ペルシャ絨毯の様々な呼び名
ペルシャ絨毯にはペルシャ緞通(段通)、ペルシャンカーペット、ペルシャンラグなど様々な呼び名があります。
しかし、絨毯と緞通(段通)、カーペットとラグは異なる意味で使われることがあります。
まずは日本語の絨毯と緞通(段通)の違いについてです。
絨毯は戦前までは絨毯だけでなく絨氈(じゅうせん)または緞通、段通と呼ばれていました。
弊社が所蔵する明治24年に出版された『波斯紀行』には「絨氈」、大正9年の『木工と装飾』には「絨毯」、昭和11年の三越のカタログには「緞通」、昭和15年に建築学会(現在の日本建築学会)が発行した『窓掛と敷物』には「段通」とあります。
絨毯は「絨緞」と書くこともありますが、意味は同じです。
なお、絨という漢字には「厚地の柔らかい毛織物」、毯には「毛織の敷物」という意味があります。
緞通(段通)は中国で絨毯のことを呼ぶ毯子(だんつ)を音訳したものです。
広義では絨毯全体を指しますが、狭義では幅の広い手織の高級絨毯をいいます。
最近では緞通(段通)は中国製の絨毯を指すことが多いようです。
ただし、日本製の鍋島緞通や堺緞通、赤穂緞通、山形緞通などにも緞通という名称が使われています。
次に英語のカーペットとラグの違いですが、イギリスではカーペットは床全面を覆うもの、ラグは床の一部に敷く敷物を意味します。
アメリカでは最初からカーペットの床になっているため、別の小さな敷物をラグと呼びます。
なお、マットは本来「靴ぬぐい」の意で、ドアマット、バスマットなど、部屋が汚れるのを防ぐもののことです。
このように絨毯と緞通(段通)、カーペットとラグに明確な線引きはなく、どれを使っても間違いではありません。
ちなみに絨毯はイランではファルシュまたはガリ、アラブではセッジャーダまたはビサート、トルコではハリ、ドイツではタピッチ、フランスではタピスといいます。
イギリスで刊行されている絨毯専門誌『HALI』はトルコ語の絨毯です。
先に中国緞通の話が出てきたので、ここでペルシャ絨毯と中国緞通の違いについても解説しましょう。
中国緞通はペルシャ絨毯と同様に縦糸と横糸、パイルから構成されています。
ペルシャ結びを用いる点も多くのペルシャ絨毯と同じですが、決定的に違うのはデザインと厚さです。
中国緞通のデザインには牡丹の花や龍、鳳凰、雲などといった東洋的な文様が使われることが多く、文様を立体的に見せるためのカービングが施されています。
またパイルは長く、ボリュームのある厚さが特徴です。
ただし、ペルシャ絨毯やヘレケ絨毯を模して製作されたものについては、その限りではありません。
中国緞通にはウール緞通とシルク緞通がありますが、クォリティは1フィート(30.48cm)に何列の結び目があるかにより○○段と表します。
ウール緞通は90段と150段。
シルク緞通は120段、140段、160段、180段、200段、220段、260段、300段、それ以上に等級分けされています。
180段より上は「高段数」と呼ばれますが、ペルシャ絨毯やヘレケ絨毯のコピー品は260段か300段で、これらは河南省の鎮平で製作されています。