コーカサスとイランのトライバルラグ

コーカサスとイランのトライバルラグ

コーカサスとイランのトライバルラグ

トライバルラグは何千年もの間、中東と中央アジアで織られ続けており、人類が創案した初期の絨毯の様式をいまに継承しています。
コーカサスとイランの部族民たちは芸術的才能に優れていたようで、自然界から得たインスピレーションを駆使し、多種多様なパターンや文様を生み出しました。
アンティークのトライバルラグは、現代でも色褪せることのない個性的なパターンと文様、絶妙なデザインのバランスと創意工夫から、現代人たちからも高く評価されています。

コーカサスとイランのトライバルラグのスタイルは大きく異なります。
どちらも大胆な幾何学模様が特徴ですが、各部族が暮らす環境や世界観の違いが、そのスタイルに反映されるているのです。
移動生活を送る遊牧民であっても、小さな集落に暮らす半遊牧民であっても、部族民たちは過酷な自然の中にありました。
部族の女性たちが製作したトライバルラグは、彼女らの日常生活を取り巻く様々な事象を示唆しています。

コーカサスの絨毯織りの伝統は古くからあります。
紀元前 5000年以来そこに住んでいた原住民に加え、窮地に陥ったいくつもの部族が、コーカサスの険しい山々の襞に逃れてきました。
そして、多くの人たちが、そこで身につけた絨毯織りの技術を持って新たな土地へと移り住んでいったのです。
彼らが新たな土地で作成した絨毯は時を経るにつれ、エレメンタルなカラチョフ・カザック、洗練されたシルヴァン・バクー、複雑なセイチュール・クバなど、その土地ならではの個性的なデザインによって知られるようになりました。
多くの場合、コーカサスの部族たちは、尾根を越えた隣の部族のもとを訪れることなく一生を終えるため、半遊牧のスタイルをとっていました。
その結果、パターンや文様、色や構造などの異なる85種類のコーカサス絨毯のサブグループが形成されたのです。

それとは対照的に、イランの遊牧民たちは、夏と冬の宿営地間を年に2回移動する生活を送っていました。
カシュガイ、アフシャル、ルリ、クルド、バクチアリの 5 つの部族と、ハムセとシャーサバンの2つの同盟が、驚くほど多様なトライバルラグを製作していました。
各部族は、移動生活に基づく活気と生命力に満ちたテーマを次々と具現化したのです。

家族・親族の強い絆を持つ小さな支氏族に属し、共通の方言と価値観を共有することで、各部族は強い団結力を維持してきました。
彼らは共同生活を旨とし、世界観と価値観の自然で快適な調整を強化してきたのです。
そして、そのような閉鎖的な社会の中では、トライバルラグは芸術的表現の主要な、そして多くの場合、唯一のものでした。
トライバルラグを製作するための様々な作業 (毛刈、洗浄、梳毛、紡績、染色、製織) は、部族の間で共有されることがよくあり、最も優れた織手はコミュニティ内で特に尊敬されていました。
「絨毯は女性の心への窓である」という格言は、すべての部族民たちに理解されていました。

部族間の結束と統一性は、特定の地域のほぼすべての織手によって共有されるパターンや色、独特の文様で表現されました。
この共通の要素には、部族に属するすべての者が理解できる文化的な意味合いを図案化した、深い意味が含まれることがありました。
とりわけ才能に長けた織手は、これらの文様や色から更に解釈を飛躍させ、新たな文様を作り出してゆきました。

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