『ゴルゴ13シリーズ』に登場するペルシャ絨毯

『ゴルゴ13シリーズ』に登場するペルシャ絨毯

『ゴルゴ13シリーズ』に登場するペルシャ絨毯

[第 話]

日本人であれば『ゴルゴ13シリーズ』を知らない人は、ほとんどいないでしょう。
『ゴルゴ13』は、さいとう・たかを(さいとう・プロダクション)による神級の狙撃手であるゴルゴ13の活躍を描く劇画で、1968年11月から小学館『ビッグコミック』にて連載されています。
 2021年7月には、リイド社より発売される単行本(SPコミックス)の刊行数が単一漫画シリーズとしては世界一となる201巻を数え、ギネス世界記録に認定されました。
同年7月時点でシリーズ累計発行部数は3億部を超えているそうです。

さいとう・たかを氏は、2021年9月24日 膵臓がんのため逝去されましたが、ゴルゴ13は、さいとう・プロダクションによって連載が続けられています。
ちなみに、連載継続中の漫画としては『碧南一家』『タンマ君』に次いで日本で3番目の長寿漫画であり、現在までの連載期間は、日本で4番目の長さとなるとのこと。

さて、このゴルゴ13の第3話に 「バラと狼の倒錯 」(1969年1月)という回があります。
ある日、スペインの富豪・ロドリゲスの愛娘が、「フォエティダ(黄色いバラ)」という名うての色事士に誑かされ、消息を絶ちます。
男の殺害を依頼されたゴルゴは車を待ち伏せて狙撃しようとしますが、運転していたのは明らかに女でした。
フォエティダに誑かされた女達のブルーフィルム(いまでいうアダルトビデオ)がペルシャ絨毯に織り込んで売られていることを突きとめたゴルゴは、潜入したイランで例の女を見つけます。
偶然ではあり得ないと判断してゴルゴは女を撃ちましたが、女には驚くべき秘密が隠されていたのです。
その女こそがフォエティダであり、彼女は何と両性具有のレズビアンだったのでした……。

ゴルゴ13といえば寡黙で冷徹、握手を拒み背後に人が立つのを嫌うといったイメージがありますが、最初期のゴルゴは、結構おしゃべりだったり、 自分の狙撃を目撃した女性の口を封じることをためらったり、握手をしたりするシーンがあります。
この回にも運送屋に変装してペルシャ絨毯の工房に潜入したゴルゴが、「おとなと違ってどやしつければとにかく、よく働くからねえ」と言う工房の棟梁の老女にムッとするシーンがあります。
ペルシャ絨毯を子供に織らせているという誤った認識がまかり通っているのですが、55年も前のことで当時イランのことを知る人はごく僅かだったでしょうから、仕方ないのかもしれません。

ブルーフィルムをペルシャ絨毯に織り込むなどというのは現実には不可能ですが、これによく似た手口を使った密輸事件は実際に起こっています。
2008年にはパキスタンやアフガニスタンなどと国境を接する中国の新疆ウイグル自治区ウルムチでパキスタンから送られてきた32枚のじゅうたんから48キロのヘロインが税関当局によって押収されたといいます。
また、その2か月前にも、アフガニスタンから輸入された3枚のじゅうたんからヘロイン5キロが押収されています。
密輸組織は、ヘロインを小型のプラスチック製チューブに注入し、それを合成繊維で包んでじゅうたんに縫い込んでいました。

同様の密輸品はドイツでも見つかっていて、イランから航空貨物として届いた絨毯に9枚に合計45キロのヘロインが隠されていたのをドレスデンの税関が発見しています。
これらの絨毯は同じ送り主からポーランド、フランス、ベルギー、コンゴの受取人に宛てられており、税関職員によるとヘロインの純度は非常に高いため、その価値は数百万ユーロにも及ぶ可能性があるとのことでした。
絨毯が通常より重かったため、税関職員がトリックに気づいたといいます。
写真を見るとヘロインが隠されていた絨毯はアフガン絨毯で、アフガニスタンからイランへ密輸され、その後、航空貨物として発送されたようです。

ドレスデンの税関で見つかったヘロイン入りのチューブを織り込んだアフガン絨毯。
密売組織が『ゴルゴ13シリーズ』を読んでいた訳ではないでしょうが、劇画に登場するペルシャ絨毯と同じ手口が用いられています。

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