モダン・ギャッベを購入する際に気をつけること

モダン・ギャッベを購入する際に気をつけること

モダン・ギャッベを購入する際に気をつけること

<[第 回]/p>

古代文明が発祥して以来、人類はあらゆる種類の敷物を考案し、生活に採り入れてきました。
時の経過と社会の発展に伴い、敷物は快適さをもたらすために使用されるだけでなく、徐々に芸術性や独創性を纏うようになり、やがて室内装飾の主要なアイテムの一つになり得ました。
今日、絨毯、キリム 、ジャジムなど、あらゆる種類のトライバルラグは、世界中で最も人気のある敷物の一つになっています。
モダン・ギャッベは、カシュガイやルリが長きに渡って受け継いできた伝統的なギャッベ(オールド・ギャッベ)を現代風に改変したものです。
この素朴な絨毯は、管理社会に疲れた現代人に癒しを与えるだけでなく、太古の暮らしへの憧憬と、自らの起源を探求する欲求をも掻き立てるのです。
とはいえギャッベという名は聞いてはいても、それについて詳しく知る人は、あまりいないのが現実でしょう。
残念ながらモダン・ギャッベを販売する業者の中には事実無根を並べ立て、高値にて売りつけようとする者もいます。
ここではモダン・ギャッベを購入する際に気をつけることを解説してゆきます。

1. モダン・ギャッベの偽物に気をつける
モダン・ギャッベはイラン産のウールを天然染料で染色した糸を用いて製作されています。
しかし、ギャッベと名のつく絨毯の中にはインド製のコピー品、いわゆるインド・ギャッベなるものがあります。
インド・ギャッベは機械紡ぎの毛糸を化学染料で染色してあるため、本物のモダン・ギャッベに見られる柔らかさとアブラシュ(色斑)がほとんどありません。
パイルはやや細くて短く、色は鮮やかで、本物が分厚く野暮ったい感じであるのに対し、薄くてすっきりとした印象です。
インド・ギャッベは手機織(てばたおり)という技法によって製作されるため、一結びずつ手でパイルを結ぶ本物のモダン・ギャッベよりも早く簡単に作ることができます。
そのため値段は安く、本物の半分以下です。
ただしその分、耐久性は低くなります。
インド・ギャッベは一見するとイラン製のモダン・ギャッベにそっくりなため、購入する際には注意が必要です。
インド以外でもトルコ、アフガニスタン、パキスタンなどの国の絨毯業者者が、モダン・ギャッベに似せた絨毯を製作しています。

2. ノット数はあまり関係ない
モダン・ギャッベの織りの密度は一般的なペルシャ絨毯よりも少ないですが、ギャッベとは本来そういうものなので、ノット数を気にする必要はありません。
これはモダン・ギャッベだけでなく、すべてのトライバルラグ(部族の絨毯)やビレッジラグ(農村部の絨毯)にいえることです。
それらとは逆にシティラグ(都市部の絨毯)ではノット数がとても重要視されます。
ペルシャ絨毯にはデザインに応じたノット数というものがあります。
至ってシンプルなデザインの絨毯の織りを細かくするのはあまり意味がありません。
モダン・ギャッベの中にはカシュクリ・ギャッベというノット数が多いものも存在しますが、これはつい最近になってから製作され始めたもので、そもそもギャッベという名称は「粗い」や「厚い」を意味するガバというペルシャ語に由来するものなのです。

3. モダン・ギャッベのデザインの選び方
かつてカシュガイやルリの女性たちは、デザインや計画にとらわれることなく、周囲からインスピレーションを得たり、気分や想像力に基づいて、さまざまなデザインのギャッベを織っていました。
通常、伝統的なギャベのほとんどには幾何学的なデザインが含まれています。
しかし、モダン・ギャッベの生産量の増大と多くのデザイナーの参入により、より現代的で多様なデザインがモダン・ギャッベに使用されるようになりました。
こうして製作されたモダン・ギャッベはあらゆる部屋にフィットし、美しさをもたらします。
ライオン、生命の木、ストラップ、ビレッジライフ、などは、モダン・ギャッベでは一般的なデザインです。
このようにモダン・ギャッベには様々なデザインがあるので、小さな家にはシンプルで優しいデザインを、広いスペースにはより複雑なデザインを使用するのが適しています。

 

4. 大きなサイズのギャッベを切り分けたものもある
モダン・ギャッベの中には大きなサイズのモダン・ギャッベをいくつかに切り分けてからエッジを取り付け、フリンジ処理を施したものがあります。
これらのモダン・ギャッベは比較的小さなサイズでシンプルなデザインのものに多く見られるようです。
なぜこのようなことが行われるかというと、完成までの時間を短縮するため。
複数の織手を並べて一気に織りあげ、そのあとで適当なサイズに切り分けてからエッジとフリンジの処理を施す方が、パイルを一例結んでからエッジに糸を巻き付け、またそれを繰り返すよりも早く出来るという訳です。
不自然に文様が途切れていたり、全体のデザインのバランスが悪かったりするものは、こうした手法を用いて製作された可能性が高いといえます。
このようなモダン・ギャッベはエッジが外れやすいので、選ばないようにしましょう。

5. ブランドに意味はない
モダン・ギャッベの中にはブランド名を付され、相場の何倍もの値段で販売されているものがあります。
しかし、いくらブランド名を付されようが、ギャッベはギャッベであることを忘れてはいけません。
前述したように、そもそもギャッベとは「粗い」「分厚い」を意味する粗雑で低品質な絨毯のことです。
換金性のあるメインラグとは異なり、普段使いに供される絨毯のことです。
それゆえ、その実用品としての美が「民芸」として評価された訳で、いわゆる美術工芸品としての都市部のペルシャ絨毯の対極にあるものといえます。
言うなれば、ギャッベほどブランドと無縁なものはないのです。
そんなギャッベがブランド名を付されカシャーンやナインで製作されたペルシャ絨毯よりも高値で販売されている……これはどう考えても異常です。
日本の絨毯屋が日本の倉庫で押したスタンプなどに何らの価値もありません。
ギャッベはギャッベ。
そのことを絶対に忘れないでください。

6. 信頼できる専門店で購入する
遊牧民が移動生活をしながら、飼育している羊の毛を刈って糸に紡いで、自分たちで染料のもとになる植物を集めてきて染色して、頭の中でデザインを描きながら、家族のために願いを込めて製作する……といとた説明をする店があります。
しかし、それは数十年以上も昔の話で、現代のギャッベは、村に住む定住民が家の中で、絨毯商が用意した糸を使って、同じく絨毯商が用意した意匠図、あるいは絨毯商の要望に従って、現金収入を得るために製作する……というのが実際です。
遊牧民云々と説明するような店からは絶対に買わないことです。
ありもしないことを並べたてて客の購買意欲を煽るのは「騙し」の商法、つまり詐欺的商法にほかなりません。
詐欺的商法を行うような店がまともでないことは明らかです。
そんな店で購入してもアフターケアさえ期待できないでしょう。

カジュアルな印象を持つモダン・ギャッベは、現代的なインテリアにはよく合いますが、ビクトリアンやジョージアンなどの古典的なインテリアには合いません。
モダン・ギャッベを購入する際には、まずインテリアのスタイルを明確にする必要があります。
その上でモダン・ギャッベを選べば、きっと素敵な部屋が出来上がることでしょう。

お問い合わせ・来店予約

お問合せ・来店予約は
お電話もしくはメールフォームにてお受けしています。
お気軽にご連絡ください。