ペルシャ絨毯のパターンや文様は物語る
[第 話]
ペルシャ絨毯は、ただ美しいだけでなく、イランの風土や歴史、神話や説話、更にはその国に暮らす人々の信仰や習俗までをも垣間見せてくれます。
それらは文様を通じて、私たちに語りかけます。
これがペルシャ絨毯をロマンチックで神秘的なものとしている一番の理由でしょう。
文様の意味を知ることで、製作者が込めた思いの一端に触れることができるのもペルシャ絨毯の魅力です。
ペルシャ絨毯の最も有名な文様の一つは、フィールドの中心に配置されたメダリオンです。
メダリオンは宗教的な意味を持つとされ、神聖なるモスクのドーム装飾を描いたものであると考える者がいます。
また、メダリオンは「すべてを見通す目」、すなわち邪眼を祓うお守りを表したものであると信じる者もいます。
その他の一般的なデザインは植物や動物です。
砂漠の民たる西アジアの人々にとって、色とりどりの花を湛える草や木は楽園の代名詞でもありました。
花は豊穣と復活の象徴でもあり、それぞれの花や木には意味が持たされています。
その例を以下に記します。
- 蓮- 神聖、復活
- ユリ – 純潔
- チューリップ – 勇敢さ
- ヒヤシンス- 再生
- ザクロ- 豊穣、富
- 白バラ- 無邪気さ
- 赤バラ- 情熱、神秘
- 糸杉- 死後の生活
- 生命の木- 地球から楽園への直接の道、または真実や知恵や理解を願う
ペルシャ絨毯によく見られるもう一つの文様は動物です。
動物は生命力を感じさせる存在として、強さをもたらすことを意味している場合が多いようです。
その代表格ともいえるのがライオンです。
ライオンは古来、権力や武力、ひいては王そのものを象徴するものとして用いられてきました。
王制時代のイランでは剣を持ち、太陽を背負ったライオンの姿が国旗に描かれていました。
なお、その他の動物の意味は次のとおりです。
- 雄羊の角- 男らしさ、加護
- ラクダ – 幸福、富
- 鷲 – 幸運
- 孔雀 – 美しさ、誇り
- 雄鶏 – 勇気
- 鹿 – 幸福
- 馬 – 速さ
- 雄鹿 – 長寿
- 蛇 – 知恵の守り手
- アヒル – 誠実な結婚
イランでは、魚は特別な意味を持つといわれています。
魚はイランにおける繁栄のシンボルであり、新年の贈物にも使われるように、豊かな一年を願うものでもあります。
ペルシャ絨毯の歴史におけるパターンや文様は、夢や希望を叶え、人生を豊かにする願いを込めて選ばれることが多かったのです。
ペルシャ絨毯に使われる色にも意味があります。
古代オリエントでは、精神や感情を活性化するために、また病気や疾患の症状を緩和するために、特定の色が使用されたといいます。
また、イスラム教では緑や黒には特別の意味がありました。
各色の意味は次のとおりです。
- 茶 – 大地、豊穣
- 金 – 権力、富
- 黒 – 喪(通常は輪郭としてのみ使用)
- 白 – 純粋さ、清潔さ
- 黄 – 太陽、人生の喜び
- 橙 – 謙虚さ、信心深さ
- 青 – 力の強さ、孤独、来世の平和
- 赤 – 美しさ、富、勇気、幸運、喜び
- 緑 – 希望、春、人生、復活(預言者ムハンマドに由来する特別な色と考えられており、あまり使用されません)
よく見られるその他の文様としては、以下のものがあります。
- お守り – 邪眼から身を守る
- ペイズリー – 炎、宇宙
- 水差し – 浄化
- 櫛 – 清潔さ
- ダイヤモンド1個 – 女性
- ダイヤモンド2個 – 男性と女性
- 手 – 祈り
- 星 – 精神、幸運
- ミフラーブ – 楽園への入り口
これらの文様の多くは遥かなる昔から、親から子へと受け継がれてきたものです。
それらは、いにしえの人たちの信念や願望を現代に生きる私たちに伝えてくれます。
ペルシャ絨毯の文様に込められた意味を理解することによって、より一層と鑑賞の幅が広がるのは間違いありません。