ロボット、密輸……競合国の脅威に晒されるペルシャ絨毯
ペルシャ絨毯はイランの最も重要な手工芸品の 一つであり、国内総生産の増加、外貨の獲得、非原油輸出の拡大に重要な役割を果たしてきました。
しかし残念なことに、いくつかの問題や障害によりペルシャ絨毯の輸出輸出は過去1年半で最低水準となり、販売業者は破産寸前にまで追い込まれています。
専門家らは、この最も重要な原因の一つは、ペルシャ絨毯と他の競合国の手織絨毯との価格差が大きいことであると考えています。
実際のところ、ペルシャ絨毯は他国の手織絨毯よりも遥かに高い価格で世界市場に流通しています。
これは多くの場合、輸入される素材のコストが高価であること、そして何よりも競合国の労働力が安いことなどによるものです。
為替レートの上昇により素材の購入価格が上昇し、インフレにより織職人の賃金も上昇しました。
しかし、輸出減少の理由は価格の上昇だけではありません。
イランを取り巻く国際情勢と現政権の外交政策により、イラン製品の多くは輸出の扉を閉ざされています。
経済制裁により輸出業者の活動の場が狭められ、外国市場にも参入し難いのが実情です。
この点において、イランへの国際送金が困難な状況、通貨の両替に関わる煩雑な法律、輸送コストの上昇、需要の減少などが、ペルシャ絨毯の購入を見送らせているのです。
ペルシャ絨毯は、いまだに世界中で需要があります。
しかしながら、ペルシャ絨毯に使用される素材の供給は流動的で、価格と品質の両面において、ペルシャ絨毯の生産者の間を混乱させています。
これについてテヘランのペルシャ絨毯販売者組合の組合長であるマスード・セフェルザド氏は、こうした事情を受け、世界中のほとんどの国で機械織絨毯の需要が高まっていることを指摘します。
ペルシャ絨毯の主な買手である欧州諸国での有効な宣伝の欠如が輸出減少の原因であるとし、「有効な宣伝とマーケティングの欠如により、我々は欧州市場の重要をほぼ失っている」と述べました。
彼は有効な宣伝が波状的になされるべきだと強く感じています。
同氏はさらに、「世界のほとんどの国で機械製絨毯の需要が高まっているのは、インドやパキスタンでは絨毯を織る際にロボットが使用されているためだ」と付け加えました。
インドではロボットにより絨毯が製作されています。
ロボットが人間に代わって結び目を作り、製作期間を短縮しているのです。
セペルザド氏は、イランの絨毯産業が抱えるもう一つの問題は、インドとパキスタンの絨毯業者によるペルシャ絨毯のデザインのコピーであるとし、「ペルシャ絨毯のデザインと色をコピーした絨毯は、本物の半額で販売されている」と言います。
インドではタブリーズ産やビジャー産のヘラティ・パターンの絨毯とそっくりな絨毯が製作されており、これらは日本にも輸入されて、百貨店や家具店などで(もちろんインド製として)販売されています。
実はインドでコピーされているのは、それらだけではありません。
イラン全土のあらゆる産地の、あらゆるデザインの絨毯がコピーされており、中にはアンティークやトライバルラグのコピー品もあります。
ロボットの登場によりインドの生産者は、手織に近いクォリティの絨毯を数千メートル生産できるようになったのです。
セペルザド氏は続けて、「トルクメン絨毯など一部の絨毯は、アフガニスタン国境からイラン国内に密輸されている」と述べました。
アフガニスタンの絨毯は低価格であるため、イランの絨毯業者は価格では勝負できません。
最近では、どう見てもアフガニスタン製と思われるトルクメン絨毯やバルーチ絨毯が、日本においてもイラン製として販売されるようになっています。
四方を海に囲まれた日本では理解し難いことかもしれませんが、アフガニスタンやパキスタンと長い国境を接するイランでは、陸路による密輸はそれほど難しいことではないのです。
事実、アフガニスタンやパキスタンの麻薬密売業者とイラン国境警備隊との「いたちごっこ」は、止まることを知りません。
セペルザド氏は、絨毯業界全体がペルシャ絨毯の生産に関わるインフラを拡大するために必要な措置を講じるべきであることを強調します。
最も重要なのは、絨毯産業に従事する人々の保険のシステムに関するものです。
イラン国立カーペットセンターは現在までに様々な措置を講じてきましたが、これまでのところ目に見える成果は得られていません。