魅了し、暮らしを彩る調度として、またときに富や権力の象徴として珍重され続けてきたのは紛れもない事実。
そんなペルシャ絨毯の歴史を辿ってゆくことにします。
- パジリク絨毯とバシャダル絨毯
- 書物や細密画の中のペルシャ絨毯
- 現存する最古のペルシャ絨毯
- ペルシャ絨毯の最高傑作
- 宮廷工房Ⅰ
- 宮廷工房Ⅱ
- 宮廷工房Ⅲ
- 日本に渡ったペルシャ絨毯
- サファヴィー朝の滅亡と絨毯産業の凋落
- 絨毯産業復興のきっかけを作った英国企業
- 日本で最初にペルシャ絨毯を紹介した人物
- マンチェスター・カシャーン
- 20世紀最高の絨毯工房
- 一世を風靡したアメリカン・サルーク
- パフラヴィー朝の振興政策とイラン絨毯公社
- 第二次世界大戦後
- ペルシャ絨毯研究の先駆者
- セーラフィアンの登場
- バブル景気に沸く日本とペルシャ絨毯
※【イラン(ペルシャ)の歴史】を知れば、さらにペルシア絨毯についての理解が深まります。
ペルシャ絨毯の工程
- 作画:意匠師が方眼紙にデザインを描いて指図紙を作ります(主に農村部では指図紙ではなくワギレ※を用いることもあります)。
- 染色:完成した指図紙に沿って糸を染めるか、染色済みの糸を調達します。
- 整経:竪型織機に縦糸を張ります。
- 製織:下絵もしくはワギレに従い、縦糸に横糸とパイル糸とを絡めて絨毯を織ってゆきます。
- 剪毛:織りあがった絨毯を織機から外して工場に持ち込み、剪毛刀や電動鋏でパイルを刈り揃えるとともに裏面の毛羽立ちをバーナーで焼きます。
- 洗浄:剪毛時に付着した糸屑や煤を工場内の洗い場で洗い流します。
- 整形:洗い終わった絨毯を釘で固定し形を整えます(農村部ではこの作業は省かれることもあります)。
- 乾燥:整形しつつ天日に晒して乾燥させます。
- 仕上:フリンジやエッジ他の処理を施して完成です。
※ワギレ:柄見本、サンプラーラグ。
ペルシャ絨毯の工房
工房の形態
ペルシャ絨毯の工房は二つの形態に分類されます。
一つは多数の小生産者を一つの仕事場に集め、同一資本の管理下に置いて賃金を支払い生産に従事させる、工場制手工業によるもの。
これは規模はともかく誰もが想像する工房、すなわち工芸家の仕事場=アトリエに近いもので、タブリーズなど一部の産地において見られる形態です。
もう一つは商人(問屋)である絨毯作家が材料、道具、生活費等を貸し付けて労働者や農民などの小生産者に生産させ、生産物をすべて買い取る問屋制家内工業によるもの。
大方はこの形態をとっているのですが、工房というのはあくまで概念であって、実質は絨毯作家のもとで生産に関わる人的組織のことです。
絨毯作家(カールファルマー)
絨毯作家は工房の長で、絨毯製作におけるプロデューサーです。
絨毯製作を企画して出資し、製作工程のすべてを監督。
完成した絨毯を販売します。
資産家、地主、絨毯商などがこれを務めるのが一般的です。
棟梁(オスタード)
仕事場で織師の指導・統率にあたる現場監督、ディレクター。
棟梁が絨毯作家を兼ねることもあります。
意匠師(タラーフ)
絨毯作家と契約した意匠師は、罫紙(意匠紙)上にデザインを描き意匠図を作成します。
かつては細密画家や彩飾師が意匠師を兼ねることもありました。
意匠図が完成するまで通常は1~2ヵ月はかかります。
時代を反映し、コンピューター・グラフィックスにより意匠図を作成する意匠師も現れてきました。
染色家(ラングラズ)
絨毯作家の注文に応じ、意匠図に沿ってパイル糸の染色を行います。
とりわけ天然染料による染色には地域ごとに特有の染色法があり、また染料や媒染剤の量、煮沸する際の温度や時間等々、技術と経験とが必要とされるため、染色家の持つレシピは門外不出でした。
※【有名な染色家】を見る
ペルシャ絨毯のサイズ
ポシュティ:約60cm×約90cm
ポシュティはペルシャ語で「クッション」を意味し、本来はクッションに加工するためのものです。
