歴史に残るペルシャ絨毯盗難事件

歴史に残るペルシャ絨毯盗難事件

歴史に残るペルシャ絨毯盗難事件

[画像:ビクトリア・アルバート美術館のアルデビル絨毯]

史上最悪の盗難事件として広く知られているのは、1911年にルーブル美術館で発生した「モナ・リザ盗難事件」と、1990年にボストンで起こった「イザベラ・スチュワート・ガードナー美術館事件」でしょう。
モナ・リザ盗難事件は元美術館職員のイタリア人ガラス職人、ビンセンツォ・ペルージャが起こしたもの。
ナポレオンによる略奪への復讐と「イタリアへの奪還」を動機に2年間自宅に隠した後、売却を試みて逮捕されました。

この盗難事件がきっかけで『モナ・リザ』は世界的な名声を獲得します。
また、この事件は詩人のアポリネールや画家のピカソが一時容疑者とされる騒動も誘発しました。
一方のイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館事件は2人の男が美術館に侵入し、約5億ドル相当の美術品を盗んだものです。
盗難品はレンブラントの『ガラリアの海の嵐』(画像)やフェルメールの『合奏』を含む13点で、プロの窃盗団の仕業とされています。
懸賞金がかけられ懸命な捜査が行われているものの、未だに犯人も作品も見つかっていません。



これらの事件は文化財の保護や美術館のセキュリティについての認識を高め、法的規制や国際的な協力の必要性を訴えることとなりました。
とりわけイザベラ・スチュワート・ガードナー美術館事件は、アート界における盗難の影響を広く知らしめ、現在も探査が続いています。
実はペルシャ絨毯についてもこれに匹敵する重大事件が発生したことはあまり知られていません。
犯人たちのターゲットになったのは、何れもペルシャ絨毯の名品中の名品でした。
ここでは歴史に名を残すペルシャ絨毯盗難事件を3つ紹介します。
なお、最近イランや欧米でニュースになったペルシャ絨毯に関わる事件については【ペルシャ絨毯をめぐる事件(イラン編)】【ペルシャ絨毯をめぐる事件(欧米編)】で紹介していますので、合わせてご覧ください。

1. 17世紀イスファハン絨毯盗難事件(1979年、イラン):
1979年に起こったイラン革命の混乱はイラン全土に及び、破壊と喪失をもたらしました。
そんな中、イスファハンではイランの貴重な文化遺産である17世紀に製作されたイスファハン絨毯が盗まれます。
この絨毯はペルシャ絨毯が黄金期を迎えたサファヴィー朝時代に製作されたもので、長さが10メートルを超え、複雑な花のモチーフと幾何学模様で飾られていました。
この絨毯はペルシャ絨毯の名品の1つとして称賛され、イランの絨毯工芸の象徴ともなっていたのです。
犯人は暗闇に紛れて、絨毯が展示されていたイスファハンのグランドバザールに侵入し、これを盗み去ります。
火事場泥棒とも言えるこの事件はイラン国中に衝撃と憤慨を与えました。
当局による懸命な捜索にもかかわらず、この絨毯は行方不明のままで、その所在は闇に包まれたままです。

2. アルデビル絨毯盗難未遂事件(2005年、イギリス):
ロンドンのビクトリア・アルバート博物館のホールに飾られたアルデビル絨毯は、ペルシャ絨毯の時代を超えた美と精巧無比なる職人技を具現しています。
16世紀に遡るアルデビル絨毯は、「ペルシャ絨毯の最高傑作」とも呼ばれ、計算され尽くしたデザインと色彩で有名です。
10メートル以上もある繊細なシルクとウールで織られたこの絨毯は、イランはもちろん、イスラム世界の文化遺産の象徴でした。
2005年のある晩、ビトリア・アルバート美術館の夜の静寂は、ガラスが割れる音で破られます。
アルデビル絨毯の展示室に賊が侵入したのです。
犯人たちは綿密な計画に基づいて行動を起こしましたが、彼らの試みは博物館の警備員と警察の迅速な対応によって阻止されました。
警報を聞きつけた警備員は現場に到着して賊を拘束し、アルデビル絨毯の盗難を防ぎます。

アルデビル絨毯は無傷でした。
事件後、アルデビル絨毯はセキュリティ強化と非難措置のため一時的に展示から外された後、館内の所定の場所に戻され、世界中の観客を魅了し続けています。
この盗難未遂事件は、貴重な宝物を盗難や破壊から守るという博物館・美術館の使命を再認識させる出来事になりました。

3. ストックホルム宮殿絨毯盗難事件(2010年、スウェーデン):
2010年、スウェーデンのストックホルム中心部にある宮殿で、何世紀にもわたってホールを飾ってきた貴重なペルシャ絨毯のコレクションが盗まれました。
絨毯はイスファハン、カシャーン、タブリーズなどで織られた名品ばかりです。
スウェーデンとイランの文化交流のあかしとして宮殿のホールや部屋を飾っていました。
ある夜、一団の泥棒が王宮に侵入し、内部にあったペルシャ絨毯を盗みました。
彼らは警備網をすり抜け、絨毯が保管されている部屋に侵入した後、絨毯をフレームから外して姿を消しました。
当局は直ちに捜索を開始しましたが、今日まで成果は上がっていません。
目撃情報が寄せられてはいるものの、犯人は未だ逃走中です。

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