ペルシャ絨毯のコピー産地

ペルシャ絨毯のコピー産地

ペルシャ絨毯のコピー産地

[第 話]

まず、圧倒的に多いのが、クム産のシルク絨毯を真似て作ったザンジャン産やマラゲ産のもの。
クムで使用されていた古い下絵を用いているため、現行のクム産ほどデザインは複雑でありません。
廉価なコピー品ですから当然、品質は落ちますが、中には横糸にシルクを用いて製作されたものもあり、横糸に綿糸を使用した本物のクム・シルクよりもしなやかさだけは勝るので要注意です。
銘が付されているものがほとんどですが、ザンジャンやマラゲに工房はなく、これらの銘はクムの有名工房の名を後から付け加えたものです。

こうしたコピー品はすべてイラン北西部ならではのトルコ結びで製作されているため、ペルシャ結びで製作されたクム・シルクとは判別が容易でした。
しかし最近のクムでは人件費を抑えるため、製作期間を短縮できるトルコ結びを用いる工房が増えているので厄介です。
クム・シルクのコピー品にはカシャンの銘を入れたもの(とくに多いのが、俗に「ホワイト・カシャン」とよばれるフィールドの地色が白いもの)も存在しますが、本物のカシャン・シルクはペルシャ結びで製作されているため、結びを見れば判別可能です。
尚、マラゲ産のパイルには絹糸ではなく「絹紡糸」が使用されていると言われています。
絹紡糸はスパン・シルク、あるいはクズ・シルクとも呼ばれ、生糸を作る際にできた切れ端や生糸を取り終わった後の残り繭、品質の落ちる中級、下級繭などを綿(わた)状にして紡いだもの。
「絹100%」には違いありませんが、絹ならではの光沢が少なく肌触りもよくありません。
その分値段は安く、絹糸の半分以下で買えます。

同じく市場に溢れているのがタバスやカシュマールで製作されたナイン産のコピー品。
1990年代からナインでは「ノーラー」とよばれる9本撚りの綿糸を縦糸に使用した絨毯は製作されていないので、昔の在庫品以外はすべてコピー品です。
ナイン産のノーラーには柄糸の一部にシルクが使用されていましたが、コピー品には綿糸が使用されたものもあります。
ただし「一部絹」と説明する場合がほとんどですから、注意が必要です。
これらのコピー品のパイルはやや長く、1cmほど。
本物のノーラーはパイルが短く刈り込まれており5mm程度しかありません。
加えてタバスでは、「シシラー」とよばれる6本撚りの綿糸を縦糸に使用したナイン産のコピー品も製作されています。
こちらには柄糸の一部に綿だけでなく、ナイン産と同様にシルクを使用したものもあります。

タブリーズ産のコピー品としては「マヒ」とよばれるヘラティ文様の絨毯がホイで製作されています。
現在50ラッジ以下のマヒ柄の絨毯はタブリーズでは製作されておらず、現在流通しているもののほとんどはホイ産です。
また、「ナグシェ」とよばれる花柄の絨毯のコピー品がカシュマールで製作されています。
何れも本物のタブリーズ産と比べるとややパイルが長いのが特徴です。
他には、カシャン産を模して製作されたアルダカン産やヤズド産。クム・ウールを模したシャーレザー(ゴムシェ)産などがあります。

これらはコピー品ではないのですが、ザンジャン産のウール絨毯(クム・シルクのコピー品とは全く異なる本来のザンジャン産です)を人気のビジャー産と表記したり、ごくありふれたケルマン産やビルジャンド産を、同じ地域の高級品であるラバー産やムード産として販売しているケースもよく見られますので気をつけてください。

わが国では当たり前のように行われているペルシャ絨毯の「産地偽装」や「偽物販売」ですが、不正競争防止法(第21条)にはこうあります。

2  次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(中略) 四  商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信にその商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量又はその役務の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような虚偽の表示をした者(第一号に掲げる者を除く。)

更に刑法(第246条)にはこうあります。

人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

「他人の商品を模倣して作ったり、売ったりする行為」や「商品の原産地等について誤認させるような表示」は典型的な不正競争防止法違反の例です。

2005年には、模倣品・海賊版商品の販売、輸入等に刑事罰を科するなど消費者の保護に対する強化が図られ、違反者に対しては「5年以下の懲役か500万円以下の罰金」が課せられるようになり、更に翌年6月の改正では法人に対する罰金刑の上限が3億円へと引き上げられました。

また、偽物と知った上で本物だと言って販売すれば「詐欺罪」になります。

購入した者が偽物だと知り警察に被害届を出すと逮捕され、有罪が確定すれば10年以下の懲役に処され犯罪によって得たものは没収(第19条)または追徴(第20条)され、更にこれを組織的に行った場合は組織的犯罪処罰法により1年以上の有期懲役と罪が重くなるのです(同法第3条第1項第13号)。

本ホームページや弊社Facebookページにて警告し続けておりますが、悪徳絨毯屋の餌食となってしまう消費者は一向に減りません。

被害に遭われた方は下記宛にご相談されてはいかがでしょうか。

政府模倣品・海賊版対策総合窓口(製造産業局 模倣品対策室)
電話:03-3501-1701(9時30分~12時00分、13時00分~17時00分)
※土日、祝日を除く FAX:03-3501-0190

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