2021/07/08
ビジネスには、ときに嘘やハッタリも必要となりましょう。
しかし、これらはあくまで業者間取引における駆引のツールとして使うものであり、一般のお客様を対象に使うものではありません。
一般のお客様に対してそれらを使い、金銭を得ることを世間では「詐欺」と言うのです。
古美術業界では業者間取引の場合、偽物を掴まされたとしても「騙された方が悪い」となります。
騙されたのは「眼が利かなかったから」で、目利きこそが尊敬される古美術の世界では、眼が利かないことは悪である訳ですね。
二、三日は食事さえ喉を通らないお金の痛み……その悔しさをバネにして眼力を鍛えられる人だけが、やがて目利きと呼ばれるようになるのでしょう。
「授業料」とはよく言ったものです。
お金があれば眼が甘くなる……これを戒める先人たちの「愛の鞭」なのかもしれません。
かくの如く厳しい古美術業界ですが、素人を騙すことはご法度で、仲間内から蔑まれる恥ずべき行為であるとされます。
これは「弱気を助け強気を挫く」という、日本古来の武士道精神に根差したものなのかもしれません。
端的に言えば「弱い者いじめをするな」ということ。
素人を騙すような店は仲間内から三流の烙印を押され、馬鹿にされるのが実際です。
逆に言えば、一流店であれば絶対にお客様を騙すことなどない訳で、日本橋の壷中居さんが偽物を売ったという話は噂にも聞いたことがありません。
ところが、まったくその反対をやっているのがわが国の絨毯業界。
同業者には甘く、お客様には厳しい……「厳しい」というのは、良い意味ではなく悪い意味の方で、わかりやすく言えば「騙す」ということです。
産地を偽り有名工房作品の偽物を売る、値引のトリックでお客様を煙に巻く……こうした店が多いのが現状でしょう。
50%OFFだの70%OFFだのと法外な値引を歌っている店や、サイト内に「マラゲ産」「タバス産」の記述がない店などは、ほぼすべてこの類の店と考えてよいと思います。
そうした現実を理解しておくこてにより、駄物を高く買わされる可能性も低くなる筈です。