ゴリー・ナミの作品
古代の壺や宝箱を写実的に描いたジル・ハキとよばれる作品。
ジル・ハキは「土の中」を意味し、遺跡から出土した品々を各所に配置したデザインをそうよびます。
タブリーズやカシュマールでよく用いられますが、ナミはタブリーズのドチ地区出身でのちにマシャドやカシュマールで活躍したモハンマド・アリー・アリプール(故人)らと並び、このデザインの作品で有名です。
ジル・ハキは動物文様と合わせて使われることが多く、本作にも壺や宝箱の間を縫うように鳥や鹿たちが配されています。
こうすることで静かになりがちなデザインに動きを与え、作品に生命力を吹き込むことに成功しているといえるでしょう。
ボーダーはいくつものパネルを連結させたナミならではのもので、各パネルの中にはアケメネス朝の始祖であるダリウス1世や彼の近衛兵、アレキサンダーとの戦いで戦死したアリオ・バルザンやペルシャ神話に登場する聖獣フマなどが描かれています。
上の作品と同様にジル・ハキ文様を用いて製作された一枚。
中央のカルトゥーシュ形のメダリオンには玉座に座るダリウス1世の姿が描かれており、それを取り巻くフィールドはサイケデリックな妖しさをもって見る者を惹きつけます。
ここに壺とともに描かれている鳥たちは長い尾を持つ鳳凰の姿をしていますが、おそらくペルシャ神話や『王書』(シャーナーメ)に登場する霊鳥シムルグでしょう。
シムルグはイラン北部のアルボルズ山脈に住む鳥の王で、犬の頭にライオンの脚、鷲の羽と孔雀の尾を持ち、象を掴めるほどに巨大であるとされます。
王書では、英雄サームの息子として生まれるも、生まれながらにして白髪であったために捨てられたザールを拾って育てたとされており、その羽根にはあらゆる傷を癒す力があったと記されています。
ボーダーはペルセポリスやニネべ(イラク)の遺跡のレリーフなどをパネルごとに配したデザイン。
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