アッバス・アリー・ジャムシードプールの作品
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満天の星空の如くに配された小花文様が実に美しい一枚。
イランではゴル・リズとよばれるこの文様はジャムシディ(ジャムシードプール)一家の代名詞として知られ、叔父のモハンマド、従兄弟のジャーファルともに同じ文様を用いた作品を製作しています。
とりわけアッバスの作品には、ダーク・グリーンやダーク・ブルー、ダーク・レッドといった深みのある落ち着いた色を用いたものが多く見られます。
デザインは一家の中ではもっともオーソドックスで、モハンマドの作品にあるミフラブ文様などは採用していません。
本作にはそうしたアッバスらしさが1平方メートル中約144万ノットという緻密さをもって表現されており、見る者を彼ならではの幻想の世界へと誘うかのようです。
上部キリムの中央と、上部外ガードの中央に「クム アッバス ジャムシディ」のサインが入っています。
基本の構図は上の作品に似ていますが、ダークな色調の中にあえてビビッドな黄色を用いることにより、一味違った雰囲気を創り出しています。
こうした冒険的な試みを難なくやってのけるのも絨毯作家としての才能の表れなのでしょう。
楕円のフィールドの外周部分には所々にミフラブが配され、より宗教的なイメージの作品に仕上がっていますが、これはマシャドと並ぶ宗教都市であるクムに生まれ育った者としてのプライドの具現なのかもしれません。
アッバスは毎年8月にテヘランで開催されるイラン手織絨毯展示会には出展していないため、わが国で作品を目にする機会は少ないようです。
上部外ガード中央に「クム アッバス ジャムシディ」のサインあり。