欧米で愛されるトライバルラグ

欧米で愛されるトライバルラグ

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欧米人のトライバルラグ好きは有名です。
熱狂的なマニアもいて、コレクターの数も日本はおろかイランの比ではありません。
それではなぜ、欧米人はこれほどまでにトライバルラグを愛するのでしょうか?
トライバルラグが欧米で愛される訳を探ることは、欧米人の価値観や美的感覚を知る上で極めて興味深いものです。



トライバルラグは主に中東や北アフリカの少数民族によって製作される絨毯ですが、そのデザインや技術は各民族が長い歴史の中で培ってきました。
これらのトライバルラグは、個性的な文様や色彩を持ち、文化的アイデンティティや隠れたメッセージを秘めたものです。
あえて誤解を招きかねない言い方をすれば、近代文明とは対極にあるもの、すなわち中世以降、文明の前衛を担ってきた欧米人たちにとっては、未知なる世界を垣間見せてくれるものなのかもしれません。



それはさておき、こうした前時代的なともいえるトライバルラグが人気を呼ぶのは、一にも二にもそのデザインにあるのは間違いないでしょう。
その複雑怪奇なデザインは、かつて全米でサイケデリックが流行になったのと同じように、精神的な高揚を呼ぶものなのかもしれません。
これは精神科医であったフロイトが診察室にカシュガイのメインラグを置いていたことに通じるものです。
忙しい現代人が過酷な現実から逃避する先にあるのがトライバルラグだったのではないでしょうか。



さて、欧米人はとりわけインテリアへの関心が高いように思われます。
欧米では、わが国とは比べものにならないほどの数のインテリア雑誌が出版されており、それらに掲載されている写真も遥かに質の高いものです。
ファッションに同じく、インテリアのトレンドも常に欧米から発信されていて、欧米人の気質として個性的なアイテムが求められています。
よい意味での自己主張の強さがトライバルラグの強烈な個性と結びつき、新たなスタイルを生み出しているのでしょう。
事実、若い世代のあいだでトライバルラグが静かなブームになったきっかけは、欧米の若手デザイナーたちによるSNSへの投稿でした。



このようにトライバルラグは、クリエイティブな発想を尊ぶ欧米人のニーズに見事に応えているように思います。
超モダンな空間にこの極めて前時代的な敷物を採り入れるという発想は、保守的なアジア人にはなかなか思いつかないものです。
最近では、やはり欧米発の持続可能性やエコロジーといった価値観がトライバルラグの魅力を更に強化しています。
米国の生物学者で環境問題の提唱者であるレイチェル・カーソンの思想は、時を超え、形を変えて、いまトライバルラグの評価を高めているのです。



そもそもイランでは価値を見出されていなかったトライバルラグに光を当てたのは、欧米の好事家たちでした。
欧米で開催されるオークションにはトライバルラグの名品がたびたび出品されており、信じられないような高値で落札されています。
欧米における市場は年々成長し続けており、いまやトライバルラグはアートとしての地位を確立しています。
それはわが国におけるギャッベ・ブームとは一線を画す文化的かつ建設的なものです。
これは欧米人たちがトライバルラグの真の価値というものを理解しているからに他なりません。
インテリア関連のイベントではトライバルラグが主役として取り上げられることも多く、その需要は一層高まっているのです。



インターネットの普及に伴い、オンラインプラットフォームでもトライバルラグが広く取引されるようになりました。
愛好家は、それを利用して国外からもお気に入りのトライバルラグを見つけられるようになり、自分のスタイルや好みに合った品を入手できる機会が増加しています。
またオンライン上のコミュニティを通じ、愛好家同士の交流も活発になっています。
欧米の愛好家たちから発信される情報は、世界の隅々まで伝わり、わが国においてもトライバルラグが注文される契機となるでしょう。



欧米にはジェームズ・オピー著『TRIBAL RUGS』や、ブライアン・マクドナ著『TRIBAL RUGS』(オピーの著書と同名ですが、内容はまったく違います)など、トライバルラグについての素晴らしい書籍が何冊もあります。
ころらによって得られる知識は、私たちにとっての宝となる筈です。
明治の日本人たちは欧米人たちの知識を余すことなく吸収し、わが国を世界の一等国へと導きました。
近い将来、日本においてもトライバルラグが欧米並みに人気となる日が来るかもしれません。

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