高いものだけがペルシャ絨毯ではない

高いものだけがペルシャ絨毯ではない

高いものだけがペルシャ絨毯ではない

[要1分]

よくお客様から「お金が有り余っていたら何を買いますか?」と尋ねられますが、私は「少ないお金で買うから楽しいのです」と答えることにしています。
これは負け惜しみなどではなく、正直な気持ちです。
限られた予算だから楽しい。
また真剣に作品を見るようになります。
どうしても欲しければ何とか金策する。
それで手に入れたときの喜びは形容し難いものがあります。
それが自分の分相応の世界だと思っています。

世界的富豪と呼ばれる人たちは、本当に楽しんで美術品を収集しているのでしょうか。
最近の贋作には専門家でも判断のつきにくいものもあるそうです。
そして、美術とはいったい何なのだろうかという素朴な疑問に繋がります。
昔、『フェイク』という映画がありましたが、究極のところ、贋作が本物に化け、見る人たちは皆、「素晴らしい」と賞賛する。
そうすると、いったい美とは何か、本物とは、価値とは何かという疑問が湧いてきて、考えさせられます。

最近は「売れるもの」や「売りやすいもの」ではなく、自分が一見して惚れ込んだものだけを仕入れるようにしています。
先日もドイツのブローカーから20世紀初頭のハムセの絨毯を購入しました。
イスファハン絨毯やタブリーズ絨毯のような豪華さはありませんが、素朴な中にも独特の光彩を放っていました。
入手することの難しさなら、それらよりも数段上でしょう。

超有名な工房の作品にあり得ないような値段を付けて悦に入っている絨毯屋がいますが、何が楽しいのだろうかと思います。
ローレックスの時計を付けてベンツに乗って、愛人を囲って……そんなお金があるのなら、素晴らしい作品を仕入れて、できるだけ安く販売してお客様に喜んでいただく方が絨毯商としては名誉なことです。

ペルシャ絨毯は確実に毎日を楽しいものに変え、人生を豊かにしてくれます。
それは本来、販売する側にしても購入する側にしても同じことです。
しかし、そこに他人の目が入ってしまうと、すべては違った方向に進み始めてしまいます。
人生が狂ってしまうことさえあります。
見栄とは実に恐ろしいものなのです。
向上心だけは決して忘れず、いま自分のできることを確実にやってゆく。
いきなり雲の上を見ても仕方ありません。

博物館にある作品を欲しがっても無理です。
サングスコ絨毯やポルトガル絨毯は大きな美術館にあってこそ、皆を楽しませることができるのです。
あなただけの美術品を見つけて至福の時を楽しんでください。
ペルシャ絨毯はお金や値段だけではありません。

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