最近ではイランにおいても椅子とテーブルとを用いた西洋式の生活が主流になりつつあり、クッション用のウール絨毯はほとんど製作されなくなりました。
ただし、シルク絨毯については日本における玄関マットとしての需要があるため、数多く生産されています。
ザロチャラケ:約80cm×約120cm
ザール・オ・チャラク、すなわち長手が1ザールと4分の1。
1ザールは106.4cmなので、106.4+26.6=133(cm)となります。
かつては女性や子供向けの礼拝用絨毯(プレーヤーラグ)などとして用いられていましたが、安価な機械織絨毯にとって変わられ、ウール絨毯については生産数は少なくなりました。
ポシュティ同様、シルク絨毯は主に日本の市場に向けて大量に生産されています。
わが国では玄関やベッドサイドに使用することが多いようです。
ザロニム:約100cm×約150cm
長手がザール・オ・ニムで、1ザールと2分の1。
106.4+53.2=159.6(cm)です。
かつては男性向けの礼拝用絨毯などとして用いられていました。
広めの玄関や2人掛けのソファーの足元に最適なサイズです。
ハフトチャラク:約120cm×約180cm
縦がザール・オ・ハフト、横がザール・オ・チャラク。
ハフトは「7」の意で、すなわち長手が180.88×133(cm)のサイズです。
カシャーン産、タブリーズ産などに見られますが、生産数は僅か。
近年、イスファハンにおいてももこのサイズが製作されるようになりました。
ワイド幅の2人掛けソファーの足元に最適なサイズです。
ドザール:約140cm×約210cm
ドは「2」で、2ザール=212.8㎝。
もっともポピュラーなサイズで、ほとんどの産地で製作されており名品も多く見つけられます。
3人掛けのソファーの足元に最適なサイズ。
「ガリチェ」ともよばれます。
パルデ:約160cm×約260cm
パルデはペルシャ語で「カーテン」の意。
ドザールとキャレギの中間で、3畳に近く使いやすいサイズです。
ただし、ナインやタブリーズ、ケルマン等を除くとほとんど製作されていません。
キャレギ:約200cm×約300cm~約250cm×約350cm
キャレギは「頭」の意。
イランでは部屋の中央にキャレギを敷き、その左右の側部にケナレ(ランナー)、上部にミアン・ファルシュ(幅が狭いキャレギ)を敷くのが本来でした。
しかし、西洋式の家屋が増えた現代ではこうした敷き方は廃れつつあります。
リビングやダイニングのほか、わが国では和室に敷く家庭も多いようです。
ガリ:キャレギより大きなもの
欧米では人気のあるサイズですが、欧米に比べて家屋の小さいわが国にはあまり輸入されていません。
※産地により多少の差異があります。
ペルシャ絨毯の素材
毛:ウール
羊の家畜化は古代メソポタミアにおいて始まったものとされ、紀元前20世紀頃に栄えたバビロニアでは食用の羊とは別にウール用の羊が飼育されていたとも言われます。
その後、染色法が発明により、染色されたウールを用いて織られた絨毯は貴重な交易品として中東各地に広がってゆきました。
1949年から50年に掛けて、ソ連のセルゲイ・ルデンコ博士を主幹とする調査隊が南シベリアのアルタイ山中にあるパジリク古墳とバシャダル古墳で発掘した2枚の絨毯(バシャダルの方は断片)は、放射性炭素年代測定の結果、ともに紀元前3世紀頃に製作されたものであることがわかり、ウール絨毯の悠久の歴史を物語る証拠となっています。
現在でも手織で製作される絨毯の大半がウール絨毯です。
※ウールの特性については「よくある質問」をご覧ください。
絹:シルク
絹は5000年以上前の中国で、すでに生産が始まっていたと言われます。
漢の時代になると西域との交易が始まり、そのルートがのちに「シルクロード」とよばれようになりました。
同じ重さの金と同じ価値があると言われた絹の製法は門外不出とされてきましたが、西域の王に嫁ぐ中国の王女が蚕種(蚕の卵)を冠に隠して持ち出し、西域からやがてヨーロッパへもたらされたと伝えられています。
