ペルシャ絨毯の巨匠と普通の絨毯作家を分けるもの

ペルシャ絨毯の巨匠と普通の絨毯作家を分けるもの

ペルシャ絨毯の巨匠と普通の絨毯作家を分けるもの

[第 話]

ハジ・ジャリリ、モフタシャン、シュレシ、アモグリなど、歴史に名を残した絨毯作家たちがいます。
彼らが製作したペルシャ絨毯は、一世紀を経た今日においても世界中のペルシャ絨毯作家愛好家やコレクターたちを魅了し続けており、きわめて高値にて取引されています。
イランに人間国宝という制度はありません。
しかし彼らの功績は、それに値するものといえるでしょう。
まさに絨毯作家の巨匠と呼ぶべき存在ですが、それでは、何が彼らをそう呼ぶにふさわしい人物へと育てたのでしょうか?

その他大勢の絨毯作家との違いは何なのでしょうか?

絨毯作家の仕事は、いわばトータルコーディネートです。
高品質な素材、芸術的なデザイン、伝統的な染色技術を組み合わせることです。
彼らは一般にスーパーバイザー、品質管理者の役割を果たします。
しかし、計画を実行するためにはデザイナー、染色家、織師などを集めなければなりません。
絨毯作家がデザイナーを兼ねることはよくありますが、糸を染める染色家や絨毯織りの作業にあたる織師を兼ねることは稀で、知識と経験に基づき製作中の職人の仕事を注意深く監督し、きわめて美しく、そして高品質な作品を完成させます。

普通の絨毯作家が巨匠になるためには何が必要なのでしょうか?
この疑問を解決するためには、次の2つを理解する必要があります。
まず、高品質なペルシャ絨毯とは何か、そしてどのようにしてスキルを身につけるかということです。
巨匠と呼ばれる絨毯作家によって製作されたペルシャ絨毯の特徴は、モチーフの詳細レベルがとても高いことです。
これを実現するためには織りがきわめて緻密でなければなりません。
つまり、ノット数が一般的なそれよりも多くなければならないということです。
また、ノット数が多いペルシャ絨毯に使用される縦糸と横糸は、この構造がデザインの詳細に対応できるように、かなり細いものを選択する必要があります。

この作業をこなすには熟練した織師の存在が不可欠です。
これらの作品の中にはとても大きく、一人で織るのに気の遠くなるような期間を要するものさえあります。
こうした絨毯は一日中(場合によっては昼夜交代で))働く織師のチームによって織られていました。
多くの場合、これらのペルシャ絨毯は裕福な顧客によって、あるいは公的機関によって特別に注文されます。
つまり、一般家庭向けにデザインされたものではなく、公共の建物、宮殿、宗教的な場所、または特別な敷地内に展示されることを目的としていました。
絨毯作家は慎重にそれに耐えられる技量を持ったチームのメンバーを集め、製作期間のすべてを通じて彼らの仕事を注意深く監視しなければならないのです。

傑作を生み出す能力は偶然に生まれたものではなく、何年もの厳しい修行を積む必要があります。
教育の 1 つめは、絨毯作家である親、親戚、知人の下で学ぶこと。
2つめは、絨毯織り専門の教授が所属する学校で学ぶことです。
これらの学校の中には、テヘランやタブリーズ、イスファハンに設けられた芸術学校がありました。
恵まれた環境下での長年の教育訓練が、絨毯作家と職人を分けるものです。
絨毯織りの芸術は、絨毯作家と職人たちが力を合わせて、精緻な芸術として際立った作品を生み出す分野であり、その創作当時の最先端技術の素晴らしい例です。

タブリーズ、イスファハン、ナインなどの絨毯産地で織られたペルシャ絨毯の中から、銘入りの作品が見つかることがあります。
これらの銘には絨毯作家の名前、あるいは作家のファミリーネームが織り込まれています。
これらの傑作は献身的な作品であり、本当の意味で情熱的で芸術的です。
そのため、これらのカーペットの織りが完了すると、絨毯作家は誇らしげに作品に自分の名前を織り込みます。
現在と異なり、昔は銘が織り込まれた絨毯はそれが特別なものであることを示していました。
すべてがそうであるとは限りませんが、銘のある古い絨毯を見つけた場合は、貴重な作品であることを示していることがあります。

生まれ持ってのセンスや家庭環境もあるでしょう。
すかし、何よりも必要なのはペルシャ絨毯に対する愛と仕事に対する情熱です。
ゴッホやピカソの作品が二つとないのと同じように、同じペルシャ絨毯は二つとありません。
誰かが似たような作品を作るかもしれませんが、オリジナルの作品は一つしかないのです。
ペルシャ絨毯の巨匠の作品にも同じことがいえるのです。

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