ニアバラン宮殿のセーラフィアン絨毯
[画像:ニアバラン宮殿]
ニアバラン宮殿(Niavaran Palace)は、テヘラン市北部にあるパフラヴィー朝(1925〜 1979年)時代の宮殿です。
ニアバラン宮殿はパフラヴィー朝第2代皇帝モハンマド・レザー・シャーの一族が夏の間を過ごすための別荘として計画され、1960年代に建築が始まりました。
設計は西洋とペルシャの建築様式を融合させたもので、美しい庭園や池、彫像が配置されています。
内部は豪華な装飾とともに、近代的な設備が整っており、贅沢な生活空間を誇っていました。
1979年のイラン革命により、王政が崩壊した後、この宮殿は歴史的・文化的な遺産として保護され、観光名所としても知られるようになりました。
現在、多くの観光客がこの宮殿を訪れ、イランの歴史や王族の生活を学ぶ機会を提供しています。
ニアバラン宮殿を訪れる人々の目を引くペルシャ絨毯のコレクションの中に、セーラフィアン工房で製作された2枚のイスファハン絨毯があります。
セーラフィアン工房の創設者であるレザー・セーラフィアンは、イスファハンのバザールで知られる金融業者であり、一般の人々からも深く敬愛されていました。
彼はペルシャ絨毯の逸品を収集していましたが、同時に自ら最高の絨毯を製作する希望を抱きます。
その情熱は現実のものとなり、最高品質の天然素材を用い、著名なデザイナーや熟練の織工を雇って、見事なペルシャ絨毯を製作ことに繋がりました。
そうして製作された絨毯は、比類のない優雅さを備えるものとなったのです。
レザーはまた、絨毯の下端にセーラフィアンの名やイランの国旗を織り込み、品質を保証します。
これらの絨毯は、その品質の高さからすぐに商人や愛好家の間で人気を博しました。
セーラフィアン工房のデザインはイランの伝統に基づいており、サファヴィー朝期の絨毯の影響を受けたデザインも多く見られます。
フィールドは流れるようなイスリムの動きでデザインされており、ボーダーには独特の工夫が為されてています。
染色には天然染料のみが使用され、熟練した主に女性の織師がノッティングを行います。
レザーの子供たちもその成功に影響を受け、父と共に働き始め、多くが絨毯の製作に従事しました。
セーラフィアン一家の作品は、そのデザインや色使い、織りの技術において高い評価を受けており、国内外に多くの愛好者がいます。
極めて品質が優れているため、コレクターの需要も高く、歴史的な価値を持つ作品としてだけでなく、投資の対象としても認識されるようになりました。
セーラフィアン工房は、ペルシャ絨毯の伝統を守り続けながら、新しい技術やデザインを取り入れることで、現代にも通じる魅力的な作品を生み出しています。
モハンマド ・レザー・シャーはセーラフィアン一家の作品を賓客への贈答品に用い、これらは世界中の宮殿を飾ってきました。
また、ニューヨークの国連本部にもレザーの2男、モハンマド・セイラフィアンの作品が飾られています。
ニアバラン宮殿のセーラフィアン絨毯は何れもレザーの息子たちがが製作したものです。
一枚はモハンマド ・セーラフィアンの作品でアクバル・ミナイアンがデザインしたドーム・パターンのガリ。
もう1枚は4男アフマド・セーラフィアンの作品で、アフマド・アルチャングがデザインしたものです。
こちらはシャー・アッバスのパルメットを多用したオーソドックスなメダリオン・コーナーのザロニム。
2枚ともにシルクの縦横糸にウールのパイルで、200万ノットに近い緻密さを持つ超逸品です。

