ペルシャ絨毯の生産量が減少しているもう一つの理由
最新設備を持つチャハルマハル・バクチアリ州の紡績工場が、いま深刻な問題に直面しています。
チャハルマハル・バクティアリ州は国内の畜産の中心地の一つですが、この工場では原材料となるウールの供給が滞っているのです。
ウールの紡績は過去から現在に至るまで農村部や遊牧民の女性の仕事の一つであるとみなされており、チャハルマハル・バクティアリ州は長い間イランの畜産業の中心地の一つでした。
農村部や遊牧民の女性たちは羊のウールを糸に変え、絨毯、キリム、ジャジム、ホルジン、テントなど様々な用途に使用してきたのです。
しかし時が経つにつれ、女性たちが受け継いできた紡績の技術は忘れ去られつつあります。
チャハルマハル・バクティアリ州がイランの畜産業の中心地の一つであることを考えると、ウールの生産性を活用すれば、失業率が高いこの州に高い雇用をもたらすことができます。
しかし所轄官庁である農業開発省は、ほとんど関心を払っていません。
これが実現すれば、間違いなく州内の産業と経済を活性化させることができるにもかかわらずです。
1キログラムのウールの有効率は約50パーセントで、1キログラムのウールは洗浄後には半分しか使用できません。
また、従来の洗浄方法ではウール1キログラムあたり、少なくとも10リットルの水が必要となります。
動物の飼料や品種などのいくつかの要因がウールの品質に影響を与えますが、一部の州では低品質なウールが増えているのが現状です。
工場長であるモスタファ・ザンディプール氏は紡績工場が原料供給の問題に直面していることを述べ、「チャハルマハル・バクチアリ州の最も大きな可能性の一つは高品質の繊維を含むウールの生産力の向上であり、これに関わる問題はクリアされている」と語りました。
さらに同氏は「2002年以来、農業開発省や関連機関との交渉が行われてきたが、これらの当局者はアドバイスを行うだけで、この工場に原材料を供給するための実効的な施作は講じなかった」と付け加えました。
この工場の生産能力は2000トンもあり、牧場主からウールを購入することにより、州内の牧場主が収益を上げるのにも大きく役立つのです。
ザンディプール氏によると、最新鋭の紡績機を農業開発省の施設に設置する準備ができていたにもかかわらず、同省はこの施設を貸与することを許可しなかったといいます。
過去18年間、工場は原材料の供給に関わる問題を抱えていますが、その問題はスローガンやイデオロギーでは解決できないことを強調し、「この工場に必要なウールを畜産農家からいくらでも買う用意がある」と述べました。
現在、多くの紡績工場がウールをニュージーランドから輸入しています。
しかし、ニュージーランド・ウールは一般的なペルシャ絨毯には使用されず、高級品にのみ使用されます。
チャハルマハル・バクチアリ州の産業鉱業貿易局の産業副局長、モハンマド・カゼム・モンザビ氏も、この工場が原材料の供給において多くの問題に直面していることを認めています。
彼は長年にわたる貸付の抵当として、ウールを銀行が所有していることを明かしました。
同氏は、この工場の原材料供給の問題は促進本部の会議で取り上げられたとし、「この工場の管理者は生産サイクルを以前の状態に戻そうとしている。チャハルマハル・バクチアリ州にある遊牧民の宿営地に集積所を造り、ここでウールを機械で選別して工場に送ることができる」と続けました。
同氏はさらに、「移動式の毛刈機を使えば、3人ずつ約12のグループを雇用することができ、紡績、染色などを含む毛糸の生産チェーンが完成して村民の雇用を生み出すことができる」と付け加えました。
しかし、農業開発省のチャハルマハル・バクチアリ州畜産改善担当副部長であるサム・マルダニ氏は、工場への原料供給に問題はないと言います。
同氏は、紡績工場は畜産組合と提携することで原材料を確保できると主張しました。
国民と官僚の間で現状認識が大きく乖離しているのはイランでも同じようです。
当然、利権も絡んでいるのでしょう。
絨毯産業に関わる多くの人が農業開発省への不満を口にします。
経済制裁によりペルシャ絨毯の生産量が減少しているのは事実ですが、もう一つの理由が農業開発省の無策にあるのは間違いないでしょう。