若手デザイナーの間でペルシャ絨毯がトレンドに
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最近、ビンテージのオリエンタルラグがインテリアデザイン界、とりわけトレンドに敏感な若手デザイナーたちの間で注目を集めています。
20代、30代のデザイナーたちは現代的な無機質な空間に人間の温かみや歴史の重み、そして何よりも強い個性を与えるビンテージ絨毯を選んでいるのです。
これは恐らく一時的な流行ではありません。
機能主義と情報化社会の中に身を置く若手デザイナーたちは、ビンテージ絨毯の外見だけでなく、それらが内包するものに惹かれているのかもしれません。
ビンテージ絨毯には個性だけでなく物語性があり、長きにわたって継承されてきた職人技があります。
これは現代のファストファニチャー(使い捨て家具)文化とは対照的なものです。
ビンテージのオリエンタルラグの中でもペルシャ絨毯は、その多様性と品質の高さから特に人気となっています。
若い人たちがビンテージのペルシャ絨毯に惹かれる理由はこれでしょう。
しかし、何故いまのタイミングなのでしょうか?
それを紐解きながら、ビンテージのペルシャ絨毯をインテリアに取り入れる方法を考察してみることにします。
今日、スーパーブランドのショップ、都心のヘアサロン、リゾートのコテージなど、モダンにデザインされた空間を歩けば、ビンテージ絨毯が中心に据えられているのを目にする機会があるはずです。
かつてはニッチな、ともすれば時代遅れのアイテムとされていたものが、いまやモダンインテリアを象徴する存在となり、とりわけ住空間にもオリジナリティを求める若い世代の間で人気となっています。
こうした現象は決して偶然などではなく、時代の変化がもたらした必然と言えるかもしれません。
ネット社会の到来により、InstagramやPinterestなどのソーシャルメディアがビンテージ絨毯が注目を集めるきっかけを作りました。
色褪せた風合い、手織ならではのディテール、そして何よりも歴史を感じさせるビンテージ絨毯は、あらゆる空間に渋みをもたらす、新しい絨毯では決して表現できない個性を演出してくれます。
古さと新しさのコントラストが教科書どおりのスタイルではなく、時代を超越した魅力ある雰囲気を醸し出しているのです。 更に重要なのはビンテージのペルシャ絨毯が、個性や物語性、そしてサステナビリティ(持続可能な発展)を重視する世代の価値観に合致していることでしょう。
彼らの仕事は既存のスタイルを継承するのではなく、新たなる価値を創出し、それを啓蒙することです。
若いデザイナーたちは既存のスタイルの殻を破り、ビンテージ絨毯に新たな命を吹き込んでいます。
現代のインテリアにおけるビンテージ絨毯の人気は、単に彼らの嗜好ではなく、インテリアデザインに対する考え方の大きな変化を示しているのです。
若手デザイナーたちがビンテージを選ぶ理由には、哲学的な意味合いも含まれているようです。
彼らは安価で画一的なファストファニチャーから距離を置き、唯一無二の個性や物語性を持つ家具を求めています。
そんな家具にはビンテージのペルシャ絨毯ほど似合うものはありません。
流行を追いかけて数年ごとに買い替えられる大量生産の機械織絨毯とは異なり、ペルシャ絨毯は長持ちするように作られています。
熟練した職人が天然素材と伝統的な技法を用いて指先だけで織りあげたペルシャ絨毯には、数十年どころか数世紀にも及ぶ職人技が息づいているのです。
本物とディテールを重視するデザイナーにとって、ビンテージのペルシャ絨毯に勝るものはありません。
デジタル化が進み、使い捨てが当たり前の現代において、ペルシャ絨毯は空間を歴史と伝統に結びつけ、安心感を与えてくれるものです。
それぞれの作品には、微妙な織斑、色褪せた色合い、あるいは文様の不規則といった欠陥ともとられられないがあります。
しかし、現代のデザイナーたちはオリジナリティを追求する中で、こうした「不完全の美」にますます惹かれているようです。
ここで一つの誤解を解いておかなければなりません。
ビンテージのペルシャ絨毯は高価であると思われがちですが、必ずしもそうではないことを知っておく必要があるでしょう。
ビンテージというのは実に曖昧な言葉で、その範疇には製作されてから80年以上が経過した「セミアンティーク」や50年以上が経過した「オールド」が含まれます。
しかし、年代に価値が認められるには少なくとも50年ほどが必要で、それに満たないものは「中古」「ユーズド」として扱われるのが一般的です。
