ペルシャ絨毯は楽園のバーチャルリアリティ

ペルシャ絨毯は楽園のバーチャルリアリティ

ペルシャ絨毯は楽園のバーチャルリアリティ

イランには数々の美しい庭園があります。
2011年には、そのうち9つの庭園が「ペルシャ式庭園」として世界遺産に登録されました。
ペルシャ式庭園の歴史はアケメネス朝の時代にまで遡ります。
パサルガダエに残る庭園は、イランで最初の四分法に基づいて建設されたペルシャ式庭園です。
四分法とはは庭園を4分割する方式で、パサルガダエ庭園もゾロアスター教の4つの元素である水、土、空、火を表しています。
残念ながら、現在はその遺構が残るのみですが、このような庭園を古代ペルシャ語でパイリダエーザといい、これがパラダイスの語源であるとされます。
つまり、ペルシャ式庭園は当時の人々が想像した天上の楽園を具現化しているのです。

そして、ペルシャ絨毯の中には、このペルシャ式庭園からインスピレーションを得たものがあります。
庭園は7つの壁で構成され、外敵が園内に侵入することができないように造築されているといわれます。
7つの壁は絨毯のボーダーのデザインです。
壁の1つは他の6つの壁よりも広くなっています。
また、フィールドの各パネルは様々な植物や動物で飾られています。
庭園を囲む水路は、ペルシャ絨毯のボーダーに接する縁取りとして描かれており、中央の池とフィールドを縦横する大きな水路から流れ出ています。
庭園文様は、サファヴィー朝時代には「ゴレスターン」または「ゴルザール」と呼ばれていました。

絨毯研究家のアリ・ホズリ氏によると、庭園文様は紀元前2000年代にまで遡り、サファヴィー朝期の庭園文様の絨毯は世界に20枚しか存在しないといいます。
一説によるとペルシャ絨毯のデザインの多くは庭園文様に由来し、その中にはペルシャ絨毯のデザインとしては最もポピュラーであるメダリオン・コーナーのデザインも含まれるとされます。
サファヴィー朝時代には宮廷の保護のもと絨毯産業が発展し、カシャーン、イスファハン、タブリーズなどに多くの工房が開設されました。
これらの工房で製作された絨毯は、宮廷内で使用したり、諸外国への贈答品とされました。

ペルシャ式庭園がペルシャ絨毯に与えた影響について研究しているビジャン・アルバビ教授は、ペルシャ式庭園はペルシャ絨毯に直接的または間接的に表現されており、それは絨毯のみならず、他の伝統工芸においても認められる現象であることを強調しました。
彼は、イランの工芸家がペルシャ式庭園の美に着目したことにより、やがてペルシャ絨毯が世界最高の手織絨毯になったと考えています。
また、イスファハン芸術大学のメヒディ・イブラヒミ教授は、イスファハン州で生産されるペルシャ絨毯はサファヴィー朝時代から伝わるデザインに重きを置いており、そのコンセプトは400年以上を経た現在においても変わっていないとしています。
ペルシャ絨毯はいまも昔も楽園のバーチャルリアリティなのです。

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