日本にいるペルシャ絨毯修理職人のレベルについて

日本にいるペルシャ絨毯修理職人のレベルについて

[画像:ペルシャ絨毯の修理風景]

ペルシャ絨毯を修理に出す場合、担当する職人が上手いのか下手なのか、これは実に気になるところでしょう。
ペルシャ絨毯は高価であるだけに当然です。
いきなりなのですが、日本にいるイラン人の修理職人のレベルはかなり低いのが現状です。
弊社でもこれまで数多くの修理職人と関わってきました。
しかし、その中で納得できるスキルを持った職人は2、3人だけだと記憶します。
弊社では現在、そのうちの1人の職人に依頼しています。
それでは、なぜこのような状況になっているのでしょうか?
その理由を以下に解説します。

日本にいるイラン人のペルシャ絨毯の修理職人のレベルが低い理由は、技術的な問題だけではなく、様々な事情が絡んでいます。
まず知っておかなければならないのは、ペルシャ絨毯の修理には専門的な知識と技術が必要であるということです。
修理のための知識や技術はイランでは長い歴史とともに受け継がれてきました。
ペルシャ絨毯には何千年もの歴史があるとされますが、修理の歴史もまた、それに追随しているのです。
イラン国内では絨毯製作や修理に関する職業訓練の場が用意されており、職人になろうとする人たちは知識や技術を身に付ける機会に恵まれています。
しかし、日本に住むイラン人の場合、修理についての知識や技術を学ぶ、あるいは現地で身に付けたそれらをレベルアップするということが難しい状況があるのです。

また、イラン人職人が日本に移住した背景にも言及する必要があります。
彼らは様々な理由で来日し、そして様々な職業を経験しています。
こうした経歴の中で、絨毯修理のスキルをまったく持っておらず、日本に来てから修理職人に転じた者も少なくないのが現実です。
修理職人としての修行や経験が欠如している場合、ペルシャ絨毯の特性や文化的背景に基づいた修理を行うことは難しく、それが結果的に技術の低下を招いています。
これは絨毯商にも当て嵌まることで、まったく違う職業から日本に来てから絨毯商に転向した者がほとんどという事実を知っておきましょう。

さて、日本人がペルシャ絨毯に求める価値は技術的なものだけではありません。
技術的な価値をハードとするならば、ソフトの部分、すなわち歴史的・文化的な価値に関するものが大きいといえます。
しかし、多くのイラン人職人はそのソフトの価値を十分に理解していない場合が多いのです。
日本人が持つペルシャ絨毯への期待の大きさが、イラン人の感覚とは異なることがあり、齟齬が生じる原因になります。
ペルシャ絨毯特有の色や柄は、その地域の文化や歴史を反映しているため、マニュアル的な修理にとどまらず、その背景を理解した上での作業が必要とされます。
日本にいる多くの職人が持つ技能では、そのデリケートさをカバーすることは困難です。

日本の顧客の意識も重要な要因です。
ほとんどの日本人は、ペルシャ絨毯の構造やその修理の方法を理解していません。
そのため修理の質のよりもコストを優先させる顧客が多いように思います。
数社から見積をとり、最も安いところに依頼といった具合です。
修理が如何に手のかかる作業であり、仕上りが職人によって雲泥の差があることを知らないため、質よりも安さを求めてしまうのでしょう。
こうなれば職人は効率を重視した作業を行わざるを得なくなります。
結果として質の高い修理を提供できないという悪循環が生じてしまうのです。
また、依頼者が急ぎの修理を希望する場合、職人は時間的制約から質を犠牲にせざるを得なくなり、技術の低下を加速させる原因になります。

言語の壁も大きな問題でしょう。
日本語の習得が十分でない職人が多く、日本の商習慣や顧客とのコミュニケーションにおいて障害となっています。
顧客のニーズを理解し、それを修理に反映させるためには、言語の理解が不可欠ですが、それができなければ職人は自信を持って技術を発揮できない状況に陥ってしまいます。
顧客とのコミュニケーション不足が、技術の向上を妨げる一因ともなっており、職人は自分の技術をアピールする機会が限られています。
修理の際の正確なニーズを把握できないまま作業を進めることで、期待に応えられず、下手な修理として評価される結果に繋がってしまうこともあります。

そして、修理に必要な材料や工具へのアクセスについても考慮する必要があります。
日本国内ではペルシャ絨毯の修理に必要な材料や工具が手に入りにくく、これが職人の技術を制約する要因となっています。
糸一つをとってみても、修理に用いられる糸は絨毯の産地に合わせたものが必要となります。
産地ごとで羊の種類が違えば、染色の方法も違うからです。
適切な材料や工具がなければ、修理の品質が低下するのは当然であり、職人は本来の技術を活かすことが難しくなります。
この問題は職人が適切な知識とスキルを持っていても、材料がないことで彼らの能力を限界に追いやる要因にもなり得るのです。

このように、イラン人のペルシャ絨毯の修理職人が下手という現象には、技術的な要因だけでなく、文化的な理解、経済的な環境、顧客のニーズ、言語の壁、材料の入手状況など、さまざまな複合要因が影響しています。
これらの要素を考慮に入れることによって、修理技術の向上や職人の成長を促進するための施策が生まれることが期待されます。
将来的には、日本においてもペルシャ絨毯の修理技術が正当に評価され、イランの職人が持つ独自の技術や文化が生かされることを願っています。

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