部族と農村部のペルシャ絨毯の境界線
[第 話]
部族のペルシャ絨毯と農村部のペルシャ絨毯の境界線は、一般には明確に定義されている訳でありません。
たとえばアリーアバドに居住するカシュガイや、ボルダジに居住するバクチアリなど、部族の定住民の絨毯は部族の名で呼ばれたり、村の名前で呼ばれたりすることがあります。
ただし、一般的な傾向や特徴を通して、部族のペルシャ絨毯と農村部のペルシャ絨毯の違いを理解することができます。
部族の絨毯は、遊牧民や部族社会に根ざした伝統的な手織り絨毯であり、特定の部族や地域の文化や歴史、生活様式が反映されています。
これらの絨毯は、しばしば幾何学的なデザインや飽和した色彩が特徴であり、部族ごとに異なる伝統的な技法や文様を持っています。
部族の絨毯は、一般にパイルだけでなく縦横糸にもウールが使用されており、そのため耐久性が高く、厚手で丈夫な作りが特徴です。
製作には水平型織機が使用されるため、大きなサイズを見かけることは稀です。
一方、農村部の絨毯は村々の自然環境や生活様式、文化的な影響を受けながら、独自のデザインや色彩を持っています。
農村部のペルシャ絨毯は、部族の絨毯よりも柄や色合いが繊細で、曲線的な花や植物のモチーフが用いられることがあります。
また、農村部の絨毯は、部族の絨毯よりも織り密度が異なることがあり、より緻密な織りや細かい文様が特徴的な場合もあります。
パイルは部族の絨毯同様にウールが使用されますが、縦横糸には木綿が使われるのが一般的で、竪型織機を用いて製作されるため、大きなサイズのものもあります。
以上のように部族のペルシャ絨毯と農村部のペルシャ絨毯の境界線は、部族の伝統や文化と地域の環境や生活様式、織り手法やデザインの違いによって表現されると考えられます。
両者はしばしば重なり合い、交雑することもあり、それぞれの独自性と特徴を持ちながら、多様性豊かなペルシャ絨毯の世界を形作っています。
これらの絨毯は、豊かなイラン文化の遺産として、世界中で高い評価を受けているのです。