ビンテージは通常、製作されて20年から100年までの物を言いますから、その中には当然、中古やユーズドも含まれます。
そして、それらは新品よりも安い値段で取引されます。
絨毯屋の中には「古くなれば古くなるほど価値が出る」などと説明するところがありますが、古いものがすべて高価だという訳ではありません。
ちなみに製作されてから100年以上が経過し、なおかつ市場価値が認められる絨毯を「アンティーク」、製作されてから20年に満たないものは「ニューラグ」と言います。
多くの若手デザイナーたちはヨーロッパの有名デザイナーズブランドのラグを購入するよりも安く、本物のペルシャ絨毯を入手できることに気づき始めています。
過去との繋がりを与えてくれるビンテージのペルシャ絨毯は、インテリアに個性と物語性を追求する若手デザイナーたちにとって大きな魅力となっているのです。
このようにビンテージのペルシャ絨毯は時代遅れとなるどころか、洗練された温かみのある落ち着いた雰囲気を醸し出します。
時代感を加えることで深みが生まれ、ありきたりな空間から重みのある空間へと変化します。
いまのデザイナーたちは住宅展示場で見かけるような、ただ美しいだけの部屋には興味を示さなくなりました。
むしろ、時間をかけて熟成されたアトリエのような部屋に惹かれるのです。
ビンテージ絨毯の古びた風合いは、部屋全体が使い込まれたような雰囲気を醸し出し、人の温もりを感じさせる居心地のよい空間を作り出します。
一例を挙げれば古いカシャーン絨毯はシンプルな北欧家具をドラマティックに演出します。
カシュガイのトライバルラグは、コンクリートやスチールといったインダストリアルな無機質さを和らげます。
可能性は無限大なのです。
ミックス&マッチの感覚は、より創造的な自由をもたらしてくれます。
デザイナーは、ビンテージ絨毯を用いることで、部屋全体の美観を損なうことなく、時間的な要素を取り入れることができます。
それらはコーディネート次第で主役にも脇役にもなります。
つまるところビンテージのペルシャ絨毯は、デザイナーが既成概念を打ち破って新たな価値観を創造することを可能にするための魔法の杖であると言ってよいでしょう。
変化を求める若者こそが、インテリアデザインの分野においてもそれに気づいているのです。
地球温暖化への懸念と環境破壊がますます重視される世界において、サステナビリティは多くの若手デザイナーにとって重要な課題となっています。
ビンテージのペルシャ絨毯は、まさにこの価値観にぴったりと当て嵌ります。
これらを選ぶことはスタイルの選択という単純なものではありません。
使い捨てや大量生産への問題提起でもあるのです。
ビンテージ絨毯を購入して再利用することで合成素材、化学染料、そして二酸化炭素を大量に排出する新規生産が減ります。
つまり、古い絨毯に新たな命を吹き込むことで、デザイナーは保存、再利用、そして廃棄物の最小化を重視する循環型経済に貢献していると言えます。
天然素材を用いて製作されるペルシャ絨毯には、機械織絨毯に多い有害な化学繊維は使用されていません。
天然素材は時を経るごとに美しく経年変化しますが、機械織絨毯の多くはすぐに摩耗し、わずか数年で焼却処分されてしまいます。
ビンテージ絨毯はクライアントに、その空間が単に美しく装飾されただけでなく、深く考え抜かれたものであることを語りかけます。
言い換えれば、若手デザイナーたちはビンテージ絨毯を選ぶことで自らのメッセージを発信しているのです。
スタイルとサステナビリティは相反するものではないことを主張しているのです。
ビンテージのペルシャ絨毯は単なるトレンドではありません。
インテリアに対する考え方の変化を示しています。
若手デザイナーたちは、本物であること、持続可能な性質、そしてどんな空間にも温かみと個性をもたらすものとしてビンンテージ絨毯を選んでいます。
これらは単なる装飾品ではなく、個性を際立たせ、歴史を語り、時とともに美しく変化してゆきます。
現代のクリエーターたちは真に価値あるインテリアを追求しています。
ビンテージのペルシャ絨毯は、コレクション性があり、個性的で、意図的な空間作りに役立つだけでなく、実用的なメリットもあります。
耐久性に優れ、多くの場合、高級な新品よりも手頃な価格で、時とともに価値が上がることもあります。
ビンテージのペルシャ絨毯を購入することはステイトメントであると同時に、賢い投資でもあるのです。