ペルシャ絨毯に見られる欠陥
波打ち
ペルシャ絨毯は手織であるため、織りの過程で乱れ等が生じることがあります。
それらは手織ならではの味として、通常は歓迎される傾向にありますが、あまりに酷い場合、もしくは構造上に問題を及ぼす場合は欠陥とみなされます。
これらの欠陥は絨毯の品質や価値を下げる要因になるので、ペルシャ絨毯を購入する際には注意深く確認することが必要です。
ペルシャ絨毯の欠陥とされるものには以下のようなものがあります。
1. イランのデザインではない
外国のデザインをそのまま用いて絨毯が製作された場合、つまり絨毯のデザインがイランの民族的、文化的背景からインスピレーションを受けていない場合、その絨毯は「本物ではない」と言われます。
こうしたデザインは伝統手工芸品に用いられるものとしての要件を満たしておらず、商業的な視点のみから採用されたものです。
当然、伝統手工芸品としての価値を有しているとはいえません。
2. 絨毯の伸び
絨毯が極端に伸びている場合は、意匠図に適合しない素材(パイル、縦糸、横糸)を使用している可能性があります。
これは、絨毯に使用される糸の太さが意匠図に合致していないということです。
3. 織りの乱れ
パイルを結んだ後、緯糸を入れて緯打具で打ち込む作業が各列ごと均一に行われていなかったり、結び目が意匠図のとおりでなかったりすると、織りの最後に文様が乱れるという欠陥が起こります。
例えば、左右対称になる筈の花文様が非対称になっている場合は織りの不正確さ、または使用される糸の不適合などの原因が考えられます。
4. 長さが短すぎる
意匠図に対し絨毯が極端に短くなっている場合、意匠図に適合しない糸を使用している可能性があります。
5. ノットの省略
織り時間を短縮したり、パイルや縦横糸などの素材の量を節約したりと、製作にかかる費用を抑えるために、パイルの長さを規格より長くする場合があります。
絨毯が完成すると軽くてスカスカとした感じになり、耐久性が損なわれます。
ノットの省略はケルマンやアゼルバイジャンの一部で見られます。
6. 幅の歪み
緯打具でパイルと横糸を固定する工程が均一に行われる場合、絨毯には何の問題も起こりませんが、クルディスタン、特にビジャーをなど一部の地域では、独特の慣習に従って、特殊な緯打具を用いてこれが行われます。
その際、織りがずれて絨毯の端が丸まり、修正できないことがあります。
7. メダリオンの歪み
メダリオンの上下左右が対称でない場合は、織りが均一ではない証拠です。
この現象は織師の技量が不足している場合に起こります。
8. パイルの刈り斑
パイルの一部が他の部分のような滑らかさと均一性を持たない状態は、鋭く研がれていない鋏を使用したり、鋏の使い方が正しく行われなかったことによって発生します。
パイルを鋏でカットする作業は、十分な精度と技術が必要です。
これらを遵守しないとパイルが均一になりません。
9. 横糸の省略
通常ペルシャ絨毯は、パイルを1列結び終わった後に横糸を入れます。
しかし、ビルジャンドなど一部の地域では時間と糸を節約するために、2列または3列、場合によってはそれ以上の列にパイルを結んだ後、横糸を通します。
>10.
意匠図が複雑である場合、パイルを結ぶ作業は難しくなります。
つまり、絨毯のデザインが複雑で、全面が花や草木などで覆われている場合、織師には練度と技術が要求されます。
絨毯のデザインの一部が欠けている場合、その箇所は「静かである」と言われます。
11. 両手利き
織師が病気、死去、離婚、絨毯作家との対立などの理由により製作の半ばにして作業を継続できなくなった場合、別の織工が作業を引き継ぐことがあります。
2人の技術や身体能力が大差なければ問題ないのですが、それが異なる場合、絨毯の仕上がりに影響します。
イランでは「両手利き」と呼ばれるこの欠陥は、織師の力の強さ、動き、視力、その他の精神的および肉体的条件の違いによって起こります。
12. アブラシュ
ペルシャ絨毯には、文字の一部がそのカーペットの他の部分と比べて色が異なっていることに気づくことがあります。
この違いは、1センチメートル未満からカーペット全体の半分に及ぶ場合もあります。
13. パイルの刈りすぎ
ハサミで織る際にパイルを切りすぎて、表面の毛足が短く、手で触っても毛足が感じられない場合は、カーペットの耐久性が問題となるため、このカーペットは欠陥品となります。
パイルが極端に短い絨毯は欠陥品と見なされ、その価値も低下します。
この欠陥は絨毯全体に見られることもあれば、一部に見られることもあり、絨毯を使用すると磨耗による問題が発生する可能性があります。
14. 白い線
白い線は、絨毯の表面あるいは裏面に現れます。
これらの線は色が薄かったり濃かったりと、他の部分と色が合っていません。
この欠陥の原因は、染色の不具合によっておこります。
つまり、染師が染色時に十分な注意を払わなかった結果、パイルの表面だけが染まり、糸の中心部が染料を吸収していないことにより生じるものです。
15. カラーリングの失敗
フィールドとボーダーの色、またはフィールドとメダリオン・コーナーの色が調和していない場合、絨毯の評価は低くなります。
>16.