絹パイルの絨毯はサファヴィー朝のシャー・タハマスプ(在位1524年-1576年)の治世下で製作されたはじめたようで、その歴史は500年に足りません。
イランではカスピ海沿岸のラシュト、トルコではマルマラ海沿岸のブルサが絹の名産地として知られています。
※シルクの特性については「よくある質問」をご覧ください。
木絹:コットン
インドでは古くから綿栽培が行われており、有名なモヘンジョ・ダロの遺跡からは4000年ほど前に織られた綿布が見つかっています。
イランではアケメネス朝の時代にインドから伝わり、以後盛んになりました。
木綿は毛や絹に比べると強度は劣るものの、繊維の構造が密で温度や湿度の変化による伸縮が少ないため、絨毯の縦糸・横糸として適しています。
かつてヨーロッパで絨毯産業が育たなかったのは、木綿が手に入りにくかったためと言われているほど。
オリエンタルラグのパイルに木綿が使われることはインド絨毯の一部を除くとほとんどありませんが、日本の鍋島緞通や赤穂緞通、堺緞通のパイルには木綿が使用されています。
紡績具
梳毛具
刈り取られたばかりのウールは、洗浄して汚れや脂肪分を除去したのち、天日干しにされます。
選別後、金属製の櫛が付いた梳毛具(そもうぐ)にかけ、梳きほぐして紡ぎやすい状態にされますが、この作業を「カーディング」とよびます。
紡錘(羽根車式)
心棒に十字に交差した羽根車を取り付けたもので、これをクルクルと回転させながら解したウールを少しずつ指先で撚って巻き付けてゆきます。出来あがった撚りの粗い毛糸は更に糸車にかけられ、用途に応じた毛糸となります。
紡錘(弾み車式)
心棒の先に小さな弾み車が付いたタイプ。
使い方は羽根式と同じです。
糸繰車
紡錘によって紡がれた撚りの粗い毛糸は糸繰車(いとくりぐるま)にかけられ、用途に応じた固さに再び紡がれます。
二つの糸束からそれぞれ毛糸を繰り出し、1本の撚糸にします。
縦糸用の糸は固く丈夫に、横糸用はは縦糸よりもやや柔らかく、パイル糸は横糸用よりも更に柔らかく撚ってゆきます。
紡績機
とても手間のかかる手紡ぎは、いまではほとんど行われていません。
工場で紡績機によって紡がれた毛糸の束を、馴染みの糸屋で購入するのが一般的となっています。
染料
染料の種類
染料は直接染料と媒染染料とに大別されます。
アニリン染料とアゾ染料、ウコンなどの天然染料の一部は媒染剤を用いずに染色する直接染料。
天然染料の多くとクローム染料は媒染剤を用いて染料を定着させる媒染染料です。
媒染には糸を媒染液に浸した後に染色する「先媒染」、染料に媒染剤を加えて染色する「同時媒染」、染色後に媒染液に浸して定着させる「後媒染」があります。
なお、紡績後に染色する「後染め」が一般的ですが、ケルマンでは紡績前に染色する「先染め」が採用されています。
天然染料
植物性染料と動物性染料の総称で、鉱物を加工した顔料を含めることもあります。
「草木染」という言葉のとおり、そのほとんどが植物性染料で、明礬などの金属塩を媒染剤として用いる媒染染料が大半。
天然染料による染色は複雑で手間がかかる上、耐光性や耐水性に劣るという欠点があります。
しかし、天然染料ならではの趣を好む向きも多く、現在でも一部の高級絨毯などに用いられています。
※詳しくは【ペルシャ絨毯に使用される天然染料】をご覧ください。
アニリン染料
アニリン(アミノベンゼン)から抽出される合成直接染料です。
1856年に英国の化学者ウィリアム・ヘンリー・パーキン(1838~1907年)が、マラリアの特効薬であるキニーネを抽出中に偶然発見し、「モーブ」という薄紫色の染料として商品化したのが最初。
1880年代にはイランやトルコなどの手織絨毯の原産国にも伝搬しました。
色数は少なく、発色が強烈な割に退色しやすいのが特徴です。
イランでは1903年に輸入・使用が禁じられました。
アゾ染料
アニリン染料に少し遅れて開発された、アゾ基(?N=N?)を持つ合成直接染料です。
合成が比較的容易で安価。
