2025年のペルシャ絨毯の輸出状況

2025年のペルシャ絨毯の輸出状況

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2025年も間もなく終わろうとしています。
今年は絨毯業界にとっては大変な年でした。
7月には、わが国屈指の絨毯卸業者であった(株)モリヨシさんが16億円の負債を抱えて倒産。
政府の無策がもたらした日本経済の衰退は、絨毯業界にとどまらず、多くの卸売業者、小売業者を苦境に立たせています。
イランにおいてもトランプ政権による経済制裁の強化により輸出は低迷し、とりわけ絨毯産業は瀕死の状態です。
2025年は当初、イランのペルシャ絨毯輸出の転換点となると予想されていました。
しかし輸出額は昨年と大して変わらず、停滞は続いています。

昨年3月にイラン政府が公表した政策に基づき、ペルシャ絨毯と他の手工芸品の輸出業者に課せられるリバトリエーション(企業が輸出で得た外貨を自国へ戻すこと)が、生産コストを引いた額まで低減されることになりました。
これは輸出を円滑化し、中小規模の絨毯業者を支援することを目的としており、その効果は年初から現れると期待されていたのです。
しかし、不測事態の発生、とりわけ12日間戦争の勃発とその影響により、期待された成果は得られませんでした。
手工業や観光といった分野が成長するためには、平和に基づく商環境の安定が不可欠です。
しかし、国際情勢の悪化により今年上半期のペルシャ絨毯輸出額は、昨年の同じ時期に比べても目立った変化がありません。
イラン商工会議所美術工芸委員会のモルテザ・ハジ・アガミリ委員長によれば、ペルシャ絨毯の総輸出額は2026年3月までで約4000万ドルにとどまるようです。

アガミリ委員長は、その原因をイスラエルとの戦争の影響に加え、リバトリエーションの低減政策の遅れにあると言います。
イラン中央銀行の政策担当者の目は小規模輸出業者の支援へと移行してはいるものの、政策を実施するまでの段取りが十分でないため、依然として厳しい状況が続いています。
イランの非原油製品全体の市場調査からは、これが絨毯産業だけでなく、他の手工業や観光業においても障害となっていることが分かります。
輸出業者たちは低減政策が実施され、海外からイランへ送金するための基盤作りができれば、ペルシャ絨毯は世界市場でのシェアを回復できると考えているようです。

2025年のペルシャ絨毯の輸出額が厳しい状況にあることは前述しました。
しかし、国際環境が改善し、為替が円滑に機能するようになれば、ペルシャ絨毯の輸出は来年後半から徐々に回復すると専門家は予測します。
メフル通信(イランの凖公営通信社)によれば、過去30年間のペルシャ絨毯輸出状況を振振り返ると、1990年代から2000年代初頭にかけてペルシャ絨毯の年間輸出額は約20億ドルに達し、米国、ドイツ、イタリア、日本、そしてペルシャ湾岸のアラブ諸国が主要な輸出先でした。

しかし、それからすぐに絨毯産業は深刻な不況に見舞われます。
公式統計によると、2024年のペルシャ絨毯輸出額は約4100万ドルにとどまっています。
インフレ、リアル安を考慮すると、この数字は前例のない、そして憂慮すべき状況であることを表しています。
1993年の非原油輸出の総額は約48億2400万ドルで、そのうち21億ドル以上、つまり輸出総額の約44%をペルシャ絨毯が占めていました。
これは当時、ペルシャ絨毯が如何に重要な戦略的貿易品目であったかを示しています。
しかし、この位置づけは過去30年間で徐々に弱まりました。

1990年代の半ば以降、ペルシャ絨毯の輸出額は減少したものの、許容できる範囲の水準は維持しており、5億ドルを下回ることはありませんでした。
イランの非原油輸出総額が50億ドルから70億ドルの間で変動していた当時、イランは手織絨毯の分野における世界トップクラスの輸出国だったのです。
しかし2011年初頭、イランの絨毯産業は大きな転換点を迎えます。
イランへの経済制裁の拡大に伴い、ペルシャ絨毯の輸出量は徐々に減少してゆきました。
2012年には輸出額が4億2700万ドルに落ち込み、3年後の2015年には2億9000万ドルになります。
減少傾向はその後さらに悪化しました。

2018年の米国の包括的共同作業計画(JCPOA)からの離脱と、第一次トランプ政権によるペルシャ絨毯の制裁対象品リストへの掲載は、国際市場に衝撃を与えまることになります。
ペルシャ絨毯の最も重要な輸出先であった米国への輸出が絶たれたことで、総輸出額は遂に1億ドルを下回りました。
2019年にはペルシャ絨毯の総輸出額はわずか7300万ドルとなり、イランの絨毯産業はかつてない状況に陥ります。
これに様々な国内問題が重なり、絨毯産業の凋落はさらに加速しました。
2022年のペルシャ絨毯の総輸出額は5070万ドルまで落ち込み、2018年と比較して約78%、1994年と比較すると98%以上の減少となったのです。

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