ペルシャ絨毯の目利きになるには?
[第 話]
『開運! なんでも鑑定団』でお馴染みの中島誠之助氏によれば、目利きの骨董商は50人に1人だそうです。
曰く「目が利く人というのは、モノを見分け、モノの本質がわかる人をいいます。骨董を扱う人間がすべて目利きとは限らない。50人の骨董商がいればそのうちの1人、目が利くかどうかでしたねぇ。ええっと驚かれるかもしれませんが、これは骨董の世界に限らず、どんな世界でもいえることではないでしょうか。たとえば、料理人だって数多く存在すれども、真のプロフェッショナルな仕事をしている人というと、そんなに多くないというのと同じことなのです」(中島誠之助著『ニセモノ師たち』より)。
これは絨毯商についても当てはまることで、目利きの絨毯商はやはり50人に1人ぐらいでしょう。
目が利かない人たちというのは自分で良い品を見分ける力がないことをわかっていますから、辺りを見回して売れているものを仕入れようとする。
結果、同じような商品ばかりが溢れかえるようになります。
ギャッベ、クム・シルク、ナイン、タブリーズのマヒ柄……どこもかしこも同じような品ばかり。
当然、価格競争になってしまいますから利益がとれなくなります。そこで利益をあげるために、よからぬことを考え始める訳です。
目利きというのは一朝一夕になれるものではありません。
また「才能」が必要とされますから、誰もがなれるというものでもありません。
プロのスポーツ選手と同じと考えればわかりやすいでしょう。
それでは目利きになるための方法とは何でしょうか?
目利きになるための方法として中島氏は次のように説明しています。
「最初の出発点を高く設定することが、目筋を高めていく最良の方法だと思います。出発点を高くする唯一の方法は、感受性の豊かなうちに、予備知識をあまり持たずに、名品名作そして伝承のはっきりしたものを、いやというほど、そしてむさぼるように観ることです。これしかありません」(『ニセモノ師たち』より)。
つまり「若いうちに名品だけを見ろ」ということ。
昔の骨董屋の主人は丁稚たちに本物しか見せなかったと言います。
本物だけを見ていれば、目線は自ずと高い位置に固定されますから、そのレベルから下のものはわかるようになります。
つまり、教えなくとも偽物を見分けられるようなる訳です。
逆に偽物や駄物ばかりを見てきた人というのは本物や名品がわからない。
それは目線が低い位置に定められてしまうからです。
ひとたび目線が低い位置に定められてしまうと、そのレベルでしかものを見ることができません。
したがって、名品を見ても狭いキャパシティの内でしか判断できなくなる訳です。
そうなってしまうと、それを克服するのは非常に困難。
「三つ子の魂百まで」で、長年の癖がなかなか直らないのと同じことです。
中島氏の言うとおり、目利きになるためには若いうちにその訓練をしておかなければなりません。
ここで「自分はもうトシだから……」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、諦めてしまうのは早すぎます。
ある女性は60歳で定年退職してから大学に通い始め、若い人たち以上に努力を重ね、優秀な成績で卒業しました。
またある男性は還暦を前にして英会話を学び始め、週2回のレッスンを2年間受け続けて日常会話に困らないレベルにまで到達しました。
「努力に勝る天才なし」で、努力次第で目利きに近づくことはできるものです。
それでは具体的にどのようなことをすればよいのでしょうか。
ペルシャ絨毯の目利きに近づくためには、まずペルシャ絨毯についての知識を深めることです。
ペルシャ絨毯の歴史や製作方法、デザインの特徴などについて学ぶことで、絨毯の品質や価値を判断する基準を身につけることができるようになります。
次に絨毯の種類を理解することです。
ペルシャ絨毯にはさまざまな種類があり、それぞれが異なるデザインや素材を持っています。
絨毯の種類や地域ごとの特徴を知ることで、絨毯を鑑賞する際により深い理解ができます。
市場価値を調査することも必要です。
骨董品市場の動向や価値の推移を把握し、市場での価値を正確に判断するために情報収集を行うことが重要です。
そして何よりも大切なのは、中島氏がいうように名品だけをひたすら見ることです。
一流店や美術館に足を運んでペルシャ絨毯の名品とは如何なるものかを知ってください。
日本にも白鶴美術館というペルシャ絨毯の名品を展示している美術館があります。
名品を見る際には、じっくりと時間をかけて観察し、作品の細部や色彩、構図などを頭に入れましょう。
そうする時間がなければ、ペルシャ絨毯の書籍やインターネットでもペルシャ絨毯の名品は見ることができます。
本ブログで紹介している書籍や、2大オークションハウスのサザビーズとクリスティーズのサイト、世界的に有名なロンドンのEssie Carpetsのサイトなどは特にお勧めです。
また有名工房のInstagramを見るのもよいでしょう。
ただし、大幅値引きを謳っているような怪しげな店のサイトや、玉石混交であるヤ○○クなどのネットオークション、メ○○リなどのフリマサイトなどを見ることだけは絶対に避けた方がよいです。