ペルシャ絨毯の熱処理について

ペルシャ絨毯の熱処理について

ペルシャ絨毯の熱処理について

[第 話]

ペルシャ絨毯の熱処理は、絨毯が織りあがった後に施す工程です。
熱処理は極めて高度な技術を要する作業であり、作業を施す職人にとっては最もプレッシャーを感じる作業でもあります。
作業の仕方が悪ければ、長い月日が費やされたペルシャ絨毯を駄目にしてしまう可能性さえある危険なものなのです。
ここではあまり語られることのないペルシャ絨毯の熱処理について解説します。

ペルシャ絨毯の熱処理とは、ガスバーナーで絨毯の裏面に炎を放射する作業です。
この作業は専門の職人によってのみ行われますが、熱処理を施す理由は2つあります。
一つは織りあがったばかりのペルシャ絨毯の裏面は、パイルの細かな繊維が残ったままで、柄がはっきりと見えません。
また手触りも悪く、敷き込みのカーペットの上にペルシャ絨毯を敷くときには静電気で下のカーペットにくっついてしまう可能性があります。
そのため裏面を美しく滑らかにするために、炎で無駄な繊維を焼いてしまいます。

もう一つは、ペルシャ絨毯の繊維を食べる害虫の除去です。
イガやコイガはケラチンを食べる小さな昆虫で、ケラチンを含むペルシャ絨毯のパイルは害虫にとっては理想的な食物です。
害虫は幼虫の段階以外は絨毯に害を及ぼさないため、卵の段階で駆除するのが最善です。
害虫は一般に絨毯のパイルの根元に卵を産み付けます。
このため、絨毯の裏側から熱を加え、これらの卵が破壊します。
同じ理由から、織りあがったばかりのペルシャ絨毯は徹底的に洗浄されます。

この作業を行うのは一見するとそれほど難しくないように見えるかもしれません。
しかし、この作業は経験を必要とする特殊な方法です。
高価なペルシャ絨毯が発火して燃えてしまう可能性があるため、この作業は決して自分で行なってはなりません。
ペルシャ絨毯の熱処理を行う際には、それを施すための環境を整えることが必須です。
この作業はオープンスペースで行う必要があります。
もし、絨毯に布や紙のタグ等が付いていれば、作業を行う前にそれを外しておかなければなりません。
絨毯を置いた後、職人はガスバーナーを使って往復運動で絨毯を加熱し、粘着性の高い害虫の卵を焦がして破壊します。

熱処理はペルシャ絨毯の裏側にのみ使用されるので、これで絨毯の表面の糸屑を除去できる訳ではないことに注意してください。
表面にこれをするとパイルが焼けて色が変わってしまいます。
また、熱処理はパイルがウールでできているペルシャ絨毯に施されるものであり、シルクで作られたカーペットにはこの方法を使用することはお勧めできません。
その理由はシルクは熱にとても敏感で、その構造が損傷し、場合によっては燃えてしまう可能性があるためです。

シルク絨毯に熱処理を施すことがまったくない訳ではありませんが、その際は燃えてしまうのを防ぐために、作業前に絨毯を湿らせる必要があります。
しかし、これが行われることは滅多にありません。
シルク絨毯は一般的に高価であることに加えて、シルク絨毯が害虫の被害に遭うことはあまりなく、熱処理する必要があまりないということがあります。

熱処理が終わったら、ペルシャ絨毯についた焦げや煤を取り除く必要があります。
掃除機または手ほうきを使用してこれを行うことができますが、絨毯自体が古く、とくにアンティークとみられる場合は、問題が発生しないように手で払わなければなりません。
その後、絨毯を洗えば一連の作業は完了です。

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