ペルシャ絨毯鑑定士なる資格について
「手持ちのペルシャ絨毯を売りたいので、鑑定書を発行してくれるところを知りたい」とのお問い合わせをいただきました。
お話によれば『絨毯鑑定士』なる人物がいて鑑定書を発行してくれるらしいのですが……。
絨毯鑑定士というような資格は日本はもちろん、イランにも存在しません。
鑑定書が効力を持つのは社会的に権威を認められた団体なり個人なりがその名のもとに発行するからであって、鑑定士を「自称」するそこら辺りの絨毯屋が書いたところで、そんなものはただの紙切れ。
ただの紙切れを付けたとしても、商品価値が上がることなどないでしょう。
もし絨毯鑑定士なる資格が本当に存在するなら、資格証をぜひ見せてもらいたいものです。
鑑定書については、2000年頃にイラン政府がペルシャ絨毯の原産地証明書の発行を計画したことがあります。
しかし、これは実施されませんでした。
現在、わが国で流通している鑑定書や証明書の類は絨毯屋が勝手に作成したもので、何ら信用に足るものではありません。
絨毯の鑑定書についてトルコ在住の日本人の方が書いておられる記事を見つけたので参考までに引用しておきます。
「近年、いままであまりにも絨毯詐欺を繰り返したせいか、トルコの絨毯は全く売れません。なのでなんとか購入してもらうために最近では急に鑑定書や保証書みたいな物をつけだしましたが、外国人が購入するのにその鑑定書が英語じゃない時点でおかしいです。仮に鑑定書がホンモノだとしても何を鑑定してるのか? 品質、工程、販売元等々多岐に渡る鑑定書をこ色んなところが発行していますが、仮に品質が保証されても作っている工場が違法、工程が保証されても販売元が詐欺のオンパレードでブラックリストに掲載される寸前等々、言い出せばいくらでも出てきます」
(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14143761619)。
トルコほど酷くはないにしても、日本でも近いようなことが行われているのは紛れもない事実なのです。
絵画や彫刻などの美術品の世界では鑑定書の偽物があることはよく知られていることです。
例えば日本画の巨匠であった横山大観の作品には、所定の鑑定人により軸棒の裏に登録番号と割印が押されます。
したがって鑑定書などは存在しないのですが、時折、鑑定書が付いた大観の作品が売りに出されることがあります。
もちろん、これらのすべてが偽物です。
また、奥村土牛の作品には額の裏に赤坂の観照堂画廊のシールが貼られているのですが、このシールの偽物まであります。
これらは鑑定書があっても本物とは限らないという、よい例といえるでしょう。
事実、これまで絨毯屋が作成した鑑定書が付いた有名工房の絨毯の偽物をいくつも見てきました。
唯一、信用できるのは絨毯作家自らが発行した証明書です。
セーラフィアンやダルダシュティなどの超有名工房の中には、作品を購入した際に証明書を発行してくれるところもあります。