「魔法の絨毯」たるペルシャ絨毯

「魔法の絨毯」たるペルシャ絨毯

「魔法の絨毯」たるペルシャ絨毯

[第 話]

イスラムの人たちは、テントの下や庭園の中に敷いていたこの楽園である絨毯を、ついに家の中に持ち込みました。
元来、イスラムの人たちは、砂漠の民の風土的性格から、住まいや宮殿や神殿の室内を無装飾に空白のままに放置しておく習性を持ちます。
住まいはテントと同じように、ただ四角い白い壁で囲むだけです。
家具というものは何にも作りませんでした。

その空白の壁面という壁面を、イスラムの人たちは、何らかの装飾で覆い尽くしたいという情熱に駆られるようになったに違いありません。
そこで、アラブやイスラムの家庭や一般住居の石と土で作られた室内では、床はモザイクで飾り、壁には美しい絨毯を掛け並べ、柔らかな絨毯を床に敷いて、その上に座って食事をし、絨毯の植えにあちこちに枕を置いて、それに凭れかかっていました。
書物や貴重品を置くために設けられた凹み以外は、壁という壁は絨毯で飾られたり、文字やアラベスク文様で彫られたり彩色を施されたりタイルで飾り立てたりしていて、その室内は、彼らにあたかも「地上の楽園」に憩うという錯覚を与えていたのです。

ところが、こういう定住の暮らしをしないイスラムのテント生活においては、もちろん家具というものがないから絨毯が袋や座布団や家具の代わりとなり、更には遊牧のときの鞍の覆いとなり、また運搬用の袋にもなりました。
つまりペルシャ絨毯は、イスラムの世界にあっては、鞍覆いから王侯の玉座に至るまで、あらゆるものに使われるという「魔法の絨毯」であったとイスラム研究の泰斗デスモンド・スチュワート氏は断定しています。

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