タブリーズ産ペルシャ絨毯の独創性とは

タブリーズ産ペルシャ絨毯の独創性とは

タブリーズ産ペルシャ絨毯の独創性とは

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イランが誇る文化遺産であるタブリーズ産のペルシャ絨毯は、今日、伝統の保持と変革の必要性の間(はざま)で揺れ動いています。
タブリーズの絨毯作家たちは、それを解決する手段は、現代の創造性を古代のルーツと結びつけることにあると考えているようです。

タブリーズ絨毯は伝統工芸品であるだけでなく、イランの歴史、文化、そして精神を物語る生きた記録でもあります。
何世紀にもわたるオリエントの創造性と美学を物語る象徴なのです。
しかし今日、タブリーズ絨毯は伝統とモダニズムとの岐路に立っています。
世界的なトレンドの変化、IT社会の到来、そして芸術に対する商業的視点の拡大は、タブリーズの絨毯作家やデザイナーたちに新たな問いを投げかけているのです。
タブリーズ絨毯の伝統を、現代社会のニーズに応えながら、どのように守っていくことができるのでしょうか?

タブリーズ・イスラム芸術大学の准教授であり、絨毯学部長でもあるアブドラ・ミルザイ氏は、メフル通信のインタビューで、イラン絨毯織り復興の歴史的ルーツについて、ペルシャ絨毯の新たな発展の始まりは、カジャール朝時代にあると捉えるべきだと言います。
ペルシャ絨毯が頂点を極めたサファヴィー朝の消滅から19世紀半ばの絨毯産業の復興まで、約150年間のブランクがありました。
この間、絨毯織りは農民や遊牧民により限定的に続けられていましたが、都市部の工房における生産は事実上停止していました。
しかしカジャール朝後期、タブリーズはこの復興の先駆者となることができたのです。

ミルザイ氏は、この復興がヨーロッパの経済発展と同時期に起こったことに言及します。
西洋における産業革命の後、イランの繊維産業は大きな打撃を受け、国内市場は消滅しました。
しかし、これが絨毯ブームの道を開くことになったのです。
ヨーロッパの商人たちはペルシャ絨毯をイランへの綿製品などの輸出で得た利益でペルシャ絨毯を購入しました。
こうしてヨーロッパ市場におけるペルシャ絨毯の需要は日増しに高まってゆきます。
タブリーズの商人たちは、その地理的利点を活かし、ペルシャ絨毯を世界市場に紹介してゆきました。
タブリーズは、ヨーロッパ、コーカサス、そして中東への玄関口として、極めて重要な役割を果たしたのです。

タブリーズはイスタンブールからヨーロッパへと至る貿易路の起点であり、海外市場との繋がりを持っていました。
この町の商人や工芸家たちは古典的な伝統にあまり縛られることがなかったとミルザイ氏は言います。
タブリーズのモダニズムはペルシャ絨毯だけにとどまらず、他の分野でも発揮されました。
イランでは国内初となる自治体や印刷所、図書館、劇場、消防署などです。
こうしたモダニズムはタブリーズのデザイナーたちにも及びます。
彼らはペルシャ絨毯のデザインに、よりオープンな視点で取り組むようになり、古典的なデザインから距離を置くようになりました。

タブリーズ絨毯の原点をサファヴィー朝期に求めるならば、確かに現代のタブリーズ絨毯は原点から遠ざかっています。 しかし、真正性を現代の文化やニーズとの調和と捉えるならば、こうした変化は自然であり、必要不可欠なものでもあります。 今日の社会はもはや古風な師弟制度に基づくものではなく、多くのデザイナーが独学、学術研究、あるいはバーチャルな方法で活動を行っています。 これがデザインの多様性、そして時には分散化に繋がっています。

欧米の市​​場は、もはや現代の派手なタブリーズ絨毯には興味を示さなくなりました。
つまり、欧米人たちはデザインや模様に見られる本物らしさと東洋的な雰囲気を求めているということです。
対照的にアラブ諸国の市場は、繊細で色彩豊かな絨毯を好む傾向があります。
絨毯メーカーの間では、色数やシルクの量を増やすほど価値が高まるという誤解が蔓延しています。
しかし欧米人にとっては、文化的な本物らしさと東洋のアイデンティティこそが重要なのです。

タブリーズ絨毯が世界市場におけるシェアを回復するには、市場を再構築し、研究と教育を行い、本質を正確に理解する必要があります。
絨毯作家とデザイナーは知識と経験を活用し、国内外の顧客の嗜好を把握することで、現代的な形で本物らしさを再定義する道を切り開かなければならないとミルザイ氏は言います。
タブリーズ絨毯は生産量において国内トップクラスですが、世界的な地位を回復するためには、過去への深い理解と未来への洞察に基づき、伝統と革新の間に芸術的な架け橋を築く必要があるということなのです。

タブリーズ絨毯の古代東洋の真正さは忘れ去られつつあります。
絨毯デザインにおける創造性は、伝統と革新に基づくべきです。
絨毯デザイナー兼画家で、タブリーズ・デザイナー協会会員のシルヴェイエ・マフムードザデ氏は、メフル通信のインタビューに対し、絨毯デザインにおける革新と伝統の維持の必要性を強調し、正統派のタブリーズ絨毯と今日のタブリーズ絨毯の間には大きな隔たりがあると指摘しました。
正統派タブリーズ絨毯のデザインはシンプルながらも一貫性があり、実に優れたものでした。
そして、その色彩は比類のない組み合わせによって施されていました。
対照的にファッショナブルな?現代のタブリーズ絨毯の多くは、デザインが複雑すぎたり、色彩の調和や一貫性が欠けていたりします。

マフムードザデ氏は、創造と革新を目指して斬新なデザインを追求することは、タブリーズ絨毯の芸術性や本来のアイデンティティから逸脱してしまう可能性があると指摘します。
彼は革新とは過去の遺産を捨て去ることではなく、過去の芸術家の知識、経験、そして業績から学び、それを現代のニーズや嗜好と融合させることだと考えています。
そして創造性は、科学的かつ芸術的な原則とルールに基づいて発展するときにこそ価値を持つとします。
欧米人に受け入れられる作品を生み出すためには、イランの伝統的なモチーフ、そしてその原点を深く理解する必要があります。

過去の知識と美学を現代の創造性と融合させることで、タブリーズ絨毯の独創性と文化的アイデンティティを維持しながら、現代の多様なニーズや嗜好にも応える作品を生み出すことができるとマフムードザデ氏は言います。
現代人の趣向を無視することはできませんが、伝統を忘れることはアイデンティティの喪失に繋がります。
師弟制度に基づく教育を現代的な形で復活させ、デザイナーや製造業者を支援し、ペルシャ絨毯についての研究を促進すれば、タブリーズの絨毯産業は新たな局面をむかえるでしょう。
タブリーズ絨毯が世界市場において再び地位を取り戻す道はこれしかありません。

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