イラムから世界に届けられるペルシャ絨毯

イラムから世界に届けられるペルシャ絨毯

[画像:イラムの町]

「イラム」というペルシャ絨毯の産地を聞いたことがあるでしょうか?
絨毯業者の中にもイラムを知らない、あるいは地名は聞いたことがあるがどこにあるかわからないという者がいるぐらいなので、一般の方が知らないのも当然でしょう。
イラムはイラン中西部にあるイラム州の州都で、イラクとの国境にほど近い高原都市です。

イラムの周辺では昔からクルドやルリが絨毯やキリムを製作していましたが、それらは幾何学文様を用いた典型的なトライバルラグ(部族の絨毯)でした。
今日「イラム産」として取引されるのはこうしたトライバルラグではなく、垢ぬけた唐草文様に彩られた優雅なシティーラグ(都市部の絨毯)です。
これらは64万ノット以上に及ぶ緻密な織りをもって製作されており、タブリーズ絨毯やイスファハン絨毯に肩を並べるほどのクオリティーを持っています。
実はイラムの町に絨毯産業が興ったのは、つい最近のことです。
イラクとの国境に近く、交通の要衝でもあったイラムは、1980年に始まるイランイラク戦争により壊滅的被害を受け、町の産業は破壊されてしまいました。
戦後の復興期、イラン絨毯会社の主導によって絨毯政策が始められ、今日に至っています。
町の歴史は長いものの、絨毯産地としては40年に満たない新興産地です。

しかしイラム絨毯は、今日イラン国内外の市場において存在感を示しています。
ザグロス山脈の歴史と自然に由来するデザインと色彩を持つイラム絨毯は、イラン西部の芸術的かつ経済的な宝の一つとなっているのです。
バドレ県は、この芸術産業の繁栄に大きく貢献してきました。
メフル紙はパドレ県の絨毯作家であるファルザネ・シルモハマディ氏へのインタビュー記事を掲載しています。
それによれば、現在シルモハマディ氏の工房は100人以上の女性に雇用を保証しているだけでなく、生産物の70パーセントを世界市場に出荷しています。
10年前、同氏は5人の織師と借入金で工房を立ち上げました。
絨毯織りの技術と原材料供給会社とのネットワークを活かして生産基盤を築きあげ、8つの工房と100人以上の織り職人を抱えるまでに成長したそうです。
織師の平均月収は1000万から1200万トマンで、村や小さな町の生活費を考えるとかなりの額です。
彼の8つの工房では年間約1000平米のペルシャ絨毯を生産しており、その70%が海外に輸出されていると言います。
とりわけ高品質のイラム絨毯はドイツで大きなシェアを獲得しているそうです。

イラム絨毯は国内市場に加え、ヨーロッパやアジア諸国にも輸出されてきました。
ドイツ、イタリア、日本、ペルシャ湾岸諸国などが最も重要な顧客だと言います。
イラム州産業・鉱山・貿易局長であるミールザ・モハンマド・ラヒミ氏によれば、イラム州には3000人以上の織工がおり、年間約3700平米の絨毯を生産しているとのことです。
しかしイラム絨毯の知名度は他の都市で生産される絨毯ほど高くはありません。
ラヒミ氏はイラム絨毯をブランド化することが、最も重要な課題だと語ります。
また、多くの工房が、高品質のウールを購入したり、織物ラインを開発したりするための十分な資金を持っていないとし、小規模工房に特化した低金利融資を設け、農村協同組合と協力して絨毯織り職人のための支援基金を設立する必要があるとも述べています。

手工芸品の専門家であるアスガル・バハードリ氏は、国内外の展示会に継続的に参加し、直接販売用の多言語ウェブサイトを作成することも、輸出を発展させるための要件だと言います。
同氏は、絨毯の品質は原材料に大きく左右されため、天然染料を用いた染色工房を設立し、地元農家と契約して高品質のウールを供給することで、品質と安定性を向上させることができると考えています。
デザイナーたちが最新のソフトウェアを駆使し、地域の伝統を維持しながら新しいデザインを導入できるように、イノベーションセンターを開設する必要もあります。
戦争で多くを失ったイラムの人々にとって、ペルシャ絨毯は単なる敷物や商品ではありません。
希望と自立心、そして熟練の技をもって織り上げる女性たちの努力の生きた証なのです。
絨毯産業を支援することは、イラムの文化的アイデンティティを守るだけでなく、この町をペルシャ絨毯輸出の最も重要な拠点の一つへと変貌させることでしょう。

【イラム絨毯】
イラムは新興産地であるがゆえ、イラム絨毯にはかつてのクム同様に他産地のデザインを借用したものが多く見られます。
カシャーン風、イスファハン風、クム風と様々ですが、最近はタブリーズ風の作品が増えてきました。
いずれも繊細な文様を優雅に織り出しており、イラムの絨毯職人のレベルの高さが分かります。
縦横糸はシルク、パイルはウールですが、パイルの一部にシルクを使用したパート・シルクの技法も用いられています。
他の都市部の産地に比べると生産量が少なく、わが国ではあまり見かけることがありません。

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