ペルシャ絨毯をめぐる事件(イラン編)

ペルシャ絨毯をめぐる事件(イラン編)

ペルシャ絨毯をめぐる事件(イラン編)

[第 話]

イランではペルシャ絨毯の現金化が容易であるため、ペルシャ絨毯をめぐる事件としては強盗や窃盗が圧倒的に多いようです。
これはペルシャ絨毯の価値が高いという証左でもあるのですが、犯人たちは高級品ばかりを狙うので、被害額は当然、大きなものとなります。
被害に遭った人たちの心の痛みは計り知れないものでしょう。
実はわが国においても報道こそされていないものの、ペルシャ絨毯の盗難事件はたびたび起きており、庭やベランダに干していた絨毯を盗まれたり、店舗や展示会で販売員が接客している隙に絨毯を持って逃げられたなどの実例があります。
注意喚起を促す意味でも、ここ最近イランでニュースになった主な事件を紹介することにします。


事件1

2019年、タブリーズの絨毯バザールで高級ペルシャ絨毯の盗難事件が発生しました。
犯行は常習犯によるものと推測され、バザールが営業を終えた深夜、ドアをこじ開けて店内に侵入後、16枚のペルシャ絨毯を盗み去りました。
110番通報を受けたタブリーズ第16署の捜査員は、犯行当日、約120台の監視カメラに写る約100台の車の中からバザール周辺を走る犯人の車を特定。
全署をあげての4時間に及ぶ捜索の末、犯人は住宅地周辺の通りで逮捕されました。
犯人は警察官から写真を見せられるとすぐに犯行を自供。
供述にに基づき犯人の隠れ家を調べたところ、盗まれた16枚のペルシャ絨毯が見つかりました。
犯人は2014年以降に絨毯バザールで起こした7件の犯行についても自供し、様々な場所に隠されていた35枚のペルシャ絨毯が回収されました。
当局は盗まれたペルシャ絨毯の総額は40億トマン(約1億800万円)と見積っています。


事件2

2013年、顔を覆った3人の強盗団がラバーの絨毯商宅に押し入り、高齢の絨毯商と妻の手足を縛った上、24枚のペルシャ絨毯とソファカバーをバンに載せて持ち去りました。
被害総額は20億リアル(約540万円)と見積もられます。
ラバーの検事は、この町では貿易業者、バザール商人、農民、牧場主が自らの財産を保護するための真剣な措置を講じておらず、これが盗難を蔓延させているとし、ピスタチオの輸出業者が数トンのピスタチオをあまり安全でない場所に置いていたり、農場主が強力な壁や安全な鍵のない場所で大量の牛を飼っている事実を語りました。


事件3

2023年、ケルマンシャー州警察は9枚のペルシャ絨毯を奪い去った強盗事件の首犯格1名と実行犯4名を逮捕しました。
近隣の州で犯行に及んだ犯行グループは持ち去った絨毯をケルマンシャーに持って行き換金しようとしましたが、交渉はまとまらなかったといいます。
州警察防犯課第3部の刑事は捜査の上、事件発生から48 時間以内に犯行グループの全員を逮捕しました。
首犯格の男は絨毯の所有者に近づき、買いたいという者を知っているという口実で彼らに同行。
飲み物に混入した睡眠薬で眠らせた上、仲間とともに9枚のペルシャ絨毯と日産のバンを持ち去ったといいます。
州警察は盗難された手織り絨毯9枚すべてが見つかったことについても触れ、専門家によるとその価値は100億リアルにのぼるとしました。
また偽造したナンバープレートを付けられた盗難車も市内の駐車場で発見されました。


事件4

2023年、テヘラン第5警察は、絨毯クリーニング業者を装いペルシャ絨毯を詐取した犯人2名を逮捕しました。
犯人は評判のよい絨毯クリーニング業者の名を用いてインターネット上に広告を掲載。
多くの市民からペルシャ絨毯を集めた後、広告を削除してそれらを持ち去りました。
被害届を受理した警察は捜査を開始し、犯人の身元を特定しました。
犯人の自宅からは60億リアル相当のペルシャ絨毯が見つかったとのことです。


