テヘラン・ペルシャ絨毯国際展示会に行ってきました
2019年8月25日から31日まで、イランの首都テヘランにある国際展示会場で開催された『イラン手織絨毯展示会』にて買付を行いました。
イラン旅行をされた方でも本展示会をご覧になる機会はないものと考えますので、今回は会場内の様子を紹介することにします。
国際展示会場があるのはテヘラン市内北端、アルボルズ山脈の麓にある地区。
テヘラン中心部からチャムラン・ハイウェイを北上すると右手に樹々に囲まれた広大なメッラト公園が見えてくるのですが、その公園内です。
展示会場内には多くのパビリオンがありますが、そのうち15棟が手織絨毯展示会の会場として使われていました。
各パビリオンにはイラン全土の主要絨毯産地から集まった100前後の業者がブースを設けているので、会場全体では1000以上の業者が集まっていることになります。
有名工房も多数出展しているので、作品を見比べて回ることもできますし、お願いすれば一緒に写真を撮ることもできます。
よく絨毯屋のサイトで有名作家とのツーショットが掲載されていますが、実はほとんどが会場内で撮影したものです(笑)。
ただし、最近では作品の撮影を禁じているブースが増えてきました。
クムのモハンマド・ジャムシディのように、作品は一枚も壁に掛けられておらず、隅のに折りたたんで積み重ねられているだけのブースもあるほどです。
今回の展示会では、実に悲しい出来事がありました。
展示会は初日が勝負なのですが、いつも初日に見にゆくブースはだいたい決まっています。
いつものように幾つかのブースを回ったあとで、マシャドから出展しているジャーファル・アハディアン氏のブースに向かいました。
アハディアン氏は現代のマシャドでは希少な極めて緻密な織りの絨毯を製作していて、中には144万ノットに及ぶものもあります。
デザインは古典を基調としながらも新しい要素を加えており、作品はどれもとても魅力的です。
アハディアン氏は70歳は超えていますが、元気な様子で、二人の息子たちとともに私たちを暖かく迎えてくれました。
気に入った一枚があったのですが、すぐに値段交渉をすると高くなる可能性があるので、一日考えると言って、とりあえず一日だけキープしてもらうことにしました。
翌日、アハディアン氏のブースを訪れたところ、彼のブースだけ照明が落とされています。
誰もいないようなので、不思議に思いながら立ち尽くしていると、奥からスタッフの一人が出てきました。
「値段交渉をしに来た」と言うと、彼は沈んだ表情で「今朝、アハディアンが急死した」と私たちに告げました。
話によると、朝起きると具合が悪いと言い出したので、テヘラン市内の病院に連れて行ったところ、そのまま息を引きとったそうです。
息子たちは遺体と一緒に明日、マシャドに戻るので、いまは値段交渉はできない」とのことでした。
「ご愁傷様です」と伝え、アハディアン氏への弔意を込めて、昨日聞いた言値で購入しました。
お客様から頼まれているものもあったので、それらも探さなければならず、滞在していた四日間は朝から夕方まで歩き回っていました。
最近イランではパステルカラーのタブリーズ絨毯が人気があり、カシャーンやイスファハンなどの産地でもタブリーズ風の絨毯が製作されるようになっています。
それゆえ心なしか会場全体が白っぽくなっているように感じられました。
今年は異常気象により例年よりは涼しく、またパビリオン内は冷房が効いているとはいえ、真夏に広い会場内を歩き回るのはけっこう大変です。
同行した弊社イラン事務所のイラン人スタッフは、交渉役も兼ねていたのですっかり音をあげていました……と他人のことを言える筋合いではなく、連日ホテルに戻った途端にバタンキュ~でした(笑)。
バザールではなかなかお目にかかれない珍しい品や工房の作品を入手できるのがこの展示会ですが、以前に比べると面白さは半減しているようです。
脚の痛さに負けず、頑張って買付を行いました。
中国人の姿はちらほら見かけましたが、日本人のはあまり見かけませんでした。
行きもそうだったのですが、50歳代も半ばになると12時間も飛行機(もちろんエコノミークラスです)に乗るのは辛いため、今回はタイのバンコクを経由して帰国しました。
そのコースだと6時間+6時間になりますし、バンコクで一泊することができるので随分と楽です。
ただし、この時期はバンコクは雨期なので、雨ばかりですが……。