シルクのペルシャ絨毯が高級とは限らない理由

シルクのペルシャ絨毯が高級とは限らない理由

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シルクのペルシャ絨毯の美しさや高級感は広く知られています。
とりわけ、かつて養蚕が盛んであったわが国においてはシルク絨毯の人気は高く、日本人の中にはシルク絨毯が高級品で、ウール絨毯は低級品と考える人も多いようです。

しかし、ペルシャ絨毯の品質の高さは必ずしもその素材に依存するわけではありません。
シルク自体は絨毯に独特の光沢と滑らかさを与えるため、高級品としての位置づけがなされています。
しかし、実際にはいくつかの要因が品質や価格を決定します。
素材の選択は重要な要素ではあるものの、ペルシャ絨毯の品質や価値を評価するにあたって、他にも考慮すべきことがいくつもあることを理解することが大切です。

まず、シルクにも品質の良し悪しががあるという点です。
シルクのペルシャ絨毯といえど、使用されるシルクの種類によって品質が異なります。
生糸を使用することで、美しい光沢と耐久性が保たれますが、絹紡糸が使われた絨毯は、光沢と肌触りに欠けるだけでなく、劣化が早くなる傾向があります。
生糸とは、1個の繭から一本の長い繊維を繰り出したもので「フィラメント・シルク」とも呼ばれます。
光沢があり柔らかく、強度が高いのが特徴です。
絹の品質を示す重要な指標とされており、特に純粋で高品質な生糸は高値で取引されます。
一方の絹紡糸は、生糸(長繊維)を作った後に残る副産物の短い絹の繊維(キビソ、屑繭など)を集めて綿状にし、紡績して作られた短繊維の絹糸で「スパン・シルク」とも呼ばれます。
シルクには違いありませんが、光沢は少なく肌触りや耐久性も生糸に劣ります。
当然、生糸よりも安価です。
このように、素材としてのシルクが高級感を与えることはあっても、その質が必ずしも優れているとは言えないことを知っておく必要があります。

また、ペルシャ絨毯の製作過程における職人の腕も重要な要因です。
いかに高級な素材を使用していても、技術や仕上げが不十分であれば、その価値は大きく減じることになります。
手織の技術には高い腕が要求され、熟練した職人が作り出す絨毯は、デザインや織りの密度においても優れたものとなります。
反対に、製造過程において未熟な職人によって作られた絨毯は、素材がシルクであっても見た目や耐久性が劣ります。
このようにシルクの絨毯が品質が優れているかどうかは、職人の腕に大きく左右されることを忘れてはなりません。

さらに手入れやメンテナンスの容易さも、ペルシャ絨毯の評価において考慮するべき重要な要素です。
シルクはその性質上、他の素材に比べて手入れが難しく、適切な方法でケアをしないと劣化が早くなります。
特に、シルクのペルシャ絨毯は湿気や直射日光に極めて敏感で、適切な保管が行われなければパウダリングしてしまうことがあります。
パウダリングとは、繊維が酸化して粉状になってしまうこと。
パウダリングしたシルク絨毯を修理するのは不可能です。
こうしたシルクの特性は、所有者が絨毯を長持ちさせるために相応の手間と配慮が必要であり、それが評価を下げる一因となるかもしれません。

総合的に見て、シルクのペルシャ絨毯が高級であるかどうかは、単に素材だけでは決定されません。
ペルシャ絨毯の品質は素材の質、職人の技術等々多くの要因が組み合わさって、初めてその価値が決まります。
このように、高級品としての評価は多層的で複雑なものであり、シルクを使用しているというだけでは十分な指標にはならないことは明らかです。

ペルシャ絨毯を選ぶ際には、シルクであるかどうかに偏った評価をしてしまうのではなく、全体的な品質や関連する要素を総合的に考慮することが重要です。
こうした視点を持つことで、本物の美しさを理解し、持続的に愛される絨毯を見極める力を養っていくことができるといえるでしょう。
シルクのペルシャ絨毯は確かに美しいものですが、その価値を見極めるためには背後にある多くの要因を十分に理解する必要があるのです。

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