[第　話]

ペルシャ絨毯は様々な種類を世界中の絨毯市場で見つけることができます。
しかし、そのうちの 1 つは、世界中の人々の心の中に特別な場所を見つけました。
手織り絨毯を選ぶとき、真っ先に挙げられるのが部族の絨毯（トライバルラグ）です。
歴史を通じて部族民たちはペルシャ絨毯の生産において重要な役割を果たしてきました。
トライバルラグはイランの古代の文化と歴史に根ざしています。
しかし、部族の絨毯について探求する前に、まず部族の実態を知っておく方がよいかもしれません。

ペルシャ語のほとんどの辞書では、イルという言葉は「部族」を意味しており、これらの中には家畜を飼育して畜産物を得るいう生計手段を用いるアフシャル、ルリ、カシュガイ、クルド、トルクメン、ハムセ、シャーサバンなどの部族連合体、それに属する部族及びその支族や氏族、並びにそれら出身の定住民が含まれています。
彼らは広いレベルで共存し、限られたレベルで農業を営んでいます。
現在、イランには約400万人の部族民がいます。
彼らの多くは家畜を育てて畜産物を収穫し、それによって収入を得ています。
その中には牧草地を求めて羊や山羊の群れとともに移動生活を送る遊牧民もいます。

イランの地形や気候などの地理的条件や歴史的要因により、イランの部族は国の各地に分散していますが、主に以下の5つの地域に住んでいます。

1. 北および北西地域: シャーサバンのテリトリー及びアルスバラン、ガラジェ等
2. 西、南、南西地域：ルリ、カシュガイ、アフシャルのテリトリー及びボイヤー・アフマド等
3. 北東部：トルクメンのテリトリー及びサンサル等
4. 東部および南東部地域:：バルーチのテリトリー
5. 中央部：バクチアリのテリトリー及びチャハル・マハル等

残念なことに、都市生活の拡大、居住施設の未整備、そして何よりも遊牧生活を評価し、奨励するための政策の欠如により、これらの地域の遊牧民の数は日に日に減少しています。
そして遊牧民の文化や工芸の大部分が失われつつあります。
現在、バクチアリ、カシュガイ、ママサニ（ルリ）は、国内の手工芸品生産、特に絨毯の分野に関わる最も重要かつ熟練した部族です。

前述したように、遊牧民は家畜を飼育することでさまざまな畜産物を生産し、収入を得ています。
よって、部族内では、より多くの家畜を所有している者の地位が高くなります。
牧畜において最も重要な生産物の一つはウールです。
羊の毛を刈り、洗浄、紡績、染色などの工程を経て高品質の毛糸が作られ、遊牧民の女性たちの手によって絨毯になります。
部族の絨毯の中には高品質なものも多く、部族民たちの収入に重要な役割を果たしています。
部族の絨毯のデザインは織手自身が考えるため、これらの絨毯はイランの文化や工芸を研究するための貴重なソースとなっています。
キリム 、ソマック、ジャジムなども部族民によって織られる敷物です。
部族女性たちが製作する手工芸品は、上質な質感とデザインや色彩のオリジナリティを備えており、これらの手工芸品の愛好家にとって手織り絨毯を選ぶのは難しいものとなっています。

遊牧民の絨毯の素材としての役割において、自然は常に最も重要な要素でした。
各地域は地理に応じて異なるデザインを作成します。また、遊牧民の男女の織り手は、自然からインスピレーションを得たモチーフに加えて、先代や先祖から代々受け継がれてきた他のモチーフをカーペットの生地に織ります。
単なる装飾ではなく、彼らの心の中に独自の記号を持つ物質的および精神的な価値観を表すパターンがカーペットの表面に描かれています。
このようなモチーフの違いやバリエーションはありますが、さまざまな地域の遊牧民の絨毯には 1 つの共通点があります。
それは色です。すべての遊牧民の生息地の天然素材から作られたハッピーカラーの大胆な使用は、すべての遊牧民のカーペットに共通の特徴です。
ほとんどすべての遊牧民のカーペットは、赤、青、緑、黄色の幸せで元気を与える色を使用しています。

部族の絨毯の起源についてよく理解していただいたところで、それが人気になっている理由を調べてみましょう。
遊牧の絨毯が世界中の人々に人気がある理由の一つは、そのユニークなデザインと色です。
当初、遊牧民の絨毯には計画がなく、遊牧民の織手たちが周囲の環境からインスピレーションを得て、これらすべての模様を絨毯に織り出しました。
遊牧民絨毯のデザインのオリジナリティとユニークさに加えて、イラン芸術の長年の伝統に反して、これらの手織りでは平行性は無意味であり、これがその魅力と世界の他の絨毯との違いの理由です。
また、これらのカーペットに使用されている素材はすべて完全に天然であり、化学物質を使用せずに調製されています。この問題により、アレルギー誘発性は大幅に減少しました。

手織りの遊牧民の絨毯は世界市場で最も人気のある絨毯ですが、最近ではインド、中国、パキスタンの絨毯がはるかに低賃金の絨毯織り職人によって織られており、首位を維持するのは困難になっています。
明らかに、これらのカーペットはオリジナルの部族の絨毯よりも品質が低いため、織工をサポートし、これらの古代の手工芸品を広く宣伝して紹介することで、世界市場での価値を維持するために積極的な一歩を踏み出しましょう。