さらに色数が多く深みのある色が得られることから、現在でも流通している染料の半分以上を占めると言われます。
しかし色によっては定着が悪い上、有害性物質を含むものもあることが報告されています。
クローム染料
クローム塩(画像)などの金属化合物を媒染剤として用いる合成染料です。
媒染剤との化学結合によって繊維に染着するため、退色しにくいのが特徴。
アゾ染料を改良したものゆえ色数は豊富ですが、アゾ染料よりも高価となります。
手織絨毯には1940年代に使用されはじめ、その後主流となりました。
織機
水平型織機
主に部族出身の定住民が使用している織機で、竪形固定式を水平型にした造りです。
サイズに限界がある移動式とは異なり、大きな絨毯を製作することも可能。
移動式は木製ですが、固定式には金属製のものもあります。
竪型織機
水平型を進化させたもので、竪型の基本となるタイプです。竪型は水平型のように場所をとらないのが最大の利点。固定式は作業の進行に合わせて座る高さを変える面倒があるものの、進行状況や仕上がり具合を一目で確認することが可能です。
都市部では小さなサイズの製作に用いられますが、農村部においては大きなサイズに至るまで固定式を用いているところもあります。
竪型固定式を改良したもので、イランでは「タブリーズ式」とよばれます。
作業の進行に合わせて回転させられるのが特徴。
座る位置を一定に保つことができる上、同じ大きさの固定式に比較すると2倍の長さの絨毯を製作することが可能です。
イランでは「ケルマン式」とよばれ、下方のビームがローラーになっているタイプ。
織りあがった部分をこれで巻取りながら作業を進められるため、大きなサイズやランナーの製作に適しています。
前で巻取るタイプと後ろで巻取るタイプの2つがあります。
製織具
意匠図(ナグシェ)
意匠師が作成した意匠図を等間隔に切断して板に貼り付けます。
フィールドとボーダー、ガードは別になっており、それぞれを組み替えて多様な作品を製作することができます。
柄見本(ワギレ)
農村部で下絵の代わりに使用されることがある柄見本(サンプラー・ラグ)。
イランでは「ワギレ」と呼ばれます。
製織刀(チャクーエ・バフト)
イランでは「チャクーエ・バフト」と呼ばれる色糸を結んで切るためのナイフ。
農村部の織子や部族民が使用するものは単純な作りの小刀ですが、都市部においては先端が鈎針のようになったものを使います。
とりわけトルコ結びの場合、前後2本の縦糸を一組としてつまみ、パイル糸を先端部で鈎針で引掛けて結び目を作ってゆきます。
刃の部分が1ラジ(6.65センチメートル)になるように製作されるのが普通。
杼(シーク・プーデケシー)
一段パイルを結び終えると杼(ひ)で横糸を通します。
綜絖により作られた杼口に杼を差し込み、先端のフックに横糸を掛けて引き出します。
緯打具(ダフティーン)
一段パイルを結び終えると横糸を筬(おさ)で縦糸の間に通した後、柄のついた鉄櫛で強く叩いてしっかりと固定させます。
この鉄櫛を「ダフティーン」と呼びます。
サイズ、形状ともにいくつかの種類があります。
手鋏(ゲイチー・ダスティー)
イランでは「ゲイチー」と呼ばれる鋏ですが、絨毯製作に用いられるものは柄の部分が突出した形状になっています。
パイルを数列結び終える毎に、鋏で短く刈ってゆきます。
剪毛刀(バルパーキー)
織りあがって機から下ろした絨毯を剪毛(シャーリング)するためのもの。
バターナイフのような形状で、利き手で柄を握り、もう片方の手を添えてパイルを刈ってゆきます。
電動鋏(ゲイチー・バルキー)
現在は掃除機の先に刃物を取り付けた電動鋏が普及しています。
ペルシャ絨毯の構造
縦糸
縦糸の重なり方の違いにより、絨毯の強度は変わってきます。
縦糸の重なり方は「ダブル・ノット」「セミ・ダブル・ノット」「シングル・ノット」の三つに分かれますが、これは地域や年代の違いによるもので、同一産地の作品の優劣を表すものではありません。
