ペルシャ絨毯が再び人気に

ペルシャ絨毯が再び人気に

ペルシャ絨毯が再び人気に

[第 話]

いまのイランの若者たちは、ペルシャ絨毯を織るという仕事に関心をなくしつつあります。
何ヶ月もの間、織機の前でパイルを結ぶのは単調で根気がいるとともに、豊富な経験と技術を必要とされるからです。
こうした事情により労働力が不足し、織工の賃金が上がり始めています。
人件費は製作コストに関わる最大の要因であるため、過去10年間でペルシャ絨毯の価格は大幅に上昇しました。

ペルシャ絨毯の中には1平米あたり5000ドルを超えるものもあります。
上を見ればキリがないものの、ペルシャ絨毯は決して安くはありません。
しかし、イランとヨーロッパ諸国の賃金を比較すると、ペルシャ絨毯の価格はまだまだ「安い」といえるでしょう。
高品質の手織絨毯で知られる国は他にアフガニスタン、パキスタン、ネパール、インドなどがありますが、これらの国々の賃金はイランよりもかなり安く、そのため安価なペルシャ絨毯のコピー品の需要が発生する原因になっています。

かつてペルシャ絨毯はステータスシンボルとして誇らしげに敷かれていました。
数十年前までは、ペルシャ絨毯を購入できるのは富裕層に限られていたのです。
当時のイランには機械織絨毯を生産する工場は存在せず、ペルシャ絨毯はまさに唯一無二のものでした。
ペルシャ絨毯は庶民にとっての憧れであり、それを所有することこそ成功者の証であったのです。
ペルシャ絨毯は単なる敷物という概念を超越して、見えざる価値を提供し続けてきました。

カジャール朝第 代君主であったナセル・ウッディン・シャーは放蕩者として有名でしたが、彼がペルシャ絨毯の名声を高めたといわれます。
ナセル・ウッディン・シャーは贅沢三昧な生活を送り、最高級のペルシャ絨毯を見せびらかしました。
そうした話が伝わるにつれ、ペルシャ絨毯は富と権力を象徴するものとして、人気が急上昇したとされます。
しかし1900年代半ばには、第二次世界大戦と、戦後の復興に伴う大量生産・大量消費の生活様式が確立されたため、ペルシャ絨毯の需要は大幅に減少しました。

いま、ペルシャ絨毯の人気が再び高まっています。
その優れたデザインだけでなく、天然素材や天然染料(化学染料を使用しているものもあります)を使用していることも理由です。
イランにおける賃金と世界的な需要が急上昇しているため、大幅な値上がりが予想されており、さらに経済制裁などの政治的問題も価格の上昇に繋がる可能性があります。
最初に述べたように、労働力の不足がそれに拍車をかけているのが現状です。
現在のイランは一昔前のイランではありません。

こうした状況の中にあって、なぜペルシャ絨毯が再び人気を集めているのでしょうか。
現代のインテリアはシンプルで、ニュートラルカラーを用いてデザインされています。
このすっきりとしたデザインには、息を呑むような色のペルシャ絨毯を採り入れることでメリハリをつけることが可能となります。
またペルシャ絨毯は化学繊維を一切使用せず、天然素材のみを用いて製作されています。
今日、こうした素材は健康面や精神面において有用なものとして高く評価されているのです。
さらに、各絨毯は独自の個性を有しており、同じ色柄の作品はほとんどありません。
個性が評価される時代に、これほど重宝なものはないと言えます。

ペルシャ絨毯の価格を押し上げる要因はいくつもあります。
需要が低迷した数年間に蓄積された大量の在庫がありますが、これらの在庫はすぐに枯渇します。
なぜなら、1枚のペルシャ絨毯を完成させるには長い月日が必要とされるからです。
よって、ひとたび労働力が減少すると、高品質のペルシャ絨毯の供給量をすぐに増やすことは極めて困難となってしまうのです。
ペルシャ絨毯の人気が高まることは私たち絨毯商にとっては嬉しいことですが、品質の低下だけは避けてもらわねばなりません。

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