ペルシャ絨毯の輸出が24年ぶりの低水準に
イランを代表する非原油製品であるペルシャ絨毯の輸出が、24年ぶりの低水準となっています。
イラン税関の公式報告によると、2022年4月から2023年2月までのペルシャ絨毯の輸出量は3800トンから2900トンに減少。
僅か1年間で24%も減少しました。
しかし、こうした現象はいまに始まったことではありません。
ペルシャ絨毯は1994年にイランに20億ドル以上の収益をもたらしましたが、2019年には6900万ドル、2020年の第2四半期には僅か200万ドルでした。
国際物流の問題、生産コストの上昇、コロナ禍など、いくつかの要因がペルシャ絨毯の輸出量の大幅な減少に繋がっています。
経済制裁はイラン地域産業に致命的な打撃を与えました。
イラン国立絨毯センターのファイサル・マルダシ氏は地元メディアの取材に対し、「インド、中国、アフガニスタン、パキスタン、トルコの競合国がペルシャ絨毯のデザインを模倣して世界の絨毯市場に参入している」と語ります。
物価高により購買力が急激に低下し、またペルシャ絨毯の価格も高騰したため、多くの人たちがイラン製ではなくアフガニスタン製の手織絨毯を購入しています。
絨毯作家兼デザイナーであり、イラン絨毯科学協会の常任会員でもあるモハンマド ・サミミ氏は「これは当局の怠慢によるものだ」と言います。
1986年以降の国民議会の記録を見ると、絨毯産業に関する事案が一度も議題に上っていないことがわかります。
産業振興を企図する法案は提出されておらず、何らの措置も講じられてないのです。
これでは絨毯産業の発展は見込まれません。
ペルシャ絨毯の時代は、もはや過ぎ去ったかのようです。
以前は700万人以上いた織工は、いまでは250万人にまで減少しています。
これは、主に家庭内で行われる絨毯製作のスタイルによります。
景気の低迷によって消費が落ち込むと当然の事ながら生産は縮小します。
製造業関連の内職の仕事が増える訳もなく、景気が底を打って上向くまでは内職の仕事は減少や工賃の低下は避けられません。
仕事がなくなった時の保障が何もない請負契約は不安定この上なく、安い賃金で働いてきても仕事がなくなったらお払い箱になるだけです。
これに、いわゆる若者離れが追い討ちをかけています。
若者離れが進む原因には、古くからの慣習となっている労働環境が残る絨毯産業が、現在の若者が希望する就業条件と合わないということが考えられます。
これは「きつい・汚い・危険」の、いわゆる3K産業にも共通していえることです。
サミミ氏は続けます、「これまでペルシャ絨毯が芸術的あるいは文化的な価値を認められてきたのは、この業界で働く人々の意識あってのものだ。仕事に対する向上心の育成や忍耐力の強化は、個人の意思に従わなければならない。何よりも重要なことは女性たちがこの産業を支えていることだ。女性社会への理解なくして絨毯産業を発展させることはできないだろう」。