ストーンウォッシュラグやゼロパイルラグはペルシャ絨毯なのか

ストーンウォッシュラグやゼロパイルラグはペルシャ絨毯なのか

ストーンウォッシュラグやゼロパイルラグはペルシャ絨毯なのか

[第 話]

ストーンウォッシュ・ラグあるいはゼロパイル・ラグの商品名で販売されている絨毯があります。
説明によると、「貴重なアンティーク絨毯をベースに制作された、世界に一枚しかないアート作品」あるいは「アンティークの風合いを出すため『新品』の絨毯のパイルを根元まで削って再度染色している」とのことですが……。

これらの製作現場をイランで見たことがあります。
強烈な化学染料の臭いとともに目に飛び込んできたのは、大量に積まれたボロ絨毯の山。
パイルが磨り減って使い物にならないものばかりなのですが、破れていたり穴が開いたりしているものさえあります。
これらゴミ同然のペルシャ絨毯の中から破れや穴のないものを選び、パイルを磨り減った部分に合わせてすべて削り取ってから染め直したもの……これがストーンウォッシュ・ラグあるいはゼロパイル・ラグの正体です。

ストーンウォッシュとは『デジタル大辞泉』(小学館)によれば、「デニム生地や皮革などで作られた服を、使い古したような感じにする加工法のこと。素材や製品を軽石などを混ぜた特殊な液で洗ったもの。加工後、自然なむらができるのが特徴」とあります。
しかし、ストーンウォッシュ・ラグにストーンウォッシュが施された形跡はなく、色のムラは漂白剤によるもの。
つまり、新品を人工的に使い古したような感じにしたというのは嘘で、タダ同然で引き取ってきた状態の悪い絨毯を加工したもの……これが真相なのです。

これと似たものにパッチワークラグというのがあります。
パッチワークラグは複数の異なる絨毯を小さく切り、それらを縫い合わせて補強用の布で裏張りしたものです。
トルコで作られはじめ、その後イランでも作られるようになりました。

パッチワークラグも古いペルシャ絨毯を加工したものですが、工程はストーンウォッシュラグと同じで、パイルが擦り切れていたり、穴が空いていたりする商品価値のないペルシャ絨毯をパイルが擦り切れた部分に合わせ、残っているパイルをすべて削り取ったのち、再染色を施したものです。
絨毯によってはを再染色を行わず、直射日光に晒して褪色させることもあります。
それらを適当な大きさにカットしてから市松状に縫い合わせます。

ストーンウォッシュラグ、パッチワークラグのいずれも素材の原価はゼロに等しいため、比較的低価格で販売されていますが、これらの敷物に一部の絨毯業者がいうようなアンティークや美術品としての価値などあるはずがありません。
疑問に思うなら美術品専門の買取業者なりオークション会社なりに査定してみてもらってください。
評価してくれるところはないはずです。
ストーンウォッシュラグやパッチワークラグは敷物としても微妙で、ショップのディスプレイなどとして使うにはよいのかもしれませんが、敷物として使用したところで、せいぜい10年持つかどうかでしょう。

手織絨毯としては価値のなくなった傷んだ絨毯に新たな命を吹き込む……最近、注目されている古民家再生と同じで、これ自体は素晴らしいことに違いありません。
しかし、もはや捨てるしかないような絨毯を加工したものを前述したような嘘の説明を用い、あたかも価値があるように見せかけて販売するのは如何なものでしょうか。
(価値のまったくない)ペルシャ絨毯を素材にしているとはいえ、このような敷物はペルシャ絨毯とは呼べません。
もちろんペルシャ絨毯としての価値はゼロですので注意してください。

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