本物と偽物が隣り合わせのペルシャ絨毯

本物と偽物が隣り合わせのペルシャ絨毯

本物と偽物が隣り合わせのペルシャ絨毯

[第 話]

ペルシャ絨毯は歴史とともに育まれ、様々な時代の人々に愛され続けてきました。
そして、それを作るには長い月日と熟練の技術が必要とされます。
それゆえに貴重であり、貴重であるがゆえに高価なのです。
高価なものには例外なく偽物が出現します。
1万円以上で売れるものには必ず偽物が登場すると言われるほどです。 偽物の多くは現代に作られたものなのですが、中には何十年も前に作られた偽物もあります。
偽物が作られる背景には次のような理由が考えられます。

1. 皆に人気があるから高価である。
2. 技術的に比較的簡単に作れる。
3. 原価的に比較的安く作れる。

基本的にこの三つが偽物作りの理由になります。
偽物といっても、加藤唐九郎の「永仁の壺」事件のような複雑な背景を持った偽物作りは滅多にありません。
すなわち、偽物師の狙いは簡単に儲けることのできる偽物を作り出すことなのです。
偽物師は手間と費用を考え、簡単に儲けられる作品に狙いを定めます。
ペルシャ絨毯の中で最も多いのがセーラフィアンやハビビアンの作品の偽物です。
これらの偽物はよく似た絨毯を探して来て、銘を付け加えるだけで完成します。
それだけで相場よりも高く売れる訳ですから、費用対効果は抜群でしょう。

「ペルシャ絨毯には偽物はない」と言っている業者がいるようですが、そんなことはありません。
偽の銘が付け加えられた時点でその絨毯のオリジナル性は失われます。
もちろん、絨毯そのものの価値がゼロになる訳ではありませんが、偽の銘が付け加えられる前の価値からは大きく下落してしまいます。
たとえ偽の銘を取り除いたとしても、完全に元の状態に戻すことはできません。
そうなれば、もはや傷物です。
傷物を欲しがる人の数は圧倒的に少なくなりますから、市場の原理で価値も大幅に下落してしまうのです。
「ペルシャ絨毯には偽物はない」などと言っているのは、自身が偽物を売っているからと疑いたくなります。

人間には欲があります。
釈迦は人間の不幸の元凶は欲であると考え、その欲(煩悩)を如何に打ち捨てるかを思索しました。
しかし、人間には欲があるからこそここまで来れたし、発展もしてきました。
あれが欲しい、これも欲しい……があるからこそ仕事も頑張るし、生活の張りも生まれます。
欲は上手に使えば向上心とエネルギーになりますが、下手をすると身を滅ぼします。
ペルシャ絨毯には偽物という落とし穴があることも忘れてはなりません。

まとめると、次のようになります。

1. 相手の業者の言動を疑ってみる。
2. 品物を疑ってみる。
3. 勉強してから買う。

しかし、相手の業者や品物を疑ってばかりでは面白くありませんし、精神衛生上もよろしくありません。
そこで自分で勉強して、確かめながら購入するのが第一歩です。
よいものを見て勉強し、買って身近に置き、毎日眺める。
すると本物のよさが日増しに分かるようになり、自然によいもの、そうでないものが見分けられるようになります。
これは理屈ではなく、自然に人間の感性にインプットされた美的感覚なのかもしれません。

お問い合わせ・来店予約

お問合せ・来店予約は
お電話もしくはメールフォームにてお受けしています。
お気軽にご連絡ください。