パイルを絡めた2本の縦糸がほぼ完全に上下に重なる構造。
露出している縦糸の列の奥にもう1列縦糸が隠れており、二重構造となっているため堅牢で耐久性に優れています。
シティーラグはこのルール・バフトが一般的。
パイルを絡めた2本の縦糸が少しずれて重なっている構造。
ニムはペルシャ語で「半分」の意です。
ビレッジラグやトライバルラグの多くはこの構造。
ルール・バフトほどではありませんが、タフト・バフトよりは丈夫です。
縦糸が横一列に並んでいる構造です。
パイルは2本の縦糸に絡めますが、タフト・バフトはパイルを絡めた縦糸の列がすべて露出するため、ノット数は縦糸の列の半分が正解。
絨毯は薄くなるものの、堅牢さはルール・バフトやニム・ルール・バフトに劣ります。
横糸
横糸はそれぞれの縦糸に対し、交互に掛けてゆきます。
一列通し終わると緯打具で叩いて固定させます。
横糸の本数により「シングル・ウェフト」「ダブル・ウェフト」「トリプル・ウェフト」と呼称されます。
1本の太い糸を横糸として用いたもの。
一段ずつ互い違いに掛けてゆきます。
勘違いされることが多いのですが、シングル・ウェフトだから弱いということはありません。
シングル・ウェフトはイラン北西部から中西部にかけて産出される絨毯によく見られます。
1本の太い糸と1本の細い糸、もしくは2本の同じ太さの糸を交互に掛けたもの。
前者は太さの違いによる張力差からルール・バフトもしくはニム・ルール・バフトの構造になり、後者は張力の差がないためタフト・バフトの構造になります。
ダブル・ウェフトの進化形で、3本の横糸を用いたもの。
サファヴィー朝期に製作された花瓶文様絨毯やサングスコ絨毯、ポロネーズ絨毯などがこの構造ですが、現在はほとんど用いられていません。
なお、ビジャー絨毯が硬いのはトリプル・ウェフトであるからと解説している書籍がありますが、ビジャー絨毯はダブル・ウェフトです(画像は1960年代に製作されたギャッベ)。
結び(ノット)
イランで用いられている結び
イランで用いられている結びはトルコ結びとペルシャ結び。
ほかにはスペイン結び、チベット結びなどがあります
トルコ結び(ゲレ・トルキー)
「ギョルデス結び」ともよばれ、トルコ、コーカサス地方、イラン西部を中心に用いられています。
ギョルデスはトルコ西部の絨毯産地。
鉤針を使用して結べるため、ペルシャ結びに比べて製作期間を大幅に短縮できます。
ペルシャ結び(ゲレ・ファルシー)
「セネ結び」ともよばれ、西部を除くイラン、トルクメニスタン、カザフスタン、アフガニスタン、ウズベキスタン、パキスタン、インドなどで用いられています。
セネはイラン北西部の絨毯産地ですが、セネ産の絨毯はトルコ結びで製作されるのが普通。
トルコ結びよりもタイトになります。
ジュフティ結び(ゲレ・ジュフティ)
ジュフティは双子の意で、本来2本の縦糸に絡めるべきパイルを4本の縦糸に絡める「ごまかし」の技法。
完成までの日数を短縮することができますが、耐久性は大きく損なわれます。
ジュフティ結びがよく用いられる産地としてはイスファハン、ナイン、タバス、ケルマン、ビルジャンドなどがあります。
ジュフティ結びには画像の例以外にも様々な方法があり、完全に見破るには経験が必要。
※詳しくは【ジュフティ結びについて】をご覧ください。
織りの密度の表し方
イスファハン
「ヘフト」を用います。
1ヘフトは縦方向のノットの列が100列。
1メートル中のヘフトの数がいくつあるかにより「○○ヘフト」と表します。
画像はサッラフ・マムリ作のイスファハン絨毯。
キリムの部分にヘフトを示す朱色の線が見えます。
ヘフトを「サタイ」と呼称することもあります。
ナイン
縦糸を構成する糸の本数で表します。
縦糸が9本撚りであれば「ノーラー」(9LA)、6本撚りであれば「シシラー」(6LA)、4本撚りであれば「チャハルラー」(4LA)です。
撚りの本数が少ないほど縦糸は細くなりますので、織りは細かくなります。
画像はシシラーの縦糸を分解したもの。
