世界中でコピーされるペルシャ絨毯

世界中でコピーされるペルシャ絨毯

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ペルシャ絨毯の魅力は、類稀なる美しさはもちろんのこと、厳選された素材と卓越した職人技がもたらす高い品質、そして2500年以上にも及ぶ伝統にあると言えるでしょう。
これらには、タブリーズ、カシャーン、イスファハンなど産地ごとに異なるスタイルがあり、それぞれの歴史や文化が織りなす物語は、ペルシャ絨毯を唯一無二の工芸品として際立たせています。
こうした魅力がペルシャ絨毯を収集するコレクターや、室内装飾品として嗜好する愛好家たちの心を掴んでいるのです。

しかし、エルメスのバッグやロレックスの時計を見れば明らかなように、高価で人気のある品には必ずやコピー品が出現します。
それはペルシャ絨毯とて例外ではありません。
中国やインド製作されるコピー品については以前から知られていましたが、最近ではアフガニスタンやパキスタンがこれに加わり、これまで見かけなかったタイプのコピー品が出回るようになっています。

これらコピー品が増えることで本物のペルシャ絨毯の価値が希薄化する可能性が高まっていますが、イラン政府は何らの対策もとれていません。
ペルシャ絨毯は歴史的、文化的背景により物質以上の価値を認められていることはこれまでにも再三述べてきました。
しかし、コピー商品にはこれらの要素がまったくありません。
その結果、多くの消費者が誤ってコピー品を選び、本物が持つ本来の価値を理解できなくなるという現象が起こり得ます。

コピー品が蔓延すれば、ペルシャ絨毯の生産者や職人にとって深刻な経済的影響をもたらすことは明白です。
コピー品は安価な人件費をもって製作されるため消費者に訴求しやすく、結果として本物の売行きに影響を与える可能性があります。
この経済的な圧力は、やがてペルシャ絨毯の製作技術や文化といったものを失わせる危険性をも孕んでいるのです。

模倣品が量産されることで、消費者や市場も変化してゆくでしょう。
安価で手頃手に入る模倣品が広がることで、ペルシャ絨毯に対する理解が薄れ、本物の価値や魅力を見失うことが懸念されます。
ペルシャ絨毯が持つ伝統的な価値や文化的な意義が軽視され、長い伝統を持つ工芸技術が失われてしまうという状況が発生するのです。

このような状況を打破するために、いくつかの取り組みが行う必要があります。
一つは消費者教育の強化です。
消費者自身が、ペルシャ絨毯の文化的価値や製作技術を正しく理解し、模倣品に対する認識を高めることが重要です。
本物を提供する業者は、その技術やデザイン、歴史的背景を正しく伝えることによって、消費者が価値を見出す手助けをし、コピー品に対抗する力を強めなければなりません。

また国際商標登録などを活用し、コピー品の流通を抑制する努力も求められます。
オリジナルのペルシャ絨毯を生産する職人や企業は、独自のデザインを保護し、権利を主張することで、自らの技術や文化を守ることができるようになります。
政府や国際機関による保護施策が、地元の伝統工芸の持続可能性に寄与することが期待されます。

INCC(イラン国立絨毯センター)をはじめとする絨毯産業に関わる組織が、いま以上にペルシャ絨毯の価値を守るための活動を行うことも必要です。
職人の技術を支援し、文化交流を促進するプログラムを通じて、ペルシャ絨毯の伝統を維持し、次世代に継承していく取り組みが求められています。
ワークショップや展覧会などの開催によりペルシャ絨毯の魅力を体感してもらうことで、産業や産地の発展と持続可能性が確保されるでしょう。

新たなコピー品の登場は、金銭的な問題にとどまらず、文化、経済、歴史全般にわたる複雑な影響を与えます。
本物の価値を理解し尊重することで、私たちが所有する文化遺産を守っていくための道筋を築く必要があるのです。
コピー品の流通によっても失われることのない、ペルシャ絨毯の真の価値を次の世代に知ってもらうため、私たち一人一人ができることを考え行動することがいま求められています。

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