絨毯を平らな場所に置き、上端を下端を重ねると長さが違うことがあります。
上端と下端は同じ長さであれば絨毯の四隅は一致しますが、これを「頭がない」と言います。
上端もしくは下端がもう一方の端より長いか短い場合、その絨毯には「頭がある」と言われます。
17. 中心のズレ
一部の絨毯では、長さを測り、縦半分をもう半分の上に置くと、絨毯の半分の長さが反対側よりも長くなります。
これを絨毯の非対称性と呼びます。
18. パイルの緩み
イランの一部の地域では、農業や畜産業の実施、風習や習慣、絨毯織りの特殊性などの理由により、通常、手で絨毯を織る時間が通常よりも少し長くなります。
また、季節の変わり目、カーペットを織る場所の湿気や寒さ、暑さなどの環境要因により、時間の経過とともにパイルが緩み、強度や耐久性が低下し、パイルが抜けてしまう可能性があります。
ドアの衝撃に耐えられず、織工は引き裂かれた糸をつなぎ合わせて結び付ける必要があります。
このようにして形成された結び目は、特に洗濯後にカーペットの表裏から目立ち、カーペットの欠点の1つと考えられており、したがって、パイルの緩んだ部分の質感が劣って見えます。
19. 形状の悪さ
ペルシャ絨毯にはサイズの規格があります。
完成した絨毯の長さもしくは幅が規格より大きすぎる場合、「形状が悪い」「広がっている」「伸び徒や、正方形、円形、楕円形、菱形などの、いわゆる変形の絨毯は顧客の注文や好みに応じて製作されることがありますが、通常は規格のサイズを厳守する必要があります。
20. 波打ち
織師が織りの途中で横糸の太さや本数を変えた場合、または緯打具を他の部分より強く叩いた場合、その部分はより強い力を受け絨毯は波打ちます。
波打ちがあまりにも酷い絨毯は欠陥品とみなされます。
21. 反り
絨毯の反りは欠陥の一つであり、これは緯打具の叩きすぎ、質の悪い織機の使用、結びの不均一が原因である可能性があります。
他の部分と比較して、そのが緩んだり硬くなったりすることで絨毯に歪みなどが発生します。
22. 単調な床
絨毯のデザイン的に充実しておらず、1色のみが使用されている場合、イランでは「単調な床」と呼ばれ、この場合、カーペットには特別な芸術が存在しないと言われます。
したがって、市場や顧客に適した、さまざまで豊かなモチーフを持ったデザインを織り手の手に渡すのが良いのです。
23. 角の突出
明らかな欠陥です。
カーペットの四隅のうちの 1 つが他の角と異なっている場合、イランでは「絨毯に穴が見つかった」と言われます。
これは、幅と長さの点で他の角よりわずかに長く曲がった先端です。
それは垂れ下がった唇のように見えます。
この欠陥は、完成した絨毯を織機から切断して分離するとき、またはカーペットを引き下げるときの糸の緩みや不正確によって生じます。
24. 曲がない
織られた絨毯に魅力的なパターンがなく、民族的、文化的、歴史的ルーツにインスピレーションを得た特別なメッセージがなく、面白みに欠ける場合、その絨毯には「曲がない」と言われます。
25. 端の破れ
絨毯の端が1センチから20センチほど破れることがあります。
ペルシャ結びの絨毯のエッジの処理をする場合に正確に糸を巻かなかったり、太すぎる縦糸と横糸を使用してパイル糸の使用量を減らしたりすると、このようなことが起こります。
26. パイルが正しく結ばれていない
パイルが正しく結ばれていない場合があります。
北ホラサン州やイスファハン州、ケルマン州などでよく見られるジュフティ結びや、ケルマン州とアゼルバイジャン地方の一部で見られるノットの省略などです。
27. ノットが甘い
パイルの結び目は絨毯の裏側で同じ大きさでなければなりません。
そうでないと、裏面が醜くなってしまいます。
これを防ぐために、結んだパイルの頭をしっかりと引っ張る必要があります。
28. ハサミの扱いが下手
ペルシャ絨毯産地の一部では、織りの途中に仕上げが行われます。
これは手仕上げと呼ばれ、ハサミを使用して行われます。
パイルの長さ(絨毯の厚みではなく、パイルの根元から先端までの長さです)はシルクの場合は5mm、ウールの場合は8mmを下回ってはなりません。
場合によっては、数列のパイルの長さが標準より短くなり、最終的にはカーペットの他の部分もカットしなければならないこともあります。
29. 意匠図の読み違い
織師の不注意や能力の欠如により、絨毯に修復不可能な欠陥が生じることがあります。
意匠図の読み違いは多少であれば手織ならではの味になりますが、あまりにも酷い場合は欠陥とみなされます。
たとえば、文様が正確に織り込まれていなかったり、中心が大幅にずれたりすると、文様が本来の形を失って滅茶苦茶になったりします。
30. 緯打具の叩きすぎ
織る際に細い横糸を叩きすぎると、細い方の横糸が絨毯の裏側から飛び出してしまいます。
31. 角に花がない
一般にペルシャ絨毯のデザインでは、4つののボーダーの角でモチーフが45度に傾きます。
一部のペルシャ絨毯では、横方向のメイン・ボーダーを端まで伸ばします。
ところがボーダーの角に文様が置かれず、大きな空白ができたものが見つかることがあります。
この場合、イランでは「角に花がない」と言われ欠陥とされます。
上記に加えて、それほど重要ではない色あせやなど、他の欠陥が見られることもあります。
一般的にはパイル糸の太さが意匠図と一致しなかったり、絨毯を織る道具に欠陥があり、絨毯の質感を損なったりするなど様々な理由により、織りあがった絨毯に品質の質感がない可能性があります。
あるいは、織りや緯糸などの工程の精度が落ちると、完成した絨毯の品質が低下します。
参考サイト
https://takfarsh.com/