ラグ・ベルトとペルシャ絨毯

ラグ・ベルトとペルシャ絨毯

ラグ・ベルトとペルシャ絨毯

[第 話]

ラグ・ベルトという言葉を耳にされたことがあるでしょうか?
「ああ、ペルシャ絨毯の裏に付いているアレね」とおっしゃる方がいるかもしれません。
それも言ってみればラグ・ベルトなのですが、ここで紹介するラグ・ベルトはまったく別のものです。

カーペット・ベルトとも呼ばれるラグ・ベルトは、モロッコから北アフリカ、西アジア、中央アジア、南アジアを経由して中国までに至る、手織絨毯を産出する国々が集まる地域を指します。
ベルトのように横に伸びていることからその名で呼ばれますが、アフリカ大陸とユーラシア大陸を縦断する、とてつもなく広大な地域です。
シルクロードとの関係性が説かれることが多いのですが、シルクロードが開通したのは紀元前2世紀のことなので、手織絨毯の歴史を考えると、それより遥か以前に形成されていた可能性も捨てきれません。

この地域には、モロッコ、チュニジア、エジプト、トルコ、アルメニア、アゼルバイジャン、カザフスタン、イラン、トルクメニスタン 、アフガニスタン、パキスタン、インド、ネパール、ウズベキスタン、中国などの国々が含まれまており、これらの国々で製作された手織絨毯は一般にオリエント絨毯あるいはオリエンタルラグと呼ばれます。
これらの国の多くは、今日イスラム世界と呼ばれる地域にあるため、オリエント絨毯は「イスラムカーペット」と呼ばれることもあります。
中でもイラン製の手織絨毯はペルシャ絨毯として広く知られていることは、いまさら言うまでもないでしょう。

一般にオリエント絨毯は、パイル織りの手織絨毯をいいますが、綴織のキリム等を含める場合もあります。
国々による違いについてはキリがないのでここでは述べませんが、数多と存在するオリエント絨毯の中で、ペルシャ絨毯がずば抜けて優れていることだけは間違いありません。
とはいえ、私たちがイラン以外の国々で製作された絨毯を蔑むものではないことは理解しておいてください。

弊社はペルシャ絨毯専門商社ですが、秘蔵のコレクションとして18世紀に製作されたギョルデス産のトルコ絨毯や、ソ連侵攻時に製作された戦車をヘリコプターなどを織り出したアフガニスタンのいわゆる「ウォー・ラグ」(当時のもので、最近製作された土産用ではありません)なども所有しています。
ペルシャ絨毯はラグ・ベルトで生産される手織絨毯の頂点に立つものではありますが、手織絨毯はいろいろなものがあるからこそ面白いのです。

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