6本の細い糸で構成されていることがわかります。
タブリーズ
1ラジ=6.65センチメートル中にノット列がいくつあるかにより「○○ラジ」と表します。
縦方向と横方向とでラジが異なる場合は足して2で割ることもあります。
製織に用いる鈎針ナイフは、刃の部分が1ラジになるよう作られるのが普通。
イラン人は、たとえば36ラジであれば40ラジ、64ラジであれば70ラジというように端数を切りあげる傾向があります。
その他の産地
便宜的にラジを用いる場合が多いようです。
イラン絨毯博物館では、すべての収蔵品をラジで統一しています。
なお、ヨーロッパでは1平方メートル中のノット数で「○○万ノット」、米国では1平方インチ中のノット数を「○○KPSI」で表しています。
は、Knots Per Square Inchの略です。
エッジ(シラゼ)
エッジの処理の仕方
エッジは製織の進行に合わせながら処理してゆくのが基本ですが、ペアで製作する場合、あるいは産地によっては絨毯を機から降ろした後、別に用意したエッジを取り付けることもあります。
平エッジと丸エッジの二つに分けられます。
平エッジ(ハシリ)
イランでは「ハシリ」と呼ばれる、左右端の縦糸2本以上で平織を作るようにして仕上げたエッジ。
ハシリは「簾」(すだれ)の意で、縦糸のラインが簾のように見えることからそう呼ばれます。
丸エッジ(ルール)
左右端の縦糸2本以上をまとめてかがったもので、イランでは「ルール」と呼ばれます。
今日、ペルシャ絨毯の大半はこのタイプ。
絨毯を織機から外した後、別に製作したコード状のエッジを縫い付けることもよくあります。
フリンジ(リーシェ)
フリンジの処理の仕方
パイルを結び始まる前に、まず平織を作ります。
絨毯を機からおろした後、平織を解いてフリンジにします。
平織(ゲリーム)
織りあがったばかりの絨毯の上下端は平織=キリム(イランではゲリーム)の状態になっています。
これを解いてフリンジに仕上げますが、イランでは平織のままが好まれます。
その方が傷みにくく、傷んだとしても解けばフリンジにできるから。
また平織は構造の良し悪しや、織子の技量を見極めるポイントにもなります。
一般に、よい絨毯はこれがを綺麗に仕上がっています。
団子結び(ゲレ・ノホディ)
日本で言うところの「団子結び」。
ノホディはヒヨコ豆の意で、ゲレ(結び)がヒヨコ豆に見えることからそう呼ばれます。
かつては多くの産地で用いられていましたが、イスファハンなどを除くとド・ゲレに取って代わられています。
二結び(ド・ゲレ)
ドは数字の「2」、ゲレは「結び」で、いわゆる二(ふた)結び。
外れにくく見た目も美しいことから、現在はこのタイプが主流になっています。
斜め格子結び(ルネ・ザンブリ)
ルネは「巣」、ザンブルは「蜂」で、ルネ・ザンブリは「蜂の巣」の意。
ゲレ・ノホディもしくはド・ゲレの結び目を半分ずつずらしながら2列以上重ねたもので、蜂の巣のように見えることからそう呼称されます。
「ザンブリ」と略されるのが一般的です。
ペルシャ絨毯のデザイン構成
➀(外)ガード:ハーシエ・クーチェク
➁ボーダー:ハーシエ・ボゾルグ
➂(内)ガード:ハーシエ・クーチェク
➃フィールド:ザミネ
➄メダリオン:トランジ
➅ペンダント:サル・トランジ
➆コーナー:ラチャク
➀クロスパネル
➁スパンドレル:ラチャク
➂吊ランプ:ガンディール
➃柱:ストゥーン
➄フィールド:ザミネ
➅(外)ガード:ハーシエ・クーチェク
➆ボーダー:ハーシエ・ボゾルグ
➇(内)ガード:ハーシエ・クーチェク
ペルシャ絨毯の文様(図柄、デザイン)
※画像をクリックすると解説が見られます。
店舗案内
名称 | Fleurir – フルーリア – |
---|---|
会社名 | フルーリア株式会社 |
代表者 | 佐藤 直行 |
所在地 |
■ペルシャ絨毯ショールーム ■フルーリア株式会社本社(事務所のみ) ■世田谷倉庫 ■イラン事務所 ■警備事業部(準備中) |