ビジャー産のペルシャ絨毯について

ビジャー産のペルシャ絨毯について

ビジャー産のペルシャ絨毯について

[要3分]

ビジャー産のペルシャ絨毯はイラン西部で最も独創性に富み、高い品質を兼ね備えたものとして欧米には多くのファンがいます。
堅固で緻密な構造を持つペルシャ絨毯をお探しであれば、ビジャー絨毯は間違いなく最良の選択肢になり得るはずです。
日本でも人気が高いビジャー絨毯ですが、ここではその歴史、素材やデザイン、色に至るまでを詳しく解説します。

ビジャーはクルディスタン州にある町で、イラン最古の町の一つとされます。
かつて、ビジャーとその周辺地域は「ギャッルース」という名で呼ばれていました。
そのため多くの織手や昔からの愛好家の中にはビジャー絨毯をいまでもギャッルース絨毯と呼ぶ人もいます。
ビジャー絨毯の歴史は、約200年前に遡りますが、この町の絨毯産業が成長したのはカジャール朝期になってからです。
この時代、ビジャー絨毯の生産はピークに達しました。

ビジャー絨毯は「鉄の絨毯」という愛称で世界的に有名です。
その理由は、このカーペットの堅固て緻密な構造にあります。
注目すべきは、各国の博物館で展示されているアゼルバイジャンの古い絨毯の多くがビジャー産であるということです。
昔、クルドのハーンやその一族らは政府役人への贈り物としてこれらの絨毯を注文しました。

前述したように、ビジャー絨毯は織りの密度と強度が高く、折り畳むことさえ難しいため、過去には「ロール」とも呼ばれていました。
パイルは長めで、一般には農村部の絨毯に分類されます。
ビジャール絨毯はすべてトルコ結びを用いて製作されますが、製作される町や村により、ダブル・ノット、セミ・ダブル・ノット、シングル・ノットの3つのタイプがあります。
ビジャー絨毯の高い強度は、横糸に理由がありました。
通常、ペルシャ絨毯の横糸には細い糸が使われますが、ビジャールでは太いウールのヨコ糸1本に加え、細い横糸を2本使っていたのです。
つまり、ビジャー絨毯に使用される横糸は3本で、木と鉄でできた重い緯打具を使って打ち込まれており、そうすることで高い強度と耐久性を備えた絨毯が生まれました。

今日のビジャー絨毯は周辺の村々で製作される絨毯よりも洗練されており、都市部の絨毯に近い繊細なデザインとなっています。
また、横糸を3本ではなく2本にすることで、作業の効率性を高めています。
ビジャー絨毯が他産地の絨毯と明らかに異なる点は、横糸を水で湿らせてから用いることです。
水で湿らせることで、乾いた状態よりも柔軟性が高まります。
その後、織手はパイルを結んで緯打具で叩きますが、横糸は乾燥すると縮むため、絨毯は堅固なものになるのです。

大胆な色使いはビジャー絨毯をより存在感のあるものにしています。
ビジャー絨毯に使用される色は全部で27色前後ありますが、赤、紺、アイボリーがベースカラーとして一般的です。
アクセントカラーとして使われるのはピンク、カーキ、ライトブルー、緑、薄緑、黒、白などです。
ビジャー絨毯をよく観察すると、暖色を挟んで寒色が使われているのが分かります。
この色合いは、まさにクルディスタンとアゼルバイジャンの自然風土を反映したものです。
この地域の民族衣装の色を見ると、それが理解できるでしょう。

ビジャーの有名な絨毯作家の中には、この町の絨毯産業に大きな役割を果たした、ムーサ・マスーディ、アスガッラー・モラディ、アリー・アスガル・ラック、カドラトッラー・ギクロらがいます。
昔はビジャー絨毯で使用されるデザインの多くが織手自身の頭の中で作成されました。
場合によっては製作期間中に発生した事象が織りの仕上がりに影響を与えることがあり、古いビジャー絨毯の中には初めと終わりのデザインや色が違うものも見られます。

現代のビジャー絨毯にはメダリオン・コーナーや「ガビ」と呼ばれるコンパートメント、ヘラティ、ゴル・ファランギ、イスリムなどのパターンがよく使用されますが、レイラとマジュヌーンの物語や昔の細密画を織り出したピクチャー・パターンやペイズリー・パターンなども見られます。
古いデザインの中には、六角形のメダリオンの上下に大きな錨のような文様を連結ものや、大胆なアラベスクの連続文様、「ミールザ・アリー」と呼ばれるゴル・ファランギなどもあります。

一般に、ペルシャ絨毯に使用される素材は、品質と価値を決める上で重要なポイントとなります。
かつては絨毯製作に使用される素材のほとんどは、その地域の人々と気候条件によって提供されていました。
つまり、同じ地域で絨毯製作の一から十までが行われていた訳です。
それはビジャー絨毯も例外ではなく、かつては縦横糸に地元産のウールが使用されていましたが、現在は綿糸が使われています。
かつて、ビジャーではパイル糸の染色に天然染料が使用されていましたが、現在は化学染料が主流となっています。

次のポイントは、ビジャー絨毯の毛足に注目することです。
ビジャー絨毯には、パイルが長いものと短いものがあります。
もちろん、パイルが短いものの方が織りの密度が高く、高価になります。

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