ネットオークションに出品されているペルシャ絨毯は本物なのか?

ネットオークションに出品されているペルシャ絨毯は本物なのか?

ネットオークションに出品されているペルシャ絨毯は本物なのか?

[第 話]

もちろん本物も出品されてはいるのですが、有名工房の作品の偽物や他産地で製作されたコピー品の他、ペルシャ絨毯ではないものがペルシャ絨毯として多数出品されているのが現状です。
ペルシャ絨毯でないものとしてはダブル・ノットのパキスタン絨毯やインド絨毯、カシミール・シルクや「高段数」とよばれる中国絨毯などがありますが、出品者がペルシャ絨毯の専門業者でない場合、彼ら自身が本物と思い込んでいることも少なくないようです。

現在ネットオークションにペルシャ絨毯を出品しているのは、絨毯業者とリサイクル業者がほとんどです。
絨毯業者については店舗を持たない(というより何らかの理由で持てない)者が大半ですが、こうした人たちは業者というよりプロに徹しきれていないセミプロ。
店舗がありませんから、何か問題が起こればすぐに逃げることができる訳で……つまり、覚悟からして中途半端なのです。

中途半端な人間が扱う商品は中途半端になるのが当然。
それが世の常で、ペルシャ絨毯だから特別ということではありません。
同じく出品者がほとんど業者である中古車がよい例なのですが、ネットオークションに溢れているのは店舗では売物にならない事故車等、訳ありの車が大半だそうです。
多くの場合、実車確認できる中古車に比べると、同じ高額品であるにも関わらず写真だけで判断せざるを得ないペルシャ絨毯の方が遥かにリスクが高い訳で、縦横糸の劣化やジュフティ・ノット、小さな修理痕や虫食い等を写真だけで見つけるのはプロでも不可能です。

出品者はそれを承知で「経年による僅かな傷み等ある場合があります」だとか「ペルシャ絨毯は手織ですので完璧ではありません」だとかの文言を必ず商品説明に入れています。
商品到着後に致命的な欠陥が判明しても「ちゃんと商品説明に書いてある」として返品は拒絶されるのが常。
運営会社に助けを求めたところで「商品説明をよく読まなかったあなたが悪い」と一蹴されて終わりでしょう。
泣き寝入りするしかない訳ですが、せめてもの報復に悪い評価を入れたとしても意味はありません。
こうした輩は悪い評価が増えてくると新たにIDを取得。別人になりすましてまたもや出品を始めるからです。

誰もが出品できるネットオークションゆえ、それはそれで仕方ないことなのですが、問題なのは明らかに専門業者とおぼしき一部の出品者たちが嘘を並べた商品説明で、詐欺まがいの行為をしていることでしょう。
その実情は目を覆うばかりで、「◯◯工房作」と書かれていてもそのほとんどは銘が後付けされた偽物。
クム産やナイン産、カシャン産のコピー品も多く、それらは「最高級ペルシャ絨毯」「工房直接買付」「本物保証」などとタイトルされて出品されております。
説明文には「世界に1枚」「時価◯百万円」「100年以上使えます」などと根拠のない文言が登場し、専門知識に乏しい入札者を引っかけようとしていることは明らかです。

『開運!なんでも鑑定団』でおなじみの中島誠之助氏は著書の中で、偽物を掴まされる条件として「これを買ったら儲かると思ったとき」というのをあげています。
悪徳業者は購入者の欲に巧みにつけ込んできます。
たとえば、即決価格が500万円の商品を50万円で落札したとしましょう。
常識的に考えてみてください。
即決価格、すなわち定価が500万円の商品を50万円で売る業者がいるでしょうか?
もしいるとすれば、何か裏があることは明らかです。

「類は友を呼ぶ」で、駄物は駄物を呼ぶのです。
修行を積んでいない者が駄物ばかり見ていれば、眼は自らが意識しないうちに駄物のレベルにまで落ちてしまいます。
骨董屋の主人は丁稚によい品だけしか見せません。
よい品を見る眼が備われば自ずと駄物は見分けられるようになりますが、駄物に染まってしまった眼はよい品を見分けることができなくなるのが理由です。

少し前までは素人出品も結構あって、たまによい品が出品されていました。
しかし、セミプロが主流となった最近は見るのも嫌になるほど。
残念ながら、これが現実です。ネットオークションは分野によってはよい品を安く買うことができる魅力的なものです。
しかし、自らの眼を台なしにする危険性をも孕んでいることは知っておい方がよいでしょう。

落札相場を調べれば、出品する商品がいくらほどで落札されるかは大方見当がつきます。
業者ならば、その価格で利益をとれるものしか出品しないでしょうし、高額になればなるほど入札件数も少なくなることはわかっています。
つまり、即決価格の500万円というのはあり得もしない出鱈目な価格。
落札者自身が思うほど得をした訳ではないのです。

ネットオークションでペルシャ絨毯を買うのは競馬やパチンコのようなもの。
完全にギャンブルの世界なのです。
1000円が10万円になることもあれば、10万円スってしまうこともある……というより値段相応か損することの方が多いのですよ、実際には。
冷静に考えればわかるのですが、よい品ばかりを安く買えるのであれば多くの絨毯業者が仕入に使うはず。
しかし、ネットオークションで仕入をしている絨毯業者はごく僅かです(何人かはいます)。

ネットオークションで「掘出し物」を見つけることは、プロでなければ困難です。
お勧めはしませんが、どうしても入札するなら損得にとらわれず、出品物を気に入るかどうかを判断基準にしていただければと思います。
なお、ネットオークションに出品されている絨毯の真贋等について弊社にお尋ねいただいても、いっさい回答しませんのでご了承ください。

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