アンティーク・ペルシャ絨毯の雄、セラピとは?

アンティーク・ペルシャ絨毯の雄、セラピとは?

アンティーク・ペルシャ絨毯の雄、セラピとは?

[第 話]

セラピ絨毯はイラン北西部、アゼルバイジャンの険しい山々に囲まれた海抜1890メートルの高地で織られていた、ヘリズ・スタイルのペルシャ絨毯です。
この地域の他の絨毯よりも細かい結び目と、大きくゆったりと配置されたデザインが特徴で、ホワイト ハウスを含む初期のアメリカの州や連邦の庁舎に敷かれていたことでも知られています。

セラピ絨毯はイラン北西部のペルシャ絨毯の中で最も豪華なものでした。
しかし、1900年以降は、織りが粗くデザインが複雑なヘリズ絨毯が輸出用に好まれたため、セラピ絨毯はほとんど見られなくなります。
セラピ絨毯は、市場に出すために織手によって50キロ離れたセラブまで運ばれなければなりませんでした。
セラピは地名でも部族名でもありません。
「サラブの」という意味の「サラブ・イ」から派生した用語です。

19世紀のセラピ絨毯は、いくつかの絨毯産地から借用したデザインを組み合わせて製作されていました。
大胆な幾何学模様は、おそらくアラス川の北にあるコーカサスの部族のものです。
全体のバランスと中央のメダリオンは西のタブリーズの優雅な宮廷風デザインの影響を受けたものでしょう。
セラピ絨毯の大半は、4つのコーナーと、息を呑むような色彩の大きなメダリオンによって高貴な雰囲気を醸し出しています。
セラピ絨毯には、時折、大胆な総文様も採用されました。

1800年代の古いセラピ絨毯は、家族レベルで織られたか小さな工房で織られています。
複数の織手が何ヶ月から何年もかけて1枚の作品を完成させました。
織手はほぼ女性でしたが、彼女らは優秀な職人であり、織りながらデザインを改めて独創的な作品を完成させたのです。
一般的に、工房で織られるセラピ絨毯は細かく織り込まれておりフォーマルな印象ですが、家庭で織られるセラピ絨毯は、より素朴で抽象的なデザインです。

アゼルバイジャンのウールは、この土地の遊牧民であるシャーサバンが高山の牧草地で飼育した、光沢があり耐久性の高いカラクル種の羊から刈り取られたものです。
染職人は、絹のような極上のウールを、柔らかな色合いや落ち着いた色合いに染めあげました。
これらの色はもちろん、様々な天然染料から得られています。
赤色から煉瓦色までの赤系の色は茜の根から、空色から濃紺色までの青系の色調は藍から、金色や黄色はカモミールやその他の植物から生まれました。

織手は、染色も漂白もしていないウールを広い面積で使用し、周囲の様々な色とのドラマチックなコントラストを生み出したのです。
現在ではほとんど見られない19世紀前半に織られた初期のセラピ絨毯は、最もシンプルでデザインや色の組み合わせも大胆です。 中には、小さな絨毯のデザインをそのまま拡大したかのような粗野なものもあります。
これら初期の作品は、刺激的なデザインと調和のとれた色の組み合わせにより、驚くべき芸術性を持っています。

19世紀の第3四半期に織られたセラピ絨毯は、とても広々としたデザインと、サーモン、ベージュ、カーキ、ターコイズ、カーネリアン、テラコッタが豊富に含まれたユニークな色彩を備えています。
この時期の最も特徴的な色は、鮮やかな黄みを帯びた赤色です。
そのフィールドには、それが何であるかが分からないほど抽象化されたモチーフがたくさん描かれていることがあります。
コーナーはアイボリーが多く、稀にライトブルーやキャメルが使われています。

19世紀末から20世紀初頭にかけて製作されたセラピ絨毯は、様々なバリエーションで描かれた太陽のようなメダリオンを強調したデザインです。
19世紀後半のセラピ絨毯よりも複雑なデザインで、カーネリアン、アイボリー、深いミッドナイトブルーが多用されたカラフルな色調になっています。
複雑とは言っても、文様の周囲には十分な間があります。
欧米への輸出を念頭に製作されたセラピ絨毯は、より密度が高く、より重い基礎を持つ生地です。

1980 年代に人気と価値が高まり始めるまで、セラピスは古典的な花柄のカーペットに比べてはるかに安価な代替品として、家のよく人が通る場所に敷かれていました。
頻繁に使用され、日光にさらされることで、セラピスは古色を帯び、鑑定家やインテリア デザイナーの間で評判の高い、深く柔らかい色合いになりました。
セラピ絨毯は酷使されたものが多いため、修理が必須です。
修理は巧みに行われ、天然染料で染色された同色の糸が使われれば、これまでどおりに絨毯使えるだけでなく、投資価値も高まります。
1875年頃以前の最高級のセラピ絨毯は、ある程度の巧みな修復が施された状態で見つかることはほとんどありませんが、優れた品質と芸術性があれば需要はあります。

アンティークのセラピ カーペットは、通常、9平米から12平米のサイズです。
17平米から24平米の特大サイズのセラピ絨毯もあり、とりわけ1900年以前に製作されたた最上級の作品はとても貴重です。
ごく稀にですが、46平米ほどのものが見つかることもあります。
ザロニムからドザールのサイズの19世紀のセラピ 絨毯は滅多にに見られないものであり、コレクターにとっては垂涎の的になっています。
19世紀にセラピ絨毯を製作した山の民たちは、周囲の自然からインスピレーションを受けていました。
彼らは形而上学的な無限の世界をセラピ絨毯に表現しようとしたのでしょう。

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