ペルシャ絨毯の輸出はなぜ減少したのか?
[第 話]
テヘラン商工会議所の経済調査副会頭は、「手織絨毯産業の現状を考察する」と題した報告書の中で、世界におけるペルシャ絨毯の状況、イランの立場、絨毯市場における課題を検討しています。
世界貿易機関の統計によると2011年から2022年までの間、手織絨毯の世界貿易市場には150 以上の輸出国があったとされます。
2022年には、インドが3億1000万ドルで手織絨毯輸出総額の30.3%、中国が9310万ドルで9.1%、エジプトが8980万ドルで8.7%でした。
その11年間、主要3か国の全品目における輸出総額の8.8% が手織絨毯でした。
これらの国に次いで8.3%のネパール、7.7%のパキスタン、7.4%のイランの順となっており、世界の手織絨毯の輸出量の 71.5% が以上の6か国によって占められています。
2011年にはイランが世界市場における手織絨毯輸出量の25.5%を占め、第1位でした。
イランのシェアは、それから2022年までの間に7.4%にまで減少しました。
それどころか、インド、中国、ネパール、パキスタンなど、イランの競合国のシェアが増加しています。
インドは2022年までに30.3%までシェアを拡大しました。
とはいえインドの輸出量に大きな変化はなく、シェアが拡大した理由はイランの輸出の大幅な減少にあります。
税関の統計によると、ペルシャ絨毯の輸出額は、2011年の4億2730万ドルから2022年には5070万ドルまで減少。
年間平均伸び率はマイナス19%になりました。
これに基づくと、非原油輸出総額に占めるペルシャ絨毯輸出の割合は、2011年の1.3%から2022年には0.09%にまで減少しています。
テヘラン商工会議所の報告書では、イランの手織絨毯の世界的シェアが減少した大きな理由は経済不況ではなく、新たな製造業者や世界的に広告戦略を繰り広げる企業の出現、あるいは一部の競合国の低コストによる生産能力であるとしています。
現在、インド、パキスタン、ネパール、中国はイランに比べて生産面での優位性を持っています。
この報告書はまた、絨毯業界の主な課題を、素材の供給、生産と流通、マーケティングと販売の3つの軸から検証しています。
素材の供給については、紡績や染色などのコストを低減し、海外のディーラーに安価な素材を供給することが絨毯業界における課題の一つとなっています。
また、生産と流通の分野における絨毯業界の課題としては、生産におけるイレギュラーな環境の改善、この業界で働く労働者の権利および保障への配慮の欠如、集中管理システムの欠如、研修会の開催の必要性、消費者の趣向やニーズへの考察の欠如、市場情報の収集力の欠如、絨毯業者に対する政府の物的・精神的支援の欠如などが挙げられています。
マーケティング、販売では、外国為替の手法、時代遅れなマーケティング、時代遅れな広告と海外市場への広告手段の非適合、絨毯の梱包と配送の基準への非準拠などの課題に加え、政治問題と経済制裁にも言及しています。
イラン国立カーペットセンターのファラスナズ・ラフィ所長は、ペルシャ絨毯の輸出の現状について経済制裁によるイランへの送金規制により、ペルシャ絨毯の輸出量は大幅に減少し、密輸出が増加していると言います。
ペルシャ絨毯の輸出はかつて年間4億ドルから5億ドルであったとし、「アメリカはペルシャ絨毯の輸出を速やかに禁止した。なぜならイランには200万人が絨毯産業に従事しており、その家族をも含めると800万人もの人々への影響があることを知っていたからである」と述べました。
多くのイラン人たちがペルシャ絨毯に関わる仕事で生計を立てています。
米国はペルシャ絨毯の輸出に制限を課すことによって、絨毯産業関係者の1割の不満を噴出させようとしたと明言します。
同氏は更に「ペルシャ絨毯は(高価な)工芸品であり、輸入したすべての絨毯を一度に売ることはできない。なぜならペルシャ絨毯は自分の顧客を見つけるために店舗に長期間在庫しなければならない可能性があるからだ」と付け加えました。
この製品には国際送金が必要であるため、輸出に深刻な問題が生じており、「現在、この問題を解決するために、輸出業者は郵便、旅客輸送、その他いくつかの方法で違法にペルシャ絨毯を国外に持ち出している」としています。
ラフィ氏は、農業開発省が国内の動物の羊毛の品質向上に注意を払っていないことも指摘します。
「この省には家畜繁殖センターがあり、肉と乳の品質と摂取作業の向上を目指しているが、実際にはそうではない」。
つまり、農業開発省は羊毛の生産に注目していないとし、「かつてはイランの羊の毛の70%が白色だったが、優生学が適用されていないため、この数字は50%となり、羊毛の生産量が減少している」ことを明らかにしました。
絨毯織りには適さない色付きの羊が増えてきており、「国内の一部の州では、羊毛を加工する工房や工場がないため、羊毛が焼却されている」と危機をあらわにします。
羊毛の育種が行われれば、牧場主に収入がもたらされるのは確かでしょう。
同氏は、「インドとパキスタンは手織り絨毯の生産で進歩しているが、ペルシャ絨毯に取って代わることはまだできていない。しかし、これらの国も進歩しており、ペルシャ絨毯の輸出は問題に直面する可能性がある」と語ります。
いまの状況が続けば近い将来、それが現実となってしまうかもしれません。