アボロカゼム・ラングラズ・ジェッディの作品
澄み渡るコバルト・ブルーが実に美しいアボロカゼム・ラングラズ・ジェッディの作品。
ラングラズ(染色家)の名の如く、染色家としても知られる彼の真価が発揮された一枚です。
同系色の色のみによって織り出された地文様の上に、色とりどりに彩色された文様を重ねることにより、遠近感をうまく表現しています。
この技法はクムの意匠師たちがよく用いるもので、最近のクム絨毯には同じ技法を用いた作品が多く見られます。
コーナーとボーダーに配された葉文様は宙を舞う羽根のように軽やかで、心地よい眠りを誘うかのよう。
本体最下端中央に「クム アボロカゼム・ジェッディ」のサインが織り込まれ、上下のキリム部分にはかつてのイラン帝室の紋章とパフラヴィー・クラウンがパイル織りにて連続されています。
黄緑色のフィールドはゴル・リズの小花文様で覆われ、メダリオンとペンダントを囲むように曲線の枠組みが施されています。
メダリオン、ペンダントとボーダーにはU字形に連なる小花を伴ったパルメットが配され、整然ながらも優雅さを感じさせる作品に仕上がっているといえましょう。
こうした作風はジェッディ一家が製作する絨毯に共通するもので、兄のアリー、弟のモフセンともによく似た色柄の作品を製作しています。
本作にも最下端中央に「クム アボロカゼム・ジェッディ」のサインがあります。