事件5

2017年、絨毯店の店主であるマルバフテ氏がヴァリアスル通りにある自身の絨毯店で従業員1人と子供2人といたときのこと、突然、別の従業員が見知らぬ人物を店に連れて来て、銃器や刃物を突取り出し約200億トーマン相当の60枚以上のシルク絨毯をを奪おうとしました。
乱闘の末、犯人はオーナーの息子の1人を刃物で刺して怪我を負わせ、オーナーら4人を店の奥の部屋に閉じ込めて絨毯を奪い、店主の所有するマツダのバンに絨毯を載せてその場から逃走しました。

事件の捜査が始まり、刑事がカルン通りにある店員の住居を訪れると彼は既に逃亡しており、翌日マツダのバンがハリージ通りに乗り捨てられているのが見つかりました。
捜査の結果、刑事らはイスマイルという男が民間の人材紹介会社を通じてマルバフテ氏に紹介され、身分証明書を提示するだけで働き始めていたことが分かりました。
この点に関してマルバフテ氏は、「2015年末に民間会社を通じてイスマイルを紹介され雇用した。イスマイルは暫く私の店で働いていたが、家族の元に戻るつもりだと告げて退店した」といいます。
事件の一週間前に、再び彼が店に来て、また働きたいと申し出たので、以前からの知り合いだったこともあり、また店で働けるようにしたとのことでした。

テヘラン第一情報局の刑事は、捜査を継続する中で、イスマイルとともに犯行に及んだのが前科があるアフマドという男であることを突き止めましたが、アフマドは事件後、すぐに国外に逃亡していました。
その後、アフマドの家がイラン西部で特定され、刑事が何度か赴いて捜査したところ、彼がテヘランから逃亡した後、不法出国していたことが明らかになりました。
西部の国境近くにある家は、盗んだ絨毯を国外へ持ち出す拠点になっていたのです。

警察は、イスマイルが他の盗まれたカーペットを国外に持ち出すために帰国したとの情報を得て、イラン西部の国境の町で彼を逮捕しました。
イスマイルのアジトを捜索したところ、盗まれたシルク絨毯28枚と、別の店舗から奪われた金塊に加え、機関銃を含む2丁の銃器、数十発の実弾を備えた2つのマガジンと小型拳銃、および自家製爆弾を製作するための約1キログラムの爆薬などが見つかりました。
アフマドの供述によりイスマイルの弟ユースフもアジトの提供と盗品の販売に関与していたことが判明し逮捕されました。
アジトからは24​​枚のシルク絨毯が発見されました。


事件6

2023年、テヘラン警察の第二首席保安官は、100億リアル相当のシルクのペルシャ絨毯4枚を盗んだ犯行グループ3名のうち1名を逮捕したことを公表しました。
事件発生後、マルズダラン第139警察署は絨毯が盗まれたとの被害届を受理しましたが、初動捜査では犯人の身元は判明しなかったといいます。

事件から数日後、クッズ地区の第134警察署の警察官が、白いサマンドに乗った男にナンバープレートを改ざんした疑いがあるとして尋問した際、後部座席に置かれているシルクのペルシャ絨毯を見つけました。

不審に思った警察官が問い詰めたところ、友人2人とマルズダラン地区の家からこの絨毯を盗み、山分けしたことを自供しました。
逮捕された犯人はこの絨毯を売る約束をしていましたが、その前に逮捕されたとのことです。


日本では、これらほど大がかりなペルシャ絨毯の盗難事件は発生していませんが、外国人窃盗団による高級車の盗難事件などは、いまや日時茶飯事となっています。
近い将来、このような事件が起こらないとは言い切れません。
万が一の事態に備えて防犯対策を徹底し、不幸にも被害に遭ったなら、すぐに警察に助けを求めることです。
いまの日本は昭和の時代とは違うことを肝に銘じておきましょう。

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