ペルシャ絨毯にまつわる嘘のような本当の話

ペルシャ絨毯にまつわる嘘のような本当の話

ペルシャ絨毯にまつわる嘘のような本当の話

[第 話]

この商売を長くやっていると、いろいろと面白いことを経験するものです。
個人情報の関係で表に出せない話もたくさんあるのですが、とりあえず幾つかを紹介します。
嘘のようですが、すべて実際にあったことです。
たまには肩の力を抜いて気楽に読んでみてください。

1. 大学受験に一役買ったペルシャ絨毯

ある日、以前リビング用にイスファハン産のペルシャ絨毯をお買い求めいただいたお客様から突然、電話がかかってきました。 「出来るだけ早く何枚か絨毯を持ってきて欲しい」とのこと。
早速ご希望のサイズの絨毯を10枚ほど選んで、ご自宅に伺いました。
リビングに通されると敷いてあるはずのイスファハン絨毯がありません。
どうしたのかと思っていると、奥様は息子さんの部屋に敷いてあるとおっしゃいます。
息子さんは大学受験を来年に控えていて、勉強に精を出さなければならない時期にきているのに勉強机に向かおうともしない。
リビングでゲームばかりして、このままでは受験に失敗するのは明白。
何とか机に向かってもらおうと考えに考えた末、リビングにあったイスファハン絨毯を勉強机の下に敷いてみたそうです。
すると、途端に机に向かって勉強するようになったとのことでした。
イスファハン絨毯はリビングに使いたいので、息子さんには好きな絨毯を選ばせたいようです。
息子さんにお持ちしたすべて絨毯の色柄と足触りを確かめていただいた結果、ラバー産のウール絨毯を選んでいただきました。
それから何日かして奥様から電話があり、「毎日、夜遅くまで机に向かって勉強しています。信じられない!」とおっしゃっていました。
それから一年が経ち、息子さんは何と東大に合格されました。

2. ペルシャ絨毯を飾るために新築された家

千葉の女医のお客様に6平米のクム・シルクをお買上いただきました。
ご自宅に何枚かお持ちしたのですが、先生とお母様が一目で気に入られたのがモハンマディ工房で製作されたパネル・パターンのシルク絨毯です。
ババイとモハンマディは最高級のパネル・パターンのシルク絨毯を製作している工房でした。
2階にあるリビングに敷かせていただき、無事に納品が完了しました。
それから2年ほどが経った頃でしょうか、お母様が店に見えられ、「あの絨毯があまりにも素晴らしいので、絨毯を飾れるように家を新築することになりました」とおっしゃいます。
飾るといっても6平米もあります。
しかも、一方柄です。
これには本当に驚きました。
お母様がおっしゃるには、どこからでも絨毯が見えるように1階から2階の天井までを大きな吹き抜けにして、そこに絨毯を吊下げられるように建築家の先生に設計してもらったそうです。
「絨毯に合わせて家を建てる人なんかいないですよね」とお母様は笑っておられました。

3. 天皇陛下にお上がりいただくペルシャ絨毯

ある日、慌てた様子で初老の男性の方がいらっしゃいました。
「すぐに絨毯が必要なので、予算内で一番よいものを選んでほしい」とおっしゃります。
6平米がご希望のようでしたので、不思議に思いつつもタブリーズ産のペルシャ絨毯をお勧めしました。
そのタブリーズ絨毯は40ラジながらもとてもよく出来ていて、見た目は50ラジの作品と変わらないほどでした。
絨毯を見ながらお客様は「私は町役場の職員なのですが、実はわが町に天皇陛下が行幸されることになりました。準備を終えていま一度見回したところ、いま敷いてある絨毯は陛下にお上がりいただくには見窄らしすぎるとなったのです。そこで急遽、東京まで買いに来ました」とおっしゃりました。
お持ち帰りをご希望でしたので、すぐに梱包したのですが、6平米はのタブリーズ絨毯は20キロ近くはあります。
「大丈夫ですか?」と問うたのですが、お客様は何とか間に合ったと安堵した様子で、重そうにしながらも手に持って帰られました。

4. 更紗がペルシャ絨毯に化けた話

ペルシャ更紗を探しているというお客様がお見えになりました。
更紗は在庫しているときもあるのですが、そのときはたまたま在庫がありませんでした。
そのままお帰りいただくのも申し訳ないと思い、「更紗柄の絨毯があるので、ついでにご覧になりますか?」と申しあげました。
マシャド産のウール絨毯でしたが、更紗をそのままデザインしたようなとても珍しい作品でした。
お客様は「せっかくなので……」と言いつつご覧になったのですが、その絨毯がえらく気に入ったようで、そのままお買上をいただきました。
更紗に比べるとサイズについては数倍、値段に至っては200倍以上になってしまいましたが、お客様は「更紗を買いに来たのに……でも、これもご縁ですよね」と喜んでおられました。

5. テヘランで竜巻に巻き込まれた!

これは直接ペルシャ絨毯に関係する話ではありませんが、イスファハンで買付を済ませたのち、テヘランへ戻ったときのことです。
ホテルにチェックインした後、お腹が空いたので近くのファーストフード店へ行き、ファラーフェル・バー・パニール(ひよこ豆のコロッケをパンに挟んだもの)を買ってホテルの部屋で食べていました。
ふと窓から外を見ると、つい先ほどまで晴れていたのに空が急に灰色になっています。
何だろう? と思った瞬間、開けてあった窓から猛烈な突風が吹きこんできました。
窓を閉めようと近づくのですが、突風に押されて前に進むことすらできません。
やっとの思いで壁まで辿り着き、窓を閉めた瞬間、ドドドドッという凄まじい音がしました。
外は真っ暗で、ガガーン、ドシャーンと何かがホテルの外壁にぶつかる音がしています。
訳の分からぬままその場にうずくまっていると10分ほどで音が止みました。 そのあとすぐにイスファハンのスタッフから電話がかかってきて「大丈夫だったか!?」と慌てた様子で聞いてきます。
何があったのかと尋ねると、テヘラン市内で竜巻が発生したとのこと。
「ちょうどいま直撃されたところだよ、ホテルに戻ったばかりだったので助かった」と言うとスタッフも安堵していました。
しかし、竜巻というのは恐ろしいですね……。
ホテルに戻るのが、あと10分遅れていればと考えると、いまでもゾッとします。

とりあえず今回はここまでにしておきましょう。
まだまだ面白い話はあるので、また別の機会に紹介します。
それまで、どうぞお楽しみに!
(それにしても、竜巻は怖かったです……)

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