ペルシャ絨毯は本当に高価なのか?

ペルシャ絨毯は本当に高価なのか?

ペルシャ絨毯は本当に高価なのか?

[第 話]

「なぜペルシャ絨毯はそんなに高価なのですか?」とよく尋ねられます。
たしかにイオンやイトーヨーカドーで売っている絨毯に比べると高価です。
しかし、ペルシャ絨毯は本当に高価なのでしょうか?
高価を辞書で引くと「値段が高いこと。価値が高いこと。また、そのさま」とあります。
多くの人たちは「値段が高いこと」にのみ注目し、「価値が高いこと」にはあまり注目しません。

2019年にはジェフ・クーンズが制作したステンレス製のウサギが、サザビーズのオークションで約100億円で落札されました。
また2022年に開催されたオークションでは、ZOZOの創業者である前澤友作氏が所有していたジャン・ミシェル・バスキアの絵が、約110億円で落札されました。
それらの価格に美術評論家たちは驚愕するとともに、多大なる賞賛を贈ったのです。
ところが、2013年に他に例を見ないデザインの17世紀のペルシャ絨毯が約32億円で落札されたとき、彼らの一部は、その価格があまりにも法外であるとして疑問を呈したのでした。

クーンズのウサギやバスキアの絵をステンレスやキャンバスと絵具の代金だけを考えて「高い」といってしまえば、芸術の価値の概念は崩れてしまいます。
それは伝統工芸品についてもいえることです。
ペルシャ絨毯は敷物という実用品であるとともに伝統工芸品でもあります。
高品質なペルシャ絨毯には単なる調度品を超えた価値があるのです。
ペルシャ絨毯は数か月、場合によっては数年にわたる期間を費やして製作される、芸術的要素を備えた手工芸品であり、その背景には何千年もの伝統があります。
それを考えなければばなりません。
絨毯作家は他の分野のアーティストたち同様に、独立するまで何年も有名な絨毯作家の下で修行を積みます。
それは絨毯デザイナーにしても同じで、彼らは有名デザイナーのもとで修行を積んだり、大学の芸術学部で学んだりして技術を身につけるのです。
ペルシャ絨毯は絨毯作家と絨毯デザイナーの個性と創造性を具現化したものといえます。

更にペルシャ絨毯は機械織絨毯とは大きく異なることを知っておく必要があります。
両者は同じように見えるかもしれませんが、似て非なるものです。
なぜならペルシャ絨毯は、それを形成する膨大な数の結び目がすべて人の手によって結ばれているからです。
また、羊や蚕の飼育、綿花の栽培、繊維の紡績、糸の染色など、素材の用意も人の手で行われます。
これらによってペルシャ絨毯は単なる敷物を超越した存在となるのです。

小さな絨毯を織りあげるのに数か月かかることがあります。
大きな絨毯ともなれば2年ほどかかることもあり、場合によっては織師は休みなく、ときには昼夜交代制で絨毯を織り続けます。
これに羊や蚕の飼育、綿花の栽培に費やされる労力が加わります。
更に繊維を紡績し、糸を染色するという手間のかかる作業が必要となるのです。

なぜペルシャ絨毯がそんなに高価なのかと疑問に思われる方は、ペルシャ絨毯を織る手間を考えてみてください。
熟練の織師の中には一日あたり8000ノットで織ることができる者がいますが、そのような腕を持つ織師は稀です。
一日あたり5000ノットが平均ですから、1平米あたり49万ノットの9平米のサイズのペルシャ絨毯を織りあげるには、4人の織師が1日6時間、週6日で32週間働く必要があります。
これは、中品質のペルシャ絨毯を織るのに8000時間以上の労働時間を要することを意味します。
これに対し機械織は、一日あたり数百平米の絨毯を生産できます。
機械織絨毯が手織絨毯よりも遥かに安い理由は、製作時間が短いためですが、それ以上に機械製絨毯には伝統工芸品としての要素のすべてが欠けているからです。

ペルシャ絨毯の価格を他の工芸品や美術品と比較すると、決して高価ではないことがわかります。
前述したクーンズのウサギはクーンズ自身の手で作られたものではなく、彼の指示どおりに作業するチームによって作られたものです。
クーンズは作業を監督し、完成したら署名するだけでした。
つまり、彼の仕事は絨毯作家の仕事とまったく同じなのです。
モフタシャン、アモグリ、セーラフィアンらの巨匠が製作したペルシャ絨毯は、ピカソ、マティス、シャガールなどの有名画家の作品と同じくらい貴重です。
ピカソの作品に何億円も支払う代わりに、その何十分の一の価格で同じレベルの作品を手に入れることができるのです。</p

ペルシャ絨毯は他の美術工芸品に比べると比較的安価で、ときに購入した価格よりも高くなる場合があります。
敷物はインテリアにおける最も重要なアイテムの一つですが、ペルシャ絨毯は敷物の枠を超え、芸術的要素を兼ね備えていることもまた事実です。
いわば、ペルシャ絨毯は特定の人にとっては、金銭に代え難い価値を有しているとも言